2024.11.21
経営者の経理兼務はコスト削減になるのか?見落としてはならない「社長の価値」
経営者が兼務する経理業務とは 少子化の進行によって、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。それを補っていた高齢者の就業者数も近年では減少に転じていることから、人材不足の問題はより…
令和4年12月16日、令和5年度税制改正大綱が公表されました。今後国会で審議され、成立したら4月に施行されるためまだ確定ではありませんが、例年大きな改正はなく確定しているため、早めに内容を確認し、対応を検討しておきましょう。
この記事では、令和5年度税制改正大綱の中でも多くの事業者に影響があり今後の対応を検討する必要がある「インボイス」と「電子帳簿保存法」の改正点について、概要をご紹介します。
令和5年10月1日から、インボイス制度が適用開始となります。令和5年度税制改正大綱ではインボイス制度に関して新たな経過措置などが加わりました。すべての事業者に影響があるため、よく確認しておきましょう。
内容は主に以下の4点です。
(1)適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)
(2)中小事業者の少額取引に係る事務負担の軽減措置(少額特例)
(3)返還インボイスの交付義務の見直し
(4)適格請求書発行事業者登録制度の見直し
それぞれの概要を確認していきます。
概要は以下のとおりです。
令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日までの日の属する各課税期間において、消費税の免税事業者が適格請求書発行事業者・課税事業者となった事業者。
課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を消費税額の8割、納付税額は課税標準額に対する消費税額の2割とすることができます。このため2割特例と呼ばれます。
例えば税込660円で仕入れた商品を1,100円で販売したケースを考えると、本来、納付する消費税額は、販売1,100円に係る消費税100円から、仕入れ660円に係る消費税60円を差し引いた40円となります。これを100円-100円×8割=20円(100円の2割)で済ませることができます。 多くの場合消費税の納付金額を軽減できるだけでなく、消費税の金額を取引ごとに計算しなくてもよくなり、事務処理の軽減につながります。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下で、今までであれば消費税は免税事業者であるものの、インボイス制度開始により適格請求書発行事業者を選択することで免税事業者ではなくなってしまう事業者に対して、消費税の税額や事務処理の負担を軽減する目的があります。
確定申告書にその旨を付記するだけで適用できます。届出は必要ありません。
令和5年(2023年)10月1日から令和8年(2026年)9月30日までの日の属する各課税期間。 期間限定です。
・以前より消費税の課税事業者を選択している場合は適用できません。
・簡易課税を選択する場合とどちらが納税金額が有利かを考えた場合、第1種事業(卸売業)はみなし仕入率90%であるため簡易課税が有利ですが、それ以外の業種は2割特例が有利です。
・届出が不要なため、申告時に有利な方を選べます。 簡易課税選択届出書を提出している事業者は「簡易課税or2割特例」、提出していない事業者は「本則課税or2割特例」となります。
概要は以下のとおりです。
以下のいずれかに該当する事業者です。
・基準期間(前々年又は前々事業年度)における課税売上高が1億円以下の事業者
・特定期間(前年又は前事業年度開始の日以後6か月の期間)における課税売上高が 5,000万円以下の事業者
税込1万円未満の課税仕入取引は、インボイスの取得・保存をしなくても、一定の事項が記載された帳簿を保存していれば仕入税額控除をとることができます。少額特例と呼ばれます。
例えば上記の例、税込660円で仕入れた商品を1,100円で販売したケースを考えると、消費税は100円-60円=40円を納付する計算になりますが、インボイス制度適用開始により60円を差し引くためには仕入に関する「インボイス」が必要になります。
しかし少額の取引を含めたすべての取引でインボイスの保存を求めると事務負担が大きいため、税込1万円未満の課税仕入取引はインボイスが不要となりました。
少額の取引までインボイスの発行事業者を探して取引するのは煩雑かつ苦労が多く、また事務負担も増えるため、少しでも負担を軽減する目的があります。
令和5年(2023年)10月1日から令和11年(2029年)9月30日までの課税仕入。期間限定です。
・3万円未満の公共交通機関の運賃など、もともとインボイスの保存が不要なものに関しては特に改正はありません。 ・簡易課税制度を選択している場合は、そもそもインボイスは不要です。 (3)返還インボイスの交付義務の見直し 概要は以下のとおりです。
すべての事業者
売上に係る対価の返還等の税込金額が1万円未満であれば、返還インボイスの交付義務が免除されます。
例えば売上代金が振込手数料を差し引いて入金された場合、少額な手数料部分にまで売上の値引きとしてインボイスの発行を必要とすると事務負担が大きくなり、煩雑となってしまいます。手数料を引いて入金する慣行は実務上頻繁におこなわれており、事務処理上の負担を軽減する目的があります。
令和5年(2023年)10月1日以後適用。期間限定ではありません。
概要は以下のとおりです。
すべての事業者
適格請求書発行事業者になるためには、申請書の提出をはじめとした事務手続きが必要です。
しかし準備や検討が進んでいない事業者が多いため、申請手続きの柔軟化が図られました。
主な改正点は以下のとおりです。
・令和5年(2023年)10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けたい事業者は、原則として同年3月31日までに登録申請書の提出が必要であり、提出できなかった場合は「困難な事情」の記載が必要でしたが、今回「困難な事情」を記載する必要はなくなりました。
・令和5年(2023年)10月1日以降に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、登録申請書に登録希望日を記載し、その日から登録されたものとみなされます。登録希望日は提出する日から15日経過後の日を指定できます。
・免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合、課税期間の初日から起算して15日前の日までに登録申請書を提出することとされました。現行は1月前であり、期間が短縮されています。
・令和5年(2023年)10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けたい事業者は、原則と言われていた同年3月31日の期限を過ぎても、令和5年9月30日までに提出すれば可能です。ただし番号の確認が遅れる可能性があるため、できれば早めに検討し、申請することが望ましいでしょう。
以上のように、インボイス制度を円滑にスタートし運用するための改正と、免税事業者が適格請求書発行事業者になった場合に消費税額と事務処理の負担を軽減する改正がおこなわれています。これらの内容を踏まえて、特に現在免税事業者の方は、適格請求書発行事業者になるかどうか今一度検討してみましょう。ただし2割特例、少額特例は期間限定の経過措置である点に注意してください。
電子帳簿保存法は、これまでにも要件緩和の改正がおこなわれてきました。
令和5年税制改正大綱においても、さらに見直しが図られています。
改正は主に以下の3点です。
(1)優良電子帳簿の範囲が明確化
(2)スキャナ保存制度の要件緩和
(3)電子取引データの保存に新たな猶予措置
概要は以下のとおりです。
過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良電子帳簿の範囲について、補助簿の種類を明確化しました。
令和6年(2024年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から適用
概要は以下のとおりです。
スキャナ保存制度について、入力者情報の確認要件など、要件の一部を廃止して利用のハードルが下がりました。
令和6年(2024年)1月1日以後に保存を開始する書類から
概要は以下のとおりです。
現在、電子データを電子のまま保存する際に検索要件等が必要です(2年間の猶予期間中)。しかし要件にしたがって保存ができない「相当な理由」がある事業者は、検索要件等が不要となり、電子データを保存したうえで紙出力して保存することができる新たな猶予措置が設けられます。猶予措置を適用できる要件は、税務署長が「相当な理由」があると認められる場合、および書面の提示・提出およびデータのダウンロードの要求に応じることができる場合、です。
令和6年(2024年)1月1日以後におこなう電子取引データ。 現状、期限は定められていません。 中小企業等では、特に電子データ保存のための準備が間に合わない、負担が大きいといった状況が多くみられています。「相当な理由」がどのような内容であれば認められるのか、詳細はまだ公表されていないため、今後確認が必要です。電子データを保存しなければならないことは変わらないため、どのように保存していくかは引き続き検討が必要になるでしょう。
以上、令和5年度税制改正大綱の中でも多くの事業者に影響があり、今後の対応を検討する必要がある、インボイスと電子帳簿保存法の改正点について、概要をご紹介しました。インボイス制度の改正点は、特に現在免税事業者が適格請求書発行事業者になるかどうかを判断する大きな内容です。
電子帳簿保存法の改正点は、スキャナ保存をしておらず、検索要件等を整備して電子データを保存しようとしている事業者にとっては、要件緩和となる可能性が高いと考えられます。まだ確定ではなく今後変更点が出る可能性も多分にあるため、法案が確定したら再度詳細を確認しましょう。ご不明点がありましたら、税理士にご相談ください。
私たち横浜・町田経理アウトソーシングオフィスは税理士法人YMG林会計のグループ会社であり、税務/経理の専門家である税理士とグループ提携しています。
インボイス制度・電子帳簿保存法への対応サポートも用意していますので疑問点・ご相談がございましたらお気軽にご連絡ください。
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