2024.11.28
デメリットだけではない。1人経理のメリットを生かす方法
1人経理のメリットとデメリット 「1人経理」とは、経理業務を担当する社員が社内に1人であることをいいます。リソースに限りのある中小企業では、経理業務だけでなく、勤怠管理や総務などのバックオフィス業務…
これまで企業に属していた人にとって、「確定申告」は複雑で面倒だと感じるかもしれません。しかし、適正な確定申告は、事業運営にかかるお金の流れを視覚化するためにも大切な手続きです。
確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間の収入から、適正な納税額を算出するためにおこないます。所属企業が収入を把握している会社員と違い、個人事業主は自分で収入と支出の管理をしなくてはなりません。
「年末調整」と「確定申告」は、どちらも正しい所得税額を納付するための手続きです。
会社員の場合は、毎月の「給与」から所得税が源泉徴収されています。ただし、この税額は概算です。12月になり年間収入額が確定したところで、各種控除の適用をおこない、改めて適正税額を算出します。すでに納めた源泉徴収額との差額を調整して追徴や還付をおこなう手続きが、「年末調整」です。
一方、個人事業主が得る「事業所得」には源泉徴収がありません。1年分の所得額が確定したところで、1年分の所得税を納める必要があります。
つまり、年末調整は「先払いした所得税の過不足精算」、確定申告は「所得税額の確定と納付」手続きだというわけです。
賦課課税制度(ふかかぜいせいど)とは、国や地方公共団体が納税額を決める徴収制度です。固定資産税や不動産取得税、自動車税、個人住民税、個人事業税などで採用されています。資産の評価方法が明確なため、誰が計算しても同じ納税額になるでしょう。
一方、申告納税制度とは、納税者自身で税額を計算する納税方式です。所得税や法人税、消費税、相続税など、評価方法や各種控除によって課税額が変動するものに採用されています。納税者の工夫によって節税の余地があると考えることもできるでしょう。
給与や事業収入、不動産や山林を所有することで生じる収入、有価証券取引による利益など、収入を得ている人は所得税を納める義務があります。
個人事業主やフリーランスにとって、確定申告は必須です。また、次の条件に該当する会社員にも確定申告が必要な場合があります。
• 副業や株式売買など、給与以外に20万円超の所得金額がある
• 2か所以上の事業所から、それぞれ20万円超の給与を得ている
• 1年間の収入金額が2,000万円を超える
• 医療費控除・寄付金控除・雑損控除の申請をしたい
• 年の途中で退職して再就職していない(未精算の源泉徴収税がある)
必要な確定申告をおこなわない場合は、税法に基づくペナルティを受けることがあります。
確定申告をしない理由は、2つのケースが考えられるでしょう。
確定申告期間を過ぎてから申告した場合は、法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じた延滞税(利子)が課されます。
必要な申告を故意に放置した場合は、延滞税に加えて無申告加算税も徴収されます。悪質な「脱税」と判断された場合は、さらに重いペナルティ税が課されたり、資産が差し押さえられたりする可能性もあります。そうなると事業主としての信用は失墜し、事業そのものにも悪影響をおよぼすでしょう。
事業所得の申告方法には「青色申告」と「白色申告」があります。大きな違いは、帳簿の記帳方法と決算書類です。青色申告は複式簿記形式で仕訳帳や総勘定元帳を作成管理し、申告時には損益計算書(PL)と賃借対照表(BS)を提出しなければなりません。
日々の会計管理に手間がかかる青色申告ですが、下記のようなメリットがあります。
(1)青色申告控除:55万円の所得控除
(2)青色事業専従者給与:家族従業員に支払った給与の経費算入
(3)赤字の繰越し:赤字申告から3年間、黒字との相殺が可能
(4)少額減価償却資産の必要経費算入の特例:30万円未満の減価償却資産の一括経費計上
白色申告は、簡易簿記による管理が可能で決算帳簿提出も不要ですが、税法上のメリットはありません。
電子帳簿保存法の改正により、すべての事業者に「電子取引」への対応が義務化されました。 これにより、2024年1月以降は取引にかかる証憑管理は、紙ではなく電子データでおこなわなければなりません。
青色申告者が電子帳簿保存法に適した電子申告をおこなうと、青色申告控除に10万円が加算されて「青色申告特別控除:65万円」の適用対象となります。
青色申告は、税務署の事前承認が必要です。新規開業した場合は、開業日から2ヶ月以内に青色申告の申請手続きをおこないます。すでに開業している人が青色申告申請に切り替える場合は、その年の3月15日までに申請しましょう。
青色申告の申請は、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用するとスマホやPCで完結できて便利です。
収入のうち、所得税の対象となる金額を「課税所得」といい、以下の手順で計算します。
ステップ1:収入-経費=所得
ステップ2:所得-控除=課税所得
課税所得は、所得税や住民税の計算基準です。経費計上や控除適用を正しくおこなうことは、総合的な節税につながります。
利益を得るためにかかった経費の把握は、健全な事業運営に必要不可欠です。個人事業主の場合、事業運営にかかる費用はすべて経費算入が可能で、限度額は設けられていません。
経営上の資産の流れを分類する方法を「仕訳」といい、仕訳に使うカテゴリを「勘定科目」といいます。経費に計上できる一般的な勘定科目は下記のとおりです。
• 租税公課:個人事業税、事業用不動産の固定資産税、社用車の自動車税など
• 荷造運賃:運送料、梱包材費用など
• 水道光熱費:水道料金、電気料金、ガス料金など
• 旅費交通費:通勤や営業に必要な公共交通料金、タクシー代、宿泊費用など
• 通信費:電話代、切手代、インターネット設備費用など
• 広告宣伝費:名刺・会社案内制作費、メディア掲載費用など
• 接待交際費:ビジネスに直結する飲食、贈答品購入費など
• 保険料:事業所の地震保険料、損害保険料、自動車保険料など
• 消耗品費:備品購入費用
• 減価償却費:パソコンや自動車など、長期間使用する固定資産の調達費用
• 修繕費:事務所家屋や設備の維持管理費用
• 福利厚生費:従業員の社会保険料・健康診断費など
• 外注工賃:外注スタッフなどへの支払い
• 利子割引料:借入れした運転資金やローンなどの利息
• 地代家賃:事務所や店舗の家賃、駐車場代など
• 貸倒損失:売掛金や貸付金など債権のうち回収不能金額
• 雑費:どの項目にも該当しない少額の費用
• 給料賃金:従業員給与、賃金、賞与など
• 専従者給与:配偶者や親族を雇っている場合の給与
• 未償却の繰延資金:開業費・創立費・社債発行費・開発費などのうち未償却のもの
青色申告の場合、赤字申告の翌年から最長で3年間、赤字の繰越控除がおこなえます。起業したばかりでまだ利益が出ていない場合でも、確定申告をしておくことをおすすめします。
自宅兼事務所の場合は、プライベートで利用する分と事業で利用する分を振り分ける「家事按分」をおこないます。経費計上できるのは、事業利用部分にかかる費用のみです。
家事按分の対象は、家賃・光熱費のほかに電話料金、インターネット料金、地震保険料などが挙げられます。社用車をプライベートでも利用する場合は、自動車にかかる諸費用も家事按分が必要です。
按分方法に明確な規定はありませんが、使用面積や使用日数・時間などを考慮して使用比率を決める方法が一般的です。客観的に見て無理がなく、合理的な説明ができる方法でおこないましょう。
個人事業主自身にかかる次の費用は、経費計上できません。
・個人事業主自身の福利厚生費
従業員のための福利厚生費は経費に計上できますが、個人事業主自身の社会保険料や健康診断費用などは経費算入できません。
・個人事業主自身の生活費用
個人事業主には「給与」がないため、事業収入から生活費などの私的な支払いをおこなうことになります。その場合は、事業所が事業主にお金を貸したと考えて「事業主貸」という勘定科目で記帳します。ただし、経費にはなりません。
「所得控除」とは税法によって定められた減税措置で、納税者の家族構成や支出に応じた要件が設けられています。減税効果が大きいものが多いため、適用可否をしっかりと見極めることが重要です。
基礎控除は、すべての納税者が対象ですが所得による制限があります。この所得とは、事業所得のほか不動産所得や山林所得も含まれます。
• 基礎控除:48万円
事業主本人や家族に該当者がいる場合に適用される控除です。所得による制限や適用要件が設けられているものもあります。
家族が該当する場合
• 配偶者控除:38万円
• 配偶者特別控除:最高38万円
• 扶養控除:【一般】38万円、【老親】48万円、同居58万円、【特定扶養/19~23歳】63万円
納税者本人が該当する場合
• 寡婦控除:27万円
• ひとり親控除:35万円
• 勤労学生控除:27万円
納税者本人あるいは家族に該当者がいる場合
• 障害者控除:27~75万円(福祉区分、同居の有無などによる)
下記の出費にかかる所得控除については、控除額の上限や適用要件があるため十分な確認が必要です。
• 社会保険料控除:納税者本人あるいは扶養家族の社会保険料の全額
• 生命保険料控除:最高12万円(2012年以降の契約)/最高10万円(2011年以前の契約)
• 地震保険料控除:最高5万円
• 雑損控除:災害や盗難などで資産に損害を受けた場合(限度額あり)
• 医療費控除:医療費のうち10万円を超えた分(上限200万)
個人事業主には定年がなく、会社から支給される退職金もありません。共済による退職金や個人年金を準備している場合は、下記の控除対象となります。
• 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済掛金、確定拠出年金掛金の全額
ふるさと納税や認定団体などへの寄付をおこなった場合、下記の控除が適用されることがあります。
• 寄附金控除:国や地方公共団体、特定の法人に対する寄附金の一部
節税に必要な準備がととのったところで、実際の確定申告の流れについて解説します。
確定申告期間は、毎年2月16日から3月15日の1ヵ月間です。大きな災害などがあった年は、期間延長が実施されることもあります。
青色申告に必要な書類は、下記のとおりです。収入や支出を証明する証憑類、家事按分の根拠となるデータ、各種控除に必要な控除証明書などを準備して、正確に記入しましょう。
国税庁の確定申告特設サイトから申告書のダウンロードが可能です。第1表は各項目の合計金額、第2表以降が各種収支の内訳・明細になっています。先に明細を作成して第1表に転記すると簡単です。
e-Taxや国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用する場合は、指示に従って入力していけば自動的に計算までおこなわれます。
「一般用様式」「不動産所得用様式」「農業所得用様式」「現金主義用様式」の4種類があります。基本的には、一般用様式を使用しましょう。
青色申告決算書は、下記の内容で構成されています。
・損益計算書:売上、仕入、経費などの年間総額を記入して年間損益を確定
・各経費の内訳・計算書、特殊事情がある場合の記載欄
・貸借対照表:1年間の期首(1月1日)と期末(12月31日)の資産や負債を記載
マイナンバーカードは申請から発行まで約1か月かかるため、早めに用意しておきましょう
控除証明書は、11月末ごろに対象機関から発行されます。電子申告をおこなう場合は、デジタル証明書の有無を確認しておきましょう。
• 医療費控除:医療機関が発行する領収書・明細書など
• 各種保険料控除:各種保険料控除証明書
• 小規模企業共済等の掛金控除:小規模企業共済掛金払込証明書
• 住宅ローン控除:住宅借入金等特別控除証明書、借入金の年末残高等証明書
• ふるさと納税:寄付金受領証明書
年間収入に「起業前の勤務先企業からの給与」や「源泉徴収されている受託報酬」などが含まれている場合は、忘れずに源泉徴収票を受け取っておきましょう。
下記書類について申告時の添付義務はありませんが、税務署から提出を求められることがあります。法定保存期間が設けられているため、適切に保管しておきましょう。
・総勘定帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳
・決算に関して作成した棚卸帳・各種証憑 など
確定申告書の提出方法は、次の3種類です。
税務署の開庁時間は平日の8時30分から17時ですが、確定申告期間は受付時間の拡大や出張窓口が実施されます。確定申告相談会場が併設されているところでは、不明点の相談が可能です。
郵送する場合、消印の日付が提出日となります。申告期限が迫っている場合は、ポスト投函ではなく郵便局に持参するほうがよいでしょう。
確定申告期間は、e-Taxの受付時間が24時間に拡大されます。また、1月末から申告データの保存と送信予約が始まる(受理は2月16日)ため、早めに提出を済ませたい人におすすめです。
確定申告は、年間収入に応じた適正な所得税額の申告・納付手続きです。個人事業主にとって、事業収支の把握は経営判断に必要であり、適切な経費計上は所得税軽減にも効果的です。
申告する際は、e-Taxを利用した電子申告が便利でしょう。特に、青色申告者は電子申告により大きな税制優遇を受けられます。
電子帳簿の作成管理は、クラウド会計ツールが便利です。ツール導入により日常的な経理業務を簡素化できるうえ、月次・年次決算資料も自動化できるため、確定申告にかかる負担がなくなります。
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