2025.05.28
住民税の特別徴収・普通徴収の違いとは?中小企業が押さえておくべき基礎知識と対応策
住民税の特別徴収とは? 住民税は、所得に応じて課税される地方税です。個人の納める住民税を「個人住民税」といい、居住する自治体(都道府県と市町村)に納めます。 個人住民税は、毎年1月1日から12月3…
住民税は、所得に応じて課税される地方税です。個人の納める住民税を「個人住民税」といい、居住する自治体(都道府県と市町村)に納めます。
個人住民税は、毎年1月1日から12月31日までの所得を基準に算出され、翌年6月から納付が始まります。この納付方法には、特別徴収と普通徴収という2種類があります。それぞれの違いを理解し、メリットとデメリットを比較してみましょう。
特別徴収は、会社が従業員の給与から住民税を預かり、各自治体へ納付する制度です。会社は、従業員の住民税額を毎月の給与から天引きし、納期限までに納めます。これは、地方税法によって定められた企業の義務です。
従業員が個人で管理する必要がないため、納め忘れがありません。また、住民税額を12カ月に分割して徴収するため、1回あたりの税額負担が軽い点もメリットの1つです。
住民税は、従業員の居住する都道府県や市区町村へ納められます。また、各自の所得や家族構成などに応じて税額も異なるため、従業員数分の個別対応が必要です。企業規模や組織構成によっては、企業の経理・給与計算担当者の負担が大きくなるでしょう。
納税者本人が個別に個人住民税を納める方法を普通徴収といいます。会社に所属していない自営業者やフリーランス、パート・アルバイトで課税所得がある人などが対象です。自治体から送付される納税通知書を使い、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分けて納付します。
近年、地方税分野のデジタル化推進に伴い、納税手段が多様化しています。税務署・公共機関の収納窓口、金融機関の窓口や口座振替、コンビニ収納、eLTAX電子納税、Pay-easy、スマートフォン決済、クレジットカード決済などで、納税可能です。
自分で管理する手間がかかります。普通徴収は、納期が年4回と不定期のため、納付を忘れやすい点がデメリットです。また、1回あたりの税額が高く、負担が大きいと感じることもあるでしょう。
個人住民税は、住んでいる地域の行政サービスにかかる費用を、住民が負担し合うことを目的とした税金です。例えば、警察署や消防署、公立病院などの公共施設、ゴミ処理や上下水道整備、道路や橋の整備などの行政サービスに使われています。普段何気なく利用している地域のインフラやサービスの多くが、住民税によって支えられているというわけです。
ふるさと納税には、個人版と企業版があります。このうち、個人版のふるさと納税は、個人住民税の一部を任意の自治体に納めることのできる制度です。自治体によっては、「教育・子育て支援」「復興支援」「地域活性化」「文化・スポーツ振興」「動物愛護」など、具体的な使途を選択できる場合があります。
ふるさと納税と聞くと、バラエティ豊かな返礼品が注目されがちです。しかし、税金の使い途に自分の意思を反映できる点が特徴であり、前向きな節税対策としても関心が高まっています。
ふるさと納税の節税効果を最大限に生かす方法については、以下のコラムで詳しく説明しています。
【ふるさと納税は年間計画がおすすめ】節税効果を最大限に生かす方法
住民税の金額は、通常、以下の通りに決まっています。
ただし、自治体によっては、災害復興や環境保全、観光促進・地域振興のための追加課税が設定されている場合があります。
特別徴収は、従業員を雇用する企業の義務です。経営者や経理担当者は、手続きの流れを把握して適切に行う責任があります。一般的な手続きの流れは以下の通りです。
【毎年・1月31日まで】
従業員(納税義務者)の居住区市町村(住民税担当課)に「給与支払報告書個人別明細書」「給与支払報告書総括表」を提出
【毎年・5月31日まで】
従業員の居住区市町村から事業主宛に「特別徴収税額決定通知書」が送付される
【毎月(6月~翌年5月)】
従業員の給与から、住民税を徴収
【毎月・翌月10日まで】
従業員の給与から徴収した住民税を市区町村に納付
特別徴収は、事業所が従業員全員分の手続きを行います。中小企業では経理・給与計算などお金に関わる業務を1人で担う「1人経理」が一般的で、特別徴収にかかるリソースが不足しているケースもあるでしょう。
そこで、中小企業の経営者と経理担当者が気になるポイントについて、以下にまとめました。
A1.給与所得者には、特別徴収が義務づけられているため、選択はできません。
地方税法では、所得税を源泉徴収している事業主に対して、個人住民税の特別徴収を義務づけています。しかしながら、これまでは制度の周知が十分ではなく、徹底されていませんでした。そこで、2017年に各自治体が特別徴収の原則義務化の取り組みを強化することが決まり、改めて法令遵守の徹底が呼びかけられています。
ただし、以下のケースは例外として特別徴収をしなくてもかまいません。
パートタイムやアルバイトなどで雇用期間が短く、特別徴収の手続きが難しいケース
副業先であるケース。主たる収入を得る企業で特別徴収されている場合、副業所得にかかる住民税は普通徴収となる
給与が少なかったり不定期だったりして、毎月の給与額から税額が引けないケース
個人事業主の家族が事業専従者として働いているケースは、普通徴収が認められる場合がある
従業員が少ないケースでも給与の源泉徴収を行っている場合は、原則として住民税も特別徴収。ただし、自治体によっては柔軟な対応をとるケースもある
A2.納期遅れのペナルティとして、法定納期限の翌日から延滞金が発生します。
特別徴収住民税の納付は、事業所の義務です。その手続きは煩雑に感じるかもしれませんが、納期に遅れた場合は、次のペナルティが発生する可能性があります。
未納住民税に対して、納期限翌日から完納日までの日数に応じた延滞金が課されます。
※延滞金特例基準割合は適用年度によって異なり、上記は2022年1月1日から2025年12月31日までの割合です(2025年5月現在)。
税金を納めない事業所に対して、納期限から20日以内に督促状が発送されます。それでも納付しない場合には、事業主に対して質問検査や差押などの滞納処分が行われます。悪質だと判断された場合は、脱税行為として以下の罰則が科されるでしょう。
A3.異動が生じた翌月10日までに「給与所得者異動届出書」を、市区町村宛に提出します。
入社や退職、休職など、従業員に異動があった場合は、下記の手続きが必要です。
住民税は前年の1~12月の所得を基に税額を算出するため、入社前の収入状況が重要です。
退職者については、異動届を提出したうえで、退職月以降5月31日までの住民税を最終給与や退職金からまとめて徴収します。転職先で再び特別徴収する場合は、転職先の事業所に「異動届出書」を引き継ぐための連携が必要です。
休職や死亡により住民税の特別徴収ができなくなった旨を知らせるために、異動届出書を提出します。
A4.ダイレクト納付を利用することで、特別徴収にかかる手間を軽減できます。
また、企業規模によっては緩和の特例適用を受けられる可能性があるでしょう。
eLTAX(地方税共通納税システム)を通じて、金融機関口座から各自治体に直接納付する方法です。オンラインで完結するため、銀行や地方自治体に出向く手間や時間がかかりません。また、複数の自治体へ一括納付できるため、効率的な納税管理がおこなえます。
従業員が常時10人未満の事業主は、従業員の居住区市町村に承認を受けた場合に限り、納入を次の年2回にすることが可能です。
特別徴収は法令による義務のため、事務負担を理由に拒否することはできません。しかし、これらの方法を活用すると納税作業が簡単になり、負担を軽減できます。
A5.住民税額は各市町村で計算します。
住民税額は、自治体で算出し、通知されるため、事業所での計算は不要です。また、年末調整も必要ありません。
1人経理が担当することの多い労務業務に、給与計算があります。給与計算における税金や社会保険の給与天引きは、個別対応の手間と税務に関する専門知識が必要です。自社での対応が難しい場合は、経理業務の一部委託やDX化を視野に入れると良いでしょう。
勤怠管理から控除にかかる諸計算、給与支払までの業務プロセスをアウトソーシングするという方法です。会計と税法に関する専門知識とノウハウを持つ専門家に任せることで、給与計算の精度と透明度の向上が期待できます。
中小企業では、目の前に座る社員の給与や家族に関する情報を1人経理が知ることになり、プライバシーへの配慮が難しい場合が考えられます。個人情報を保護するために、あえて時間外勤務を選んで作業する担当者も少なくないでしょう。アウトソーシングは、そういったストレスから解放される効果もあります。
既存の勤怠管理と連携できる会計システムを導入し、給与計算にかかる業務の大半を自動化するという方法です。会計システムの導入により、勤怠データの取得から集計が自動化されます。これにより、転記漏れや集計ミスといったヒューマンエラーを回避できます。
また、クラウドツールは、常に最新の税法や新制度に対応できるように自動アップデートが行われる点も魅力の1つです。これにより、税法が変わっても適切なタイミングで切り替わり、適正額を徴収できます。
給与計算に適したツール選定について、下記コラムで詳しく解説しています。
【徹底比較】経理業務をデジタル化せよ!目的別にツールを紹介!
住民税の「特別徴収」は、企業にとって避けて通れない法的義務です。しかし、条件や手続きは複雑で、中小企業の経理担当者にとって負担になるといった側面もあります。
貴社のリソースで処理しきれないと感じた場合は、ぜひアウトソーシングや会計システムの導入をご検討ください。
アウトソーシングには、業務を外部に任せることで本来注力すべき業務に集中できるメリットがあります。
また、会計システムの導入は定型業務のほとんどを自動化でき、大幅な工数削減に役立ちます。
どちらも、中小企業の業務効率化に有効な手段です。
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