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コラム

2025.12.28
請求ミスを防ぐ業務フロー整備の実践ポイント

中小企業に多い「1人経理」は、属人化や担当者の業務過多によってミスが多発するリスクがあります。特に、請求処理に関わるミスは、売上の回収遅延や損失だけでなく、取引先の信頼を失うことにもなりかねません。

本コラムでは、よくある請求ミスとその原因を分析し、ミスを防ぐための業務フロー整備のポイントを分かりやすく解説します。

≪目次≫
なぜ請求ミスは起こる?
請求ミスを防ぐ業務フロー整備
請求管理代行サービスで業務を安定化する
まとめ:請求管理の安定運用に向けた実践的アプローチ

なぜ請求ミスは起こる?

請求管理は、企業の売上の確定と回収に直結する重要なプロセスです。しかし、煩雑な処理に追われる中で、請求漏れや二重請求などのミスが発生することがあります。請求ミスは企業経営に大きな影響を与えるため、早期の対策が不可欠です。まずは、請求管理に起こりがちなミスを把握しておきましょう。

請求管理の基本と注意点

請求管理とは、商品やサービスの販売時に、売掛金の回収を目的として行われる一連の業務を指す言葉です。

  • 請求書の作成・送付
  • 入金確認と消込処理
  • 未回収分の督促

請求は、「毎月末締め」など、自社と取引先企業によって決められた期間ごとに発生します。企業間の取引は、商品の先渡し・後払いが基本です。売掛金(未収代金)を回収できなければ、収益は得られません。損益計算上の利益が出ていても資金繰りが悪化すれば、黒字倒産に陥る可能性があります。そのため、確実な請求管理が求められるのです。

請求漏れ・二重請求が起こる理由とリスク

請求処理で発生しやすいミスには、請求漏れや二重請求があります。どちらも取引先に対する適切な請求管理の不備を示すこととなり、取引先との信頼関係を損なうおそれもあるでしょう。

請求漏れや二重請求の原因と、それぞれが及ぼす影響は次の通りです。

請求漏れが発生する原因と資金繰りへの影響

請求漏れは、本来請求すべき取引に対して、請求書が送られていない状況のことです。請求書の作成・送付忘れが主な原因ですが、その裏には営業担当者との連携不足や請求管理体制の不備が隠れています。

請求漏れは、自社内での発覚が難しく、結果的に放置されるケースが少なくありません。しかし、発見が遅れるほど、売上を回収するのは困難になるでしょう。こうした請求漏れは売上未回収による収益機会の損失となり、資金繰り悪化に直結します。

二重請求による信用低下と業務負担の増加

二重請求は、同一の取引に対する請求書を複数回発行してしまうことです。主な原因は、請求書番号や取引情報の入力ミスや送付管理の不備ですが、請求漏れと同様に、その背景には担当者間の情報共有不足やチェック体制の欠如があります。

二重請求は社内での発覚が難しく、取引先に指摘されて判明することが多いでしょう。そのため、取引先からの信用を失い、契約トラブルに発展するおそれがあります。さらに、請求処理のやり直しや返金対応に追われ、経理担当者の業務負担が増加します。

中小企業に多い「1人経理」の実態

中小企業ではリソースが限られるため、経理を1人で担うケースも珍しくありません。日本商工会議所・東京商工会議所の調査によれば、売上高1,000万円以下の事業者の約8割が「1人経理」であることが明らかになっています。

「1人経理」では経理担当者の業務範囲は多岐にわたり、常に大きな負荷がかかります。特に、月末・月初には処理が集中し、さらに慌ただしさが増すでしょう。このため、入力ミスや確認漏れが発生しやすく、請求管理の精度低下につながります。

ミスの背景にある「手作業」と「属人化」

請求ミスが発生する背景には、中小企業の経理業務に特有の「手作業」と「属人化」があります。特に、中小企業では「1人経理」が多いため、「担当者以外は業務内容を把握していない」という属人化が進むのです。また、業務内容や手順が分からなければ適切なダブルチェックができないため、経理担当者のミスが見逃されるリスクも高まります。

紙やExcelによる請求管理の限界とミスの要因

日本商工会議所・東京商工会議所の調査によると、売上高1,000万円以下の事業者のうち、48.3%は経理業務システムを導入していませんでした。また、同じく56.7%が経理業務のペーパーレス化を全く行っていないことも分かりました。このデータは、多くの中小企業が、経理業務をExcelや紙ベースで管理していることを裏付けています。

こうした従来の管理方法では、取引情報の入力や請求書の作成、送付作業を人の手に頼ることになります。これは、重複入力や処理の抜け漏れといったヒューマンエラーを招きやすい状況です。

属人化による業務停滞と引き継ぎリスクの実態

属人化とは、特定の担当者に作業が集中し、他の従業員が把握できない状態を指します。担当者の記憶や経験に頼るケースが多く、マニュアルが未整備なことも多いでしょう。

このような体制では、経理担当者の不在が業務停滞に直結します。もしも、急な休職や退職が発生した場合、引き継ぎが困難となり請求業務の完全停止を引き起こしかねません。

請求ミスを防ぐ業務フロー整備

請求ミスを防ぐには、業務フローの整備が不可欠です。まずは、業務内容を可視化し、チェック体制を備えたフローの最適化を行います。さらに、定型業務を自動化するクラウド会計ツールを導入すると、ミスの防止に効果的です。これらの対策を組み合わせることで、属人化の解消と標準化が実現し、請求管理の精度が高まるでしょう。

ここからは、業務フロー整備の具体的な手順を解説します。

請求管理の「見える化」と標準化

まず、特定の経理担当者に依存している請求プロセスを「見える化」し、属人化の解消を図ります。このとき、請求管理だけを切り出すのではなく、経理部門や関連部署の業務全体を洗い出すことが重要です。そうすることで、取引の実行から請求、入金処理までの流れが明確になり、ミスが起こりやすい部分やボトルネック、重複作業といった無駄を把握できます。

次に、浮き彫りになった課題を改善できるように、業務フローを再設計しましょう。

請求書発行の4ステップ

請求書の発行は、次の4ステップで行われます。

  1. 請求内容の確認:取引先ごと契約内容や納品実態を参照し、請求内容・金額・入金方法・期日を確認する
  2. 請求書の作成:取引先のインボイス制度(適格請求書発行事業者)への登録状況を確認し、制度要件を満たす請求書を作成する
  3. 請求書の送付:作成した請求書を、郵送やメール、クラウドなど定められた方法で送付する
  4. 入金確認とフォローアップ:期日までの入金を確認し、帳簿処理を行う。未入金の場合は、あらかじめ定めた方法で連絡や督促を実施する

こうした手順を整理し、業務マニュアルを作成して社内全体で共有することが重要です。マニュアルを見れば誰でも同じ手順で処理できる体制が整い、業務の属人化による停滞を防ぐ基盤が整います。

ダブルチェックと承認フローで請求精度を高める

マニュアルの整備により業務の標準化が実現すると、担当者以外でも内容や手順を把握できるようになるため、ダブルチェックが容易になります。その結果、請求書の発行前後に複数人でチェックする体制が整い、人的なミスを大幅に削減可能です。

さらに、承認フローを構築することで、責任の所在を明確化できます。これにより、万が一ミスや不備が起こったときに、どこまで遡れば良いのかがわかり、軌道修正がしやすくなります。標準化とダブルチェック、承認フローの組み合わせによって、業務の透明性が大きく向上します。

クラウド会計で請求管理を自動化するメリット

クラウド型会計システム(以下、クラウド会計)とは、クラウドサーバー上にある会計システムのことです。

また、クラウド会計には、金融機関の取引明細を自動取得する機能があり、取引先管理情報との連携で請求書の作成・送付も自動化可能です。一連の作業を自動化することによって、取引金額の入力ミスや請求漏れ・二重請求といったヒューマンエラーがなくなり、担当者の作業負担も軽減します。

また、クラウド会計は、インターネットを通じて時間や場所を問わずにアクセスできる点もメリットです。経営者や営業担当者が、直接システムにアクセスして取引状況を把握できるため、経営判断の迅速化に貢献し、営業機会を逃しません。

クラウド会計導入時の確認ポイント

クラウド会計の導入時には、既存業務との整合性を確認し、自社に適した機能を備えたツールを選定することが重要です。たとえクラウド会計を導入しても、従業員が使いこなせなければ定着は困難でしょう。そのため、ツールの操作性や導入後のサポート体制についても、十分に事前確認しておく必要があります。

請求管理代行サービスで業務を安定化する

請求管理のミスを防ぐためには、代行業者にアウトソーシングする方法も有効です。請求管理代行サービスでは、取引先ごとの売掛金の集計や入金確認、消込作業といった請求管理全般に対応しています。

部分的な委託から、業務プロセスを丸ごと任せる方法まで、さまざまなプランが用意されています。業者ごとに企業規模や業態の得意分野があるため、委託を検討する際は複数の業者に自社の課題を相談してみるのがおすすめです。

請求管理を外部委託するメリット

外部業者の専門スタッフが請求業務を担当すると、業務の正確性は大幅に向上します。請求漏れや二重請求といったミスの防止はもちろん、業務スピードも上がるでしょう。社内では経理担当者の工数が削減できるため、社内リソースの最適化にもつながります。

また、社員教育や業務引継といった手間や時間をかけなくても、即戦力として対応してもらえる点も外部委託の大きな強みです。専門的なノウハウを持つプロに請求代行を依頼することで、即時に請求業務の安定化が図れます。ただし、企業の機密情報を預けることになるため、セキュリティ対策や実績などを十分に調査して信頼できる業者を選びましょう。

請求管理代行サービスの基本業務と委託範囲の選び方

請求管理代行サービスが対応している基本的な業務は、次の通りです。

  • 取引先ごとの売掛金残高を集計
  • 請求書の発行と発送
  • 入金の確認と消込作業 など

委託する業務範囲は、自社の状況や予算などに応じて柔軟に調整できます。例えば、入金確認と消込作業のみを委託することも可能です。また、自社では難しい与信審査や苦手意識を持つ人も多い督促業務も、豊富なノウハウを持つプロに任せればスムーズに進むでしょう。

請求管理に悩む企業には代行がおすすめ

請求管理代行は、次のような悩みを持つ中小企業におすすめのサービスです。

  • 請求書の入力が煩雑で後回しになりがち
  • 1人経理担当者が他の業務に追われ、請求業務まで手が回らない
  • 請求漏れや二重請求といったミスが多発している
  • 急速に取引先が増えている

経理アウトソーシング業者には、請求管理を含めた経理業務全般の丸投げも行えます。経理体制の一新を考えている企業は、いったん業務を外部委託して、社内環境整備や体制の再構築を行う方法も効果的です。

請求管理代行については、下記コラムでも紹介しています。
振込・請求管理はプロにお任せ!振込代行を利用するメリットとデメリット

まとめ:請求管理の安定運用に向けた実践的アプローチ

請求管理にミスがあると、収益の損失だけではなく、企業の信頼を損なうリスクが高まります。

特に中小企業では1人経理による管理・チェック体制の不備が原因となりやすく、その対策として業務の標準化やクラウド会計の導入が有効です。

さらに、即効性を求める企業には、請求管理代行サービスの活用をおすすめします。専門知識とノウハウを持つプロに委託することで、請求漏れや二重請求といったリスクを大幅に低減可能です。

弊社では、請求管理から経理業務全体まで、幅広い代行サービスをご用意しております。加えて、クラウドツールの選定から導入、運用開始後のサポートまで一貫して対応しています。クラウドツールを併用することで、代行サービスの利便性と効果はさらに高まるでしょう。

弊社は丁寧なヒアリングを通じて貴社の状況を的確に把握し、予算に合わせて最適なご提案が可能です。

初回面談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

神奈川 横浜・町田経理アウトソーシングオフィスは、経理・税務・経営に関するお客様のあらゆる課題を解決する総合会計事務所です。創業50年以上の歴史を持ち、約100名の専門家がお客様の事業を力強くサポートします。

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この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ 部長代理 興梠 貴裕
保有資格弥生インストラクター資格 / 日商簿記3級
専門分野IT
経歴業務系システム業界に身を置いて12年目。様々な業種のお客様のシステム導入に関する多くの相談実績が有り 導入実績も多数。常にお客様目線で対応し、お客様の課題解決に全力で取り組む姿勢に定評有。
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