2024.11.28
デメリットだけではない。1人経理のメリットを生かす方法
1人経理のメリットとデメリット 「1人経理」とは、経理業務を担当する社員が社内に1人であることをいいます。リソースに限りのある中小企業では、経理業務だけでなく、勤怠管理や総務などのバックオフィス業務…
経理の仕事は、企業のお金を管理することです。企業活動における日々のお金の流れを記録して、適切に管理する業務を担っており、企業運営の健全化になくてはならない存在です。
日々発生する仕入・売上データの入力・仕訳・管理、取引にかかる請求書・領収書の発行などを行います。
月末、あるいは毎月決まった日に行う業務は、売掛金の請求や督促、買掛金の支払い、経費精算、給与の支払い、税金の納付などです。
年1回ペースの業務には、決算報告書の作成や決算報告会、申告書類の作成と納税、年末調整などがあります。
大手企業と比べたとき、中小企業の経理業務にはどのような特徴があるでしょうか。
中小企業では、経理業務を1人で担う「1人経理」が多い傾向にあります。企業によっては労務や総務、営業事務など、あらゆるバックオフィス業務を総括して1人で担当することも珍しくありません。なかには、経営者自身が経理を兼務しているケースもあるでしょう。
大企業では部門ごとに担当部署が設置されていることが一般的ですが、中小企業ではあらゆる業務を1人経理やごく少人数の担当者で分担する傾向にあります。そのため、必然的に業務量は多くなります。複数のタスクを同時進行することはもちろん、中断や割り込み業務も多く、担当者は集中力を保つのにも苦労するでしょう。
1人経理状態を招く背景として、社内で他に経理業務を理解している人がいないことが挙げられます。そのため、経理担当者は、わからないことがあっても上司や同僚などに相談や確認をすることができません。また、生産性のない経理業務は他部門の社員から軽視される傾向にあり、社内で孤立する可能性もあります。
1人経理は業務が属人化しやすく、担当者の不在は業務停滞に直結します。そのため、1人経理担当者は有給休暇などの申請をためらうケースが多いでしょう。また、日常業務と並行して月次業務や年次業務を行う必要があるため、繁忙期には時間外労働が急増するほどの過剰業務となります。お金を扱うプレッシャーに加え締切厳守の緊張感もあり、体力的にも精神的にも負担の大きな業務です。
中小企業には税金の優遇や特例制度が適用されるため、大企業とはそもそも会計処理方法が異なる場合があります。大企業での経理経験者、同じ中小企業でも処理方法の違う会社で経験を積んだ人は、処理方法のギャップを感じるでしょう。
このように、中小企業の経理業務は、企業によって全く違う可能性があります。もちろん法律に基づいたルールはあるものの、それをどのように反映させるかは、企業ごとに異なるといっても過言ではないでしょう。そのため、必ずしも経験者が有利とは限らないのです。
前任者が退職を申し出てから後任者の採用まで時間がかかった場合は、引き継ぎが不十分な可能性があります。特に前任者の退職理由によっては、引き継ぎを行うこと自体が難しいケースもあるでしょう。すると業務はブラックボックス化してしまい、後任者がどれほど経験を積んだ優秀な人であっても、手探りで進める必要があります。
経理業務には資格こそ不要ですが、簿記や税法の知識は必須です。しかし、全くの未経験で経理を担当する人は少なくありません。そういったケースでは、前任者の簿記不足により不適切な方法で業務を遂行していた恐れもあります。場合によっては、仕訳記帳における勘定科目が毎回異なる可能性すらあるでしょう。
企業によっては「前任者は担当していた」という理由で、さまざまなバックオフィス業務を任せることもあるでしょう。しかし、経理は本来、専門性の高い業務です。経験者だからこそ、経理以外は未経験の可能性もあるのです。
以上のようなケースでは、せっかく経理経験者を採用してもスキルを十分に生かせません。企業側は、後任者の話をよく聞き、どこに問題があるのかを見極める必要があります。また、企業が考える「経理業務」と後任者の考える「経理業務」に食い違いがないか、互いの認識をすりあわせることも重要です。
経理業務の遂行に問題があるのなら、次のような改善方法が考えられます。
中小企業会計要領とは、以下のような中小企業の実態に合わせた会計ルールです。
この中小企業会計要領は、2011年に設置された中小企業関係者などを主体とする「中小企業の会計に関する検討会」によって策定されました。自社の規模に合った会計ルールで、経理業務を無理なく遂行できます。また、適切な処理を実施することで、取引先や金融機関との信頼関係の強化にもつながるでしょう。
1人経理の業務量が多く手が回らない場合は、アウトソーシングの利用も視野に入れると良いでしょう。専門知識やノウハウを持つプロに委託することで、業務の精度も向上し、1人経理には難しいダブルチェックも可能になります。
また、経理業務プロセスをまるごと委託するプランや、作業単位で委託できるプランなど、委託範囲に融通が利くため、自社で手に負えない部分だけ任せることも可能です。経理知識のある後任者には得意領域を任せて、煩雑なルーティンワークを外部委託するなどの工夫で、双方の持ち味を生かすこともできるでしょう。
アウトソーシングを導入する場合、業務の切り出しを行うために、まず社内全体の業務フローを見直します。この工程によって、ブラックボックス化した経理業務がプロの手で解体され、最適な業務フローへと生まれ変わります。
経理経験者のスキルを生かすためには、経理業務やバックオフィス業務に必要な機能が搭載されたITツールを導入することも有効な手段です。煩雑な単純作業を自動化することで1人経理の業務負荷が大きく減り、より専門性の高い業務に注力できでしょう。特にクラウド型会計システムは、以下の機能によって業務効率化が期待できます。
金融機関との連携により取引・店舗売上・経費データを自動で取得・仕訳します。あらかじめ仕訳ルールを設定しておくため、イレギュラーな出納があっても安心です。手入力によるヒューマンエラーがなくなるため、正確性が高まり情報精度の向上にもつながります。
電子帳簿保存法の改正により、領収書や請求書などの証憑類はデジタル管理することになりました。クラウド型システムの導入は情報共有や共同作業を容易にするため、プレゼン資料や契約書などもデジタル管理しやすくなるでしょう。デジタル管理は印刷コスト・管理コストの削減ができるほか、検索しやすいことも大きなメリットです。
月次・年次決算報告書、税務申告書などの必要資料も自動作成できます。もちろん自動集計されるため、経理担当者は最終的なチェックを行うだけでかまいません。営業部門や開発部門、経営者などから要求された資料も、条件を入力すれば自動作成可能です。
クラウド型ツールは、システムもデータもクラウドサーバー上に保存されます。そのため、いつでもどこからでも端末を選ばずアクセスできます。外出先でも最新の財務情報や業績を確認することができ、ビジネスチャンスを逃しません。またテレワークにも対応しやすく、より柔軟な働き方が実現するでしょう。
中小企業の経理業務は企業によって特徴が異なるという点について、ご理解いただけたことと思います。経理経験者のスキルを生かすためには、上記のようにちょっとした工夫が必要です。
もちろん、これまでの経理業務フローを改善したからといって、経理経験のある後任者が不要になるわけではありません。むしろ、後任者の経理スキルを、より有効に活用できるでしょう。
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