2024.09.22
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2023年10月よりスタートしたインボイス制度について、簡単におさらいしておきましょう。
インボイス(invoice)」とは、英語で「商品明細が記載された納品書兼請求書」という意味です。日本のインボイス制度では、法定事項を満たした「適格請求書」をインボイスと呼びます。
インボイス制度の施行によって、売手(モノ・サービスの提供元)には「買手の要求に応じてインボイスを発行、その控えを保存すること」が義務づけられました。ただし、インボイスを発行するためには、税務署に適格請求書発行事業者の登録をする必要があります。
また、買手(モノ・サービスの提供先)は、受領したインボイスと帳簿を保存しておかなければ、消費税の仕入税額控除を受けることができません。
つまり、インボイス制度とは、「事業者が仕入税額控除を受けるために必要な適格請求書を発行・保存するためのルール」を定めたものだというわけです。
では、適格請求書とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
「インボイス(適格請求書)」とは、法律によって定められた項目をすべて満たした請求書です。必要な記載事項が、漏れたり抜けたりしているものはインボイスとして認められません。
インボイスとして認められない場合、買手は消費税の仕入税額控除を受けられないことになります。そのような事態を避けるためには、売手側が適切なフォーマットを整えることはもちろん、買手側も記載内容をしっかりと確認することが大切です。
消費税法では、下記の「6事項」を必ず記載するよう定めています。
インボイスで最も重要な項目が「登録番号」です。登録番号は、適格請求書発行事業者の登録完了によって取得できます。国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト(https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/)には、適格請求書発行事業者一覧が掲載されており、登録番号からの検索が可能です。
「氏名または名称」について、登録簿と異なる屋号や省略した名称を用いる場合は、事業者の特定ができる電話番号などを併記しましょう。
万が一、登録番号を偽造したり、別の数字を登録番号と誤認するようなかたちで記載したりすると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金を科される可能性があります。
取引年月日は、正確な日付で記載しましょう。
インボイスの発行は、取引の都度でも一定期間まとめてでもかまいません。複数の取引をまとめたインボイスを発行する際は、取引ごとの明細を併記するか、取引ごとに発行した納品書との関係が明らかになるような工夫が必要です。
提供したモノやサービスについての明細を記載します。それぞれの適用税率(8%・10%)が明らかになるよう、税率ごとに分けて記載するか「※」などの記号を用いて区別すると良いでしょう。
モノやサービスの価格について、それぞれの適用税率(標準税率10%・軽減税率8%)が明確であること、また税率ごとの合計金額がわかりやすいように記載します。このときの合計金額は、「税込価格」でも「税別価格」でもかまいません。
税率ごとに、消費税の合計額も明記します。記載事項4において、合計金額を「税込価格」で記載した場合は内訳としての税額、「税別価格」で記載した場合は上乗せされる税額として表しましょう。
不特定多数に販売を行う飲食業や小売業、タクシー業を営む事業者は、「簡易インボイス(適格簡易請求書)」を発行できます。簡易インボイスでは、記載事項4と5のどちらかを明記していれば、もう一方を省略可能です。
モノやサービスの提供先である企業名や氏名を記載しましょう。ただし、簡易インボイスでは省略できます。
インボイス制度では、請求書の発行や受領に関するルールが新たに制定されています。これまで慣習化していた処理が禁止されるなど、「これまでの当たり前」が通用しないことも多々あるでしょう。後で大量に修正する羽目に陥らないために、前もって知っておくことが大切です。
消費税額を計算する際、1円未満の端数が生じる可能性があります。これまで消費税の端数処理に関しては明確なルールがありませんでした。しかし、インボイス制度では「1つのインボイスにつき、税率ごとに1回ずつの端数処理を行う」と定められています。
インボイスには、商品ごと(行ごと)の消費税額を表示してもかまいません。しかし、消費税額の算出は、「税率ごとの税抜合計額×税率」あるいは「税率ごとの税込価格合計×10/110(もしくは8/108)」で行います。ただし、端数処理の方法(切捨・切上・四捨五入など)については自由です。
参考図のように「商品ごとの消費税額合計額」と「税率ごとの消費税額合計額」が異なるケースもあるでしょう。受け取った際の混乱を防ぐためには、端数処理での調整や表示方法の変更、欄外に計算方法に関する一文を添えるなどの工夫も必要です。
受領した請求書の記載内容にミスや漏れ・抜けなどがあった場合、従来の区分記載請求書等保存方式では受け取り側でも追記できました。しかし、インボイスでは買手による追記は認められていません。
インボイスの記載内容に不備があった場合は、発行事業者に修正したうえでの再発行を依頼する必要があります。修正を求められた発行事業者は、速やかに「正しい内容を記載した修正インボイス」あるいは「不備のあるインボイスとの関係を明示した修正部分のみ記載したインボイス」を発行しましょう。
売手である適格請求書発行事業者は、発行したインボイスの写し(控え)を保管する義務があります。ただし、インボイスの記載事項が確認できる帳簿データなどが保存されていれば、インボイスの写しそのものでなくてもかまいません。
買手である課税事業者は、仕入帳簿(総勘定元帳)に記入のうえ、帳簿とインボイスの双方を保管します。帳簿の記載事項は、①相手方の氏名(名称)②取引年月日③取引内容④対価合計で、従来と同様です。
保管期間については、売手買手ともに消費税法で7年間、会社法・法人税法で最長10年間と定められています。インボイス制度では、必ずしも電子保存が必要なわけではありません。しかし、電子帳簿保存法への対応やペーパーレス化による保管コスト削減などを考えると、電子化が望ましいでしょう。
いつもの取引先と交わすインボイスについては、互いに確認や調整を行うことで大きな混乱は回避できます。しかし、問題は経費申請などで提出される領収書・レシートなどです。フォーマットもバラバラでインボイスとそうでないものが混在するため、事務処理の負担増は避けられません。また、記載事項に不備があっても、小売店や飲食店にその都度修正を依頼するのは現実的ではないでしょう。
そこで、事務負担の軽減措置として少額特例が設けられました。これにより、少額の課税仕入について一定の事項を記載した帳簿があれば、インボイスの保存がなくても仕入税額控除の適用を受けられます。
少額特例の適用を受けるための条件は、以下の4つです。
①少額(税込1万円未満)の課税仕入れであること
②一定事項の記載された帳簿が保存されていること
③前々年(法人の場合は前々事業年度)の課税売上高が1億円以下、あるいは前年1~6月(法人の場合は前事業年度の上半期)の課税売上高が5,000万円以下であること
④2023年10月1日から2029年9月30日までの適用対象期間に行われた取引であること
少額特例の適用可否は、取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは問いません。
少額特例の適用対象は、税込1万円未満の課税仕入れです。このときの1万円未満とは、「1商品の金額」ではなく、「1回の取引金額」で判断するという点に注意しましょう。例えば、商品単価が300円であっても同時に40個購入した場合は合計額が1万円を超えるため、少額特例の対象とはなりません。
この特例は、あくまでも買手の事務負担軽減を目的とした措置です。インボイス発行事業者の交付義務が免除されているわけではありません。適格請求書発行事業者は、課税事業者からインボイスを求められた場合には、取引金額にかかわらず速やかに交付する義務があります。
インボイス制度は、2023年10月1日に始まりました。しかし、すでに体制が整っている中小企業ばかりではなく、段階的に対応している方や免税事業者として様子を見ている方、新たに起業した方も少なくはないでしょう。
これから準備をする方に向けて、インボイスの発行・受領に必要な対応についてお話します。
インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者登録が必要です。納税地を所轄する税務署に、登録申請を行いましょう。書面で申請する場合は、国税庁のウェブサイトから申請書をダウンロードし、窓口に持参あるいは郵送で提出します。e-Tax申請を利用する場合は、マイナンバーカードとe-Tax上で取得する「利用者識別番号」を用意し、画面の指示に従って進めましょう。
登録通知の目安は、書面申請で約1カ月~1カ月半、e-Tax申請で約1カ月です。書類に不備等があるとその分時間がかかります。
提出日から15日以降を目安とした任意の日付を「登録希望日」として申請可能です。実際の処理状況に関わらず指定した希望日が「登録日」となり、登録通知から遡って効力を発揮します。取引先(売手)に早急な対応を求められた際などに役立つでしょう。ただし、登録番号は登録通知までわかりません。
本記事で解説した「6つの必要事項」を満たすため、請求書のフォーマットを変更する必要があります。
特に注意すべき点は、次の3点です。
・登録番号:正しい番号が記載されているか、別の数字を登録番号と誤認されるように表示していないか
・発行者名:屋号や略称を用いる場合は、電話番号などを併記しているか
・消費税の端数処理:取引ごとの合計金額に対する消費税額になっているか
これまでに発行していた請求書を手直しして使う場合は、記載事項の漏れが生じやすいため、しっかりと確認しておきましょう。
自社で使っている会計システムが買い切り型(インストール型)の場合、古いバージョンのままではインボイスに対応できない可能性があります。あるいは、インボイスに向けて新たな会計システムの導入を検討している場合は、対応しているかどうかの確認を忘れないようにしましょう。
クラウド型の会計システムは、基本的に自動的にアップデートが提供されます。法改正や新制度施行のたびに準備する必要がなく、常に適切なフォーマットになるため安心です。
せっかくインボイスを発行しても、記載事項やルールに則っていないと買手は消費財の仕入税額控除を受けることができません。取引先に迷惑をかけないためにも、適切なインボイスを発行しましょう。
自社のインボイスが適切かどうか不安な場合は、プロの目で確認してもらうと安心です。
これから導入するために自社に合ったシステムを選びたい、あるいは適格請求書発行事業者登録をすべきかどうか悩んでいるといった場合も、プロに相談することをおすすめします。
インボイスの発行においてミスや漏れなどが生じた場合、後で軌道修正するのは大変です。修正インボイス発行コストなどを考慮しても、前もって専門知識を持つプロの助言を得ておいた方が良いでしょう。
また、インボイスに適したシステムを導入する際に、会社全体の業務フローを見直すことで、同時に業務効率化を図ることも可能です。
初回無料サービスなどを利用して、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
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