コラム
- 2025.12.18
- よくある経費精算NG例とその修正方法をケース別に解説
「社員から提出された経費精算書、確認してみたら不備だらけ…」
「領収書がない!金額が合わない!摘要が曖昧!」
こうしたトラブルは、どの中小企業にも日常的に起こり得る光景です。
経費精算は毎月のルーティン業務である一方、処理ミスが企業の経理・税務・労務リスクに直結する、非常に重要な業務です。
この記事では、経理担当者がよく遭遇する「経費精算のNG例」をケースごとに取り上げ、それぞれの原因と適切な修正方法をわかりやすく解説します。
✅ この記事でわかること
- 経費精算でよくある具体的なミス
- 各ケースの「なぜNGなのか」理由と背景
- 実務での正しい修正方法
- 再発防止のための社内ルールや対策のヒント
経理業務の品質を高めたい中小企業の経理担当者や、ルール整備を進めたい経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
よくある経費精算NG例と修正方法
ケース①:領収書が添付されていない
NGパターン:
社員が経費精算書に「〇〇の会食代 5,000円」と記入したが、領収書が見当たらない。「紛失しました」「もらえませんでした」と口頭で申告。
なぜNG?
- 証憑(証拠書類)なき支出は、経費として認められない可能性が高い
- 税務調査時、領収書がなければ経費否認される
- 会社の内部統制が機能していないと見なされ、ガバナンスの信頼性が損なわれる
修正方法:
- 社員に領収書の再発行依頼をしてもらう(飲食店やホテルでは対応可の場合あり)
- 再発行が不可能な場合は、「支払証明書(社内書式)」を作成し、上長が承認
例:日付・金額・目的・取引先・支払手段・理由を記載し、本人署名+上司印を取得
ケース②:インボイスの登録番号が記載されていない領収書
NGパターン:
経費精算書にはレシートが添付されているが、インボイス登録番号が記載されていない。
なぜNG?
- 2023年10月以降、インボイス(適格請求書)でなければ消費税の仕入税額控除ができない
- 税込経理方式では、控除不可による差額損失が発生する可能性あり
修正方法:
- 登録事業者であれば、正しいインボイスの再発行を依頼
- 登録事業者でない場合、経費はインボイスなしとして税込処理で仕訳修正
- 1万円未満の支出であれば、「少額特例(経過措置)」により帳簿保存で対応可能(記録必須)
ケース③:交通費精算で移動区間や目的が不明
NGパターン:
「電車代 1,540円」とだけ記載されており、区間・訪問先・目的が記載されていない。
なぜNG?
- 事業性が判断できず、経費として認められない可能性がある
- 私的利用の疑いが出る
- 内容の妥当性が重要視される傾向にある
修正方法:
- 速やかに「移動区間・訪問先・目的」を再申告してもらう
- 精算書フォーマットに入力欄を設けて未記入防止
例:「9/5 新宿駅〜横浜駅(〇〇商事との打ち合わせ)」
ケース④:日付が精算日と一致していない領収書
NGパターン:
9月10日の経費精算に8月25日付の領収書が添付されていた
なぜNG?
- 決算期の「期間対応」が適切に行われなくなる
- 前月分の経費を今月に含めることで、会計の正確性を欠く
修正方法:
- 仕訳時に領収書日付=発生日に基づいて正しい月で計上
- 社員には「支払日で処理するルール」の徹底を周知
ケース⑤:摘要欄が「〇〇代」などあいまい
NGパターン:
「会議代」「打ち合わせ費」など抽象的な記載で具体性がない
なぜNG?
- 内容不明で税務署から説明を求められるリスクがある
- 交際費と会議費の区別ができず、税務処理が曖昧になる
修正方法:
- 「いつ・誰と・何のため」を明記
- 社内マニュアルで分類ルールを明確に定める
例:「9/8 〇〇商事 山田様との打ち合わせ(新規取引先開拓)」
ケース⑥:同じ日に同額の交通費が複数提出されている
NGパターン:
同じ日・同じ区間で同じ金額の交通費精算が複数あり、実際には重複申請だった
なぜNG?
- 二重精算は不正・横領と見なされるリスクがある
- 意図的でなくても、内部統制が問われる重大問題
修正方法:
- 即座に却下・修正依頼を行い、本人へ事情を確認
- 精算システムで重複チェックを活用
- 承認者へ不正検知の視点を教育
ケース⑦:電子レシートやスクショ画像だけ提出されている
NGパターン:
アプリや通販での購入について、スクリーンショットだけを提出
なぜNG?
- 電子帳簿保存法に適合していなければ証憑と認められない
- 改ざん防止・真実性の面で不十分
修正方法:
- 電子帳簿保存法の要件(改ざん防止・検索性など)を満たして保存
- またはPDF形式の正式な領収書を印刷して紙保存
トラブルを防ぐための再発防止策
1. 経費精算マニュアルの整備
- インボイス制度・電子帳簿保存法への対応を含んだ最新版を作成
- 部署別に説明会を実施し、実務への落とし込みを図る
2. フォーマットの見直し
- 精算書に「必須記載項目」(目的・取引先・移動区間など)を明記
- チェックリスト形式にして入力漏れを防止
3. 経費精算システムの導入
- 重複・日付ミス・インボイス非対応などを自動チェック
- 申請から承認・仕訳まで一元管理し、業務効率を大幅向上
まとめ
経費精算は毎月の定型業務でありながら、不正・ミス・法令違反の温床にもなり得るリスク業務です。
本記事で紹介したようなよくあるNG例を見逃さず、適切な修正と社内運用ルールを整えることで、経理の信頼性と精度が格段に高まります。
弊社では、経費精算に関する制度整備や、クラウド経費精算ツールの導入サポートを行っております。
「ミスが多い」「手作業が限界」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ
部長代理
興梠 貴裕
保有資格弥生インストラクター資格 / 日商簿記3級
専門分野IT
経歴業務系システム業界に身を置いて12年目。様々な業種のお客様のシステム導入に関する多くの相談実績が有り 導入実績も多数。常にお客様目線で対応し、お客様の課題解決に全力で取り組む姿勢に定評有。
専門家紹介はこちら