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コラム

2025.12.15
経理属人化を防ぐマニュアル整備と引き継ぎ設計の実践ガイド

「経理担当者が辞めたら、業務が止まってしまう」という不安を抱えている中小企業の経営者は多いのではないでしょうか。特に中小企業に多い「1人経理」は、担当者に業務が集中しやすく、属人化が進むことでミスや不正のリスクが高まります。そうした状況で担当者が急に退職すると、引き継ぎ困難による業務停滞リスクにも直面します。

経理業務の属人化を防止するには、業務の棚卸し・マニュアル化・クラウド共有・引き継ぎ設計というステップの実践が有効です。本コラムでは、経理業務の属人化対策にすぐ着手できるよう、具体的な手順やツールの活用方法を詳しく解説します。

≪目次≫
なぜ経理の属人化が問題なのか
属人化を防ぐ3つの実践ステップ
クラウド会計の導入で「属人化解消+業務効率化」
「いつでも引き継ぎ可能」な状態にしておく
まとめ:経理業務の見える化で安心体制へ

なぜ経理の属人化が問題なのか

「この人に任せておけば大丈夫」だからと特定の従業員に依存すると、業務の属人化が進みます。日常の請求書処理や入出金管理、月次・年次の決算、税務対応といった経理業務は、専門性が高く代替が難しい分野です。そのため、規模の小さい企業ほど少人数で担当する「1人経理」が定着する傾向があります。

日本商工会議所・東京商工会議所の調査では、売上高1,000万円以下の事業者のうち79.4%が経理を1人で担っていることが分かりました。こうした「1人経理」体制では、担当者の負担が大きくなりやすく、次のようなリスクが生じます。

1.経理担当者不在による業務停滞リスク

経理業務が属人化している場合には、担当者の不在はそのまま業務停滞につながります。経理業務が止まれば、請求漏れや支払いの遅延が発生し、日々の資金管理にも支障をきたします。特に、月末や年度末といった経理の繁忙期に業務の停滞が起こると、企業経営に悪影響を及ぼす可能性もあるのです。

経理担当者の退職は突然起こることもある

従業員の退職は、必ずしも事前に相談や予告があるとは限りません。急な病気によって担当者が突然退職することもあります。あるいは、引っ越しで通勤が困難になったり、育児や家族の介護との両立が難しくなったりするケースもあるでしょう。経理業務が属人化している企業にとって、担当者の急な退職は大きなリスクとなります。

2.チェック体制の欠如がミスや不正を招く

金銭を扱う経理業務には、透明性が不可欠です。しかし、経理業務が属人化している場合には、担当者以外に業務内容を把握している人がいないため、第三者によるチェック機能が働きません。結果として、入力ミスや処理漏れの発見が遅れたり、内部不正などの問題が見逃されたりするリスクが高まります。

財務データの正確性が損なわれるリスク

経理のミスや不正が見逃されると、財務データの正確性が損なわれます。経営判断に不正確な財務データを用いると、投資や資金調達のタイミングを誤り、資金繰りの悪化や事業計画の遅延などの深刻な経営リスクに直結します。

その結果「経理にミスや不正があるのではないか」という不信感が広がり、業務効率の低下や外部信用の失墜につながるおそれもあるでしょう。

3.引き継ぎ困難による再構築コストの発生

「1人経理」では、業務内容が文書化されていないケースも多く見られます。この場合、引き継ぎは口頭や実演に頼ることとなり、新任者が業務を理解するまでに多くの時間と労力が必要です。

経理業務の独自ルールが引き継ぎを難しくする

中小企業では、会計処理が企業独自のルールに基づいて行われていることが少なくありません。たとえ経理の経験者を新たに雇用できたとしても、自社の独自ルールをすぐに理解することは困難です。これが再構築コストを増大させる要因となっています。

4.経営者が把握すべき経理の責任と影響

経理担当者が行っている処理内容を経営者が十分に把握できない状況には、重大なリスクを伴います。経営者は、経理の責任と影響を正しく理解し、業務の透明性と共有体制を確保することが不可欠です。

属人化を防ぐ3つの実践ステップ

それでは、経理属人化を防ぐためにはどうすれば良いのでしょうか。効果的な方法として、業務の見える化や標準化が挙げられます。ここでは、具体的な実践方法を、「1.業務棚卸し・2.マニュアル化・3.クラウド共有」というステップごとに説明します。

ステップ1:業務棚卸しで経理業務を可視化

まず行うべきは、現状の業務を洗い出して整理する「業務の棚卸し」です。担当者や処理内容・頻度を可視化することで、担当者しか知らない処理や判断を明らかにします。業務の重複やムダが見えるため、業務フローの改善にもつながります。

ステップ2:マニュアルの作成で業務手順を標準化

手順と判断基準を文書化することで、誰が担当しても同じ基準で業務を進められるようになり、突発的な退職や休職への対応負担を大幅に軽減できます。

マニュアル作成に役立つ無料ツール紹介

マニュアルの作成には、テンプレートが豊富な無料のクラウドツールを活用すると効率的です。

ステップ3:クラウド共有で情報の属人化を防ぐ

作成したマニュアルや帳票は、クラウドサーバー上で共有します。担当者以外の従業員がどこからでもアクセスできる環境を整えることで、業務の透明性が高まります。

共有しやすいクラウドツール

  • Googleドライブ / Dropbox帳票などのデータ保管・共有に最適
  • Notion:タグ管理や検索機能に優れ、マニュアル共有に便利
  •  

クラウド会計の導入で「属人化解消+業務効率化」

中小企業で経理業務が属人化する根本的な原因は、「1人経理」にあります。リソースが限られている中小企業では、経理担当者に業務を依存せざるを得ないため、属人化が進みやすくなるのです。こうした課題を解消し、同時に業務効率化を図るためには、クラウド会計システム(以下、クラウド会計)の導入が効果的です。

クラウド会計で定型業務を自動化する

クラウド会計システム(以下、クラウド会計)を導入すると、煩雑な定型業務を自動化できます。システムが自動的に処理することで、担当者の不在時に業務が停滞するリスクを低減し、正確性と透明性が向上します。

情報共有で経理業務の透明性を高める

クラウド会計は、リアルタイムでデータ確認が可能です。経理情報が担当者だけに閉じず、組織全体での共有が容易になるため、経営判断の迅速化にも有効です。

テレワーク対応で退職リスクを軽減できる可能性

クラウド会計を導入すれば、自宅からでも業務を継続できます。テレワーク環境の整備は、育児や介護による退職リスクを軽減し、人材定着に貢献します。

※関連コラム:2025年10月施行「育児・介護休業法改正」|中小企業がとるべき対策と理由

「いつでも引き継ぎ可能」な状態にしておく

従業員の退職は、事前に分かっているケースだけではありません。経理担当者の急な退職や休職によって、担当者を変更せざるを得ない状況に陥ることもあります。このような場合でも業務が止まらないよう、いつでも引き継ぎできる体制を事前に整えておくことが重要です。

引き継ぎ業務の優先順位を整理する

突然の事態に備え、以下の業務など優先順位が高いものから整理しておきましょう。

  • 日々の仕訳記帳
  • 請求書発行・支払い業務
  • 月次・年次の決算業務

引き継ぎ資料の作成と保管のポイント

マニュアルだけでなく、金融機関やシステムのログイン情報の引き継ぎ体制も不可欠です。アクセス制限を施した共有シートやパスワードマネージャーを活用しましょう。

外部パートナーとの連携ルールを整備する

税理士や金融機関との連携フローを明文化しておくことで、担当者が変わっても一貫した対応が可能になり、対外的な信頼を維持できます。

まとめ:経理業務の見える化で安心体制へ

経理業務の属人化を放置することは、やがて深刻な経営リスクへとつながります。まずは「今ある業務を見える化する」という小さな一歩から始めてみませんか。

弊社では、貴社の状況を丁寧にヒアリングし、1人経理によるリスクを低減するための最適な整備方法をご提案いたします。初回の面談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

神奈川 横浜・町田経理アウトソーシングオフィスは、経理・税務・経営に関するお客様のあらゆる課題を解決する総合会計事務所です。創業50年以上の歴史を持ち、約100名の専門家がお客様の事業を力強くサポートします。

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この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ 部長代理 興梠 貴裕
保有資格弥生インストラクター資格 / 日商簿記3級
専門分野IT
経歴業務系システム業界に身を置いて12年目。様々な業種のお客様のシステム導入に関する多くの相談実績が有り 導入実績も多数。常にお客様目線で対応し、お客様の課題解決に全力で取り組む姿勢に定評有。
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