2024.12.20
【事業承継後の成長戦略】DXがもたらす新たな可能性
中小企業における事業承継後の課題と実態 中小企業庁がまとめた「中小企業白書」(2024)によると、中小企業経営者の高齢化はさらに進行し、その平均年齢は過去最高の60.5歳に達したとのことです。60歳…
2024年1月に改正された電子帳簿保存法では、電子取引データの電子保存が完全義務化されました。これに伴い、領収書や請求書をデジタル保存するために会計システムを導入したという企業は少なくありません。
しかし、会計システムの機能を十分に活用できていない企業や、クラウド型ではなくインストール型の会計システムを使用している企業もあります。
ここでは、クラウド会計システムと税理士を活用することで、企業成長につなげていくための3つのステップを紹介しましょう。
会計システムには、インストール型とクラウド型の2種類があります。インストール型は、特定のパソコンに導入して使用する従来のタイプです。一方、クラウド型は、インターネットを介してクラウドサーバーにアクセスし、サーバー内のシステムを利用します。
クラウド会計システムを導入することで、次のようなメリットが得られます。
多岐にわたる経理の仕事の中でも、記帳業務は日々の主要な作業の1つです。通常は、以下の流れで業務を進めます。
取引
仕訳
記帳
転記
集計
これらの中で、次のものはクラウド会計システムで自動化できます。
銀行などの金融機関やクレジットカードと連携すると、会計システムが取引データや決済情報を自動的に取得します。担当者が取引情報を手動で入力する必要がなくなります。
取得した取引内容は、適切な勘定科目に自動仕訳されます。担当者はあらかじめ条件を設定しておけば、仕訳データが妥当かどうかを確認するだけで業務が完了します。
取引が発生すると、経理担当者は取引内容に応じて仕訳帳への記帳を行い、その後に勘定科目別の総勘定元帳へ転記します。クラウド会計システムを導入すると、取引データが自動取得されるほか、適切な仕訳が行われてリアルタイムで各帳簿に反映されます。
これにより、記帳や転記の業務が大幅に効率化できるでしょう。
クラウド会計システムは、記帳作業だけではなく集計作業も自動で行います。一連の記帳業務を自動化することによって、手動では避けられなかった計算ミスや転記漏れといったヒューマンエラーのリスクを排除できます。結果として、データの正確性が向上するのです。
多くの会計システムでは、取得した取引データがリアルタイムでレポートに反映されます。売上高や収益ごとの集計レポート、入金や支払管理レポートなど、さまざまな種類のレポートが自動作成できます。
多くのシステムではレポートのテーマや条件を任意に決められるだけではなく、視覚効果の高いグラフなどの出力形式も選べます。開発部門や営業部門などがそれぞれ必要に応じたレポートを簡単に取得できるため、経営状況の把握にも役立つでしょう。
企業間で行われる取引は、ほとんどが掛取引です。掛取引では、請求書の発行や入金確認、領収書の確認や支払い手続きなどの業務が発生します。これらは取引先との信頼関係にも関わるため、ミスをすることは許されません。
クラウド会計システムを導入することによって、掛取引に関わる以下の業務が自動化できます。
クラウド会計システムに備わっている機能や連携サービスを利用することによって、請求書の作成や発行が自動化できます。同時に売掛金と入金予定の仕訳が作成され、記帳まで完了します。連携している金融機関へ入金されると、自動的にデータが取得され、仕訳と記帳が行われます。
電子帳簿保存法の改正によって、取引先からの領収書もデジタルデータで届くようになりました。クラウド会計システムは、領収書データの取り込みから管理まで自動で行います。支払い予約も行えるため、支払い漏れなどの人為的なミスも回避できるでしょう。
また、支払い実行後の仕訳や記帳、消込作業も自動で行われます。
社内に税理士がいることも多い大企業とは異なり、中小企業では、外部の税理士法人や税理士事務所などと契約するのが一般的です。
クラウド会計システムと税理士を連携することによって、どのような利点が生まれるのかを見ていきましょう。
これまで税理士と情報を共有するためには、紙の書類を郵便やFAXで送ったり、デジタルデータをメールに添付して送付したりする必要がありました。コミュニケーション手段も、対応時間が限定される電話や対面、一方通行になりやすいメールが主でした。
しかし、クラウド会計システムの導入によって、以下のような方法に変えることが可能です。
クラウドツールの利点は、アクセス権のある人が時間や場所、端末を問わずに情報にアクセスできることです。アクセス権はIDによって管理でき、編集権や閲覧権などを個別に設定することが可能です。
アクセス権は外部の人間にも付与できるため、税理士に閲覧権を与えることで、データの送付を行わなくても最新の情報にいつでも直接アクセスしてもらえます。
このため、リアルタイムで税理士との情報共有が行えるようになります。
クラウド会計システムとビジネスチャットやオンライン会議ツールを併用することで、税理士との情報共有をより効率的に行えます。ビジネスチャットは各自が都合の良い時に対応できるうえに、スレッド式に会話を追えるため、メールのように一方通行にはなりにくいでしょう。
オンライン会議ツールはインターネットにつながっていればどこからでも参加できるので、移動の手間がなくなります。そのため、隙間時間に会議を行うことも可能です。
クラウドツールを併用することで、税理士と互いに最新のデータを見ながらコミュニケーションを図れます。
日本商工会議所および東京商工会議所の2024年の調査で、売上高1千万円以下の事業者の9割以上がバックオフィス業務を1人で担う「1人経理」であることが明らかになっています。そのうち、経営者が経理を兼務する「経営者経理」の企業も少なくありません。
社内では手が回らない業務は、税理士に委託している企業も多いでしょう。会計システムを導入することによって、税理士との連携のさらなる効率化を目指せます。
記帳や掛取引といった日常の細かい作業は、会計システムで自動化が可能です。そのため、税理士に作業を委託する必要はなくなるでしょう。
クラウドツールのアクセス権を税理士に付与することで、最新の会計データをリアルタイムで共有できます。税理士が時間や場所を問わず最新の帳簿データにアクセスできるため、関連書類を郵送する必要はありません。
税理士にダブルチェックや節税アドバイスを委託している場合には、リアルタイムのデータ共有によって連携がよりスムーズになります。
クラウド会計を導入することによって、会計データの正確性を高めるだけではなく、最新の情報を反映した見やすいレポートも作成できます。自社の状況を税理士が把握しやすくなるため、より的確な節税対策を講じてもらえるでしょう。
また、決算に必要な各種書類も自動作成できるため、確定申告や税務調査対応などもより効率的に行えます。
クラウド会計による精度の高いレポートは、自社の目標値に対する現状を客観視するのに有効です。さらに税理士の知識やノウハウの両方を活用することで、将来を見すえた事業計画が立てやすくなるでしょう。
また、正確性の高い決算書類や堅実な事業計画書を用意できるため、銀行からの融資が受けやすくなることも期待できます。必要な時に資金の投入を行うことで、企業成長につなげやすくなります。
しかし、クラウド会計システムの利点を生かすには、以下の点に注意する必要があります。
会計システムにはさまざまな種類のものが存在しており、対象となる企業規模や業種が限定されている場合もあります。そのため、まずは自社の規模や業種にあったものを選ぶことが重要です。
また、システムによって機能や操作性が異なります。自社にとって必要のない機能が多いと使いこなせないうえ、操作が複雑になり、使い勝手が悪くなる可能性もあります。
目的や必要な機能を社内できちんと明確化し、自社に適したシステムを選ぶことが大切です。
顧問税理士が扱えるシステムを選ぶことも重要です。すでに会計システムが導入されている場合には、同じものを導入するか、使用されているシステムに連携可能なものを選ぶと良いでしょう。
税理士の環境では対応できないものを導入してしまうと、リアルタイムで会計データが共有できるというクラウド会計システムの利点が損なわれてしまいます。
税理士によっては、会計システムの選定から導入までを一貫してサポートしているところもあります。顧問弁護士に相談をしながら導入を進めましょう。
システムの導入には、必要機器の購入費用、準備費用などのイニシャルコストがかかります。また、導入後の運用にかかるランニングコストも軽視できません。
初期費用によっては、当初は割高に感じることもあります。しかし、中長期的にクラウドツールを使うことで業務効率化を進むと、大幅なコストダウンが実現します。トータルで費用対効果の良さを感じる可能性が高いでしょう。
初期費用の負担や投じるコストをどの程度の期間でペイできるのかなども、税理士に相談しながら検討することが重要です。
クラウド会計システムの導入は、経理業務の効率化や「1人経理」、「経営者経理」のリスクを解消することにもつながります。
適切なシステムの選定や効果的な運用のため、導入する際には税理士に相談すると良いでしょう。もし、顧問税理士では対応できない場合には、新しい税理士への委託を検討することをおすすめします。
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