2024.11.21
経営者の経理兼務はコスト削減になるのか?見落としてはならない「社長の価値」
経営者が兼務する経理業務とは 少子化の進行によって、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。それを補っていた高齢者の就業者数も近年では減少に転じていることから、人材不足の問題はより…
中小企業における従業員の高齢化問題について、まずは客観的な資料から状況を把握しておきましょう。
日本の出生率は、1970年代半ばをピークに減少の一途をたどっており、その結果若年齢者の割合が減少する「少子化」が続いています。また一方では、戦後の経済成長による生活水準の向上、国民皆保険・皆年金などの社会保障の充実や医療技術の発展などにより、平均寿命が延びたため「高齢化」も進行しているというわけです。
この少子高齢化は、企業を構成する人材にも深刻な影響を与えています。総務省が発表した「就業構造基本調査」によると、雇用者数のうち60歳代・70歳代の割合は、企業規模が300人以上では約10%、20~299人で約19%、5~19人で約25%となっており、4人以下では約38%にものぼることがわかりました。これは雇用者のデータですから、経営者も含めると、中小企業における高齢者割合はさらに多くなることでしょう。
悪性腫瘍や肝硬変などの発症は、一般的に50代以上で多くなるといわれています。また血圧や中性脂肪、血糖値などのスコアが高くなり、健康診断で注意されることが増えるのもこの世代です。これらの数値の悪化は、脳梗塞や急性心筋梗塞を引き起こすリスクがあります。また、当人は健康を維持していても、親世代の介護が始まるというケースもあるでしょう。
考えたくないことですが、高齢化が進むほど、急な退職や休職を余儀なくされる可能性は高まります。療養や介護が必要な状態は、前兆を伴ってやってくるとは限りません。退職日を決め、新規採用を行い、引継ぎを済ませてから円満に退社できるケースばかりではないのです。
中小企業に多い「1人経理」を担当する従業員が、もしも明日から出社できない状況になってしまったら、どうなるでしょうか。
1人経理では、その他の従業員や経営者に経理知識のないことがほとんどです。そのため、経理担当者が不在になれば、あっという間に業務は停滞するでしょう。それによって、起こる具体的な問題は以下の通りです。
経理業務は、会社を出たり入ったりするお金の流れをすべて帳簿に記録しています。この記帳が滞ると、現在の業績や資産残高などを把握することができません。どのくらいお金を使って、どのくらい残っているのかがわからないため、適切な経営判断をくだせなくなるでしょう。
請求業務とは、売掛金の回収業務です。法に基づく適正な請求書を発行しなければ、取引先は支払業務を遂行できません。しかし、担当者がいなければ、資金の回収ができないばかりか、できていないことに気づくことさえ難しいでしょう。
買掛金の支払い業務も、経理担当者の重要な仕事の1つです。業務停滞により、仕入れ先に対する支払遅延が起こると対外的な信頼を失うことは避けられません。この先の取引に応じてもらえなくなる可能性も考えられます。
従業員が立て替えた経費の立替精算業務が滞ると、社員からの信用も失います。経費の立て替えに応じてくれなくなったり、気づかぬうちに不正申請をされたりするかもしれません。
期日までに、正しい額の給与を支払うことができないと、従業員からの信頼は失墜し、モチベーション低下を招きます。給与に関する不安や不満は離職率に直結するため、さらなる人材不足を起こすおそれもあります。
1人経理は業務手順を共有する必要がないため、マニュアル化されていないことがほとんどです。たとえ、人材の補充ができても、まずはブラックボックス化している業務フローを手探りで再構築する必要があり、正常化までには時間がかかるでしょう。
ここからは、1人経理が健在なうちにしておくべき対策を紹介します。ただし、対策を講じたからといって、現・1人経理担当者が辞める必要はありません。むしろ1人経理にとっても働きやすい環境が整い、多様な状況にも柔軟な対応が可能となるでしょう。
担当者以外が業務プロセスを把握していないことを、業務の属人化といいます。長い期間、決まった従業員が同じ業務を担当していると、担当者以外にはわからない業務が増え、属人化が進みます。中小企業における1人経理は、属人化が起こりやすい状況だといえるでしょう。
属人化の解消には、会計システムを用いた業務効率化が有効です。そのために必要な3つのステップを紹介します。
経理部門には、請求・売掛金管理、支払・買掛金管理、仕訳記帳・集計、経費精算管理、決算報告書作成、税務申告書作成、勤怠管理・給与計算などさまざまな業務があります。
まずは、業務ごとの工程や実行するタイミングなどを確認して、手順の重複や遠回りなどのムダを洗い出しましょう。次に、例えば営業部門の社員が会議で使う数字を確認したいときに、1人経理がデータを出力するのを待たなければならないなど、経理業務がボトルネックとなっている状況も明らかにします。
1人経理の業務効率化には、クラウド型の会計システムがおすすめです。
クラウド型の特徴として、システムやデータがクラウドサーバーに保存されているという点が挙げられます。これにより、アクセス権を持つ従業員はいつでもどこからでもデータの閲覧が可能です。例えば、取引先に求められたデータをすぐに提示したり、営業部門の社員が担当先への支払状況などを確認したりすることもでき、信頼関係構築にも役立ちます。
また、銀行など金融機関の取引情報はデータ取得から仕訳記帳まで自動化されます。さらに、経費精算や勤怠管理も同様にデータ取得や集計が自動化されるため、1人経理が不在でも業務停滞を起こしにくくなります。ただし、導入コスト・運用コストがかかるため、自社にとって必要な機能を見極めることも大切です。
このように、クラウド型会計システムの導入は業務フローのムダやボトルネックを解消し、業務効率化を実現させます。
業務フローの最適化に合わせて、経理業務のマニュアルを作成しておきましょう。マニュアルがあれば、もしも経理担当者が退職や休職をすることになっても慌てる必要はありません。
また、1人経理は業務停滞に配慮して休暇が取りにくいといわれていますが、マニュアルがあれば他部門の社員に代行を頼みやすくなります。長期有給休暇も取得できるようになるでしょう。
根本的な人材不足を解決する1つの手段として、職場環境の改善が挙げられます。リソースが限られた中小企業だからこそ、人材の流出を防ぎ、採用がしやすい環境を整えておくことが大切です。
そのためには、以下の2ステップを参考にすると良いでしょう。
具体的には、勤務時間に融通の利く勤務体系を設けること、テレワークの体制を整えることが効果的です。時短勤務やフレックス制など、勤務時間に融通が利くことで家族の送迎や看護・介護といった事情を抱える従業員が働きやすくなります。また、クラウド型システムの導入などによってテレワークの体制を整えることで、優秀だけれども家から出ることが難しい事情を抱えた人材を採用できるようになるでしょう。
高齢化によって体調に不安が生じた場合でも、変則的な勤務が可能ならば継続して働けるというケースもあります。そもそも経理担当者が辞める必要がなくなったり、後任者にゆとりを持って引き継ぐことができたりするのではないでしょうか。
従業員の高齢化が進めば、一定の退職者が出ることは仕方のないことです。しかし、エンゲージメントを向上させる工夫をすることで、中堅社員や若手社員の離職率を下げることができます。また、離職率の低い企業は求職者にとっても魅力的なため、新規採用もしやすくなるでしょう。
具体的には、評価方法を明確にして賞与や表彰などで従業員のモチベーションアップを図ること、福利厚生や研修体制を充実させることなどが挙げられます。
ここまで、社内環境の整備や採用に向けた取り組みを紹介しました。しかし、高齢化が進んでいるのは経理ばかりではないため、営業職や開発職の補充を優先したいという企業もあるでしょう。
以下に紹介するアウトソーシングのメリットデメリットを考慮したうえで、自社にとって最適な方法を見つけることが大切です。
アウトソーシングは、会計業務の専門家に経理業務を委託する方法です。そのため、経理担当者が急に退職しても引き継ぎの心配がなく、自社で新規雇用する必要もありません。また、専門知識やスキルを持つプロに処理を委託できるため、業務の正確性向上も期待できます。
社外で処理を行うため、経理業務のノウハウが自社に残りにくく、業務内容の把握にもタイムラグが生じます。また、契約プランによっては柔軟な対応が難しいケースや、別途費用がかかるケースもあります。
アウトソーシングにはコストがかかりますが、業務プロセスごと一任する方法から部分的に委託する方法まで、幅広い選択が可能です。経理担当者が在籍しているうちに、さまざまなプランを検討しておくと良いでしょう。
中小企業における経理担当者の高齢化問題への対策について、解説しました。
経理アウトソーシングオフィスでは、こうした問題に対処するためのさまざまなサービスを提供しています。
弊社では丁寧なヒアリングを行い、貴社の状況を分析し、問題解決のための最善策についてアドバイスすることができます。
例えば、システム導入による業務効率化を検討したい場合には、理想の経理フロー構築のための洗い出し作業から、クラウドツールの選定、導入サポート、運用開始後のフォローアップまで一貫してご提供いたします。
バックオフィスのDX化が推進されている今、IT導入補助金などの国の後押しが使える可能性もあります。ぜひ、システムの導入をご検討ください。
あるいは、業務のアウトソーシングを検討したい場合には、貴社のご希望に合わせて、以下に展開する各種サービスをご案内いたします。
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