2024.11.21
経営者の経理兼務はコスト削減になるのか?見落としてはならない「社長の価値」
経営者が兼務する経理業務とは 少子化の進行によって、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。それを補っていた高齢者の就業者数も近年では減少に転じていることから、人材不足の問題はより…
一般的に、バックオフィス業務は担当者が少ない傾向にあります。特に、少数精鋭の中小企業では、リソースに限りがあるため、経理を含むバックオフィス業務全般を1人で担当するケースも多いでしょう。しかし、経理業務は企業の要です。もしも、1人で経理を担当している社員が何らかの理由で急に退職した場合、次のようなトラブルは避けられません。
1人経理の企業では、ほかに経理業務がわかる人材がいないケースがほとんどです。そのため、経理担当者の不在によって、業務の停滞や遅延が起こります。
経理業務には、社内業務と対外業務があります。例えば、社内業務の1つである記帳作業が数日遅れる程度ならば取り戻せるでしょう。しかし、対外業務である売掛金の請求書発行や買掛金の支払いは、会社の信用に直結します。たった1回の遅延が、取引先との信頼関係に大きなダメージを与えるでしょう。
1人経理は、社内で業務内容を共有する機会がほとんどありません。そのため、業務手順や経験に基づく知識は企業ではなく担当者個人に蓄積されていき、属人化が進みます。また、業務内容が明文化されておらず、古いマニュアルがあっても情報の更新が滞っているケースが多いでしょう。
そのため、担当者が退職したあとは業務がブラックボックス化してしまい、後任者に業務を引き継ぐことができません。属人化は1人経理期間が長いほど、深刻化します。
担当者不在による業務停滞が手遅れになる前に、後任者を採用する必要があります。しかし、日本の生産年齢(15~64歳)人口は1995年をピークに減少の一途をたどっており、慢性的な人材不足に陥っています。なかでも、専門性の高い経理人材は稀少です。スキルの高い人材は人件費も高くなり、未経験者を採用した場合は育成コストがかかるといった問題もあります。そもそも、1人経理が退職したあとの社内に、経理スキルの育成ができる人材がいるかという懸念もあるでしょう。
後任者が見つかっている場合は、引き継ぎを行います。しかし、経理業務には毎日行う日常業務に加え、月次業務や年次業務があり、引継ぎには最低でも数ヶ月が必要だといわれています。しかしながら、実際のところは十分な引継ぎ期間を確保することは難しく、後任者の採用時期によっては、すでに前任者が不在だというケースもあるでしょう。引き継ぎが不十分な場合は、ブラックボックス化した業務フローを手探りで再構築しなければなりません。
1人経理の退職は、会社経営にも影響が及ぶ可能性がある緊急事態です。できれば退職しないでほしい、どうしても退職する場合は早めに伝えてほしいところではないでしょうか。しかし、民法では、正社員などの「期間を定めない雇用」に対して、退職を希望する場合は退職予定日の2週間前に申し出るように定めています。法律で定められている以上、認めないわけにはいきません。また、以下のような事情があるケースも考えられます。
病気やケガは、老若男女関係なく誰にでも起こりえます。1人経理は、煩雑かつ精密性の高い経理業務をたった1人で処理するため、繁忙期には休日出勤や時間外労働が増えることの多い仕事です。また、会社のお金を管理しているため責任の重さなど、精神的な負荷を感じやすいという人もいるでしょう。さらには、社内には同じ部門を担当する仲間がいないため、孤独を感じやすいという側面もあります。
このような事情から、1人経理の担当者が心身に不調を感じて休業に入り、思うように回復しないまま退職に至るというケースも考えられます。
1人経理の担当者自身が産休や育休を取得するケースでは、休業の開始が予測できるため、引継ぎ期間や後任者の採用活動などに余裕が生まれます。しかし、家族の療養や介護、配偶者の転勤といった理由は、担当者本人にはコントロールできないことがほとんどで、スケジュールの調整も困難です。
経理業務は、生産部門や営業部門のような目に見える成果物がないため、他部門社員から「数字をつけるだけの簡単な仕事」だと軽視されているケースもあります。また、中小企業の場合はジョブローテーションの機会がないことも多く、経理業務に対する誤解や温度差が解消されないまま不満を募らせて退職してしまう可能性があるでしょう。
1人経理にはお金に関する権限が集中している一方で相互監視が成立していないため、その気になればかんたんに内部不正を起こせます。
「その気になる(内部不正を実行する)」トリガーとして、
①動機・プレッシャー:お金が欲しい重圧から逃れたい
②機会:実行する技術とチャンスがある
③正当性:状況を作った企業が悪い
の3要素が揃うことが挙げられます。これは、米国の組織犯罪研究者であるドナルド・クレッシーによって提唱された「不正のトライアングル」という理論で、1人経理はすべての要素が揃いやすいことがわかります。
万が一、不正を実行した場合は即時解雇される可能性が高く、当然引継ぎどころではないでしょう。
有給休暇は労働者の権利ですが、1人経理は担当者の不在が業務の停滞に直結するため休みづらく、有給が溜まっていることがあります。そういったケースでは、退職の申し出と同時に有給休暇消化で出社しなくなることもあるでしょう。これも、法的には問題のない行為ですので、強制的に出社を要請することはできません。
1人経理は、担当者の退職によるリスクが高いことがわかりました。円満な関係を築いていても、担当者当人や家族の療養や介護、転勤などが生じることは防げません。
ここからは、1人経理がいるうちに取り組むべき退職リスク対策を紹介します。
業務内容をマニュアル化して、誰が担当しても同じ品質の処理ができるようにしておくことが大切です。1人経理の期間が長い場合は、法改正などで形骸化した作業が残っていたり、効率の悪い手順が組まれていたりするため、この機会に業務フローを見直すとよいでしょう。このとき、経理業務に強い税理士事務所などに業務フローの見直しを依頼すると、最新の税法や制度に合わせた最適化・標準化に向けたサポートを受けられます。マニュアル作成後は常にアップデートをして、最新の状態に保っておくことも大切です。
クラウド型の会計システムを導入すると、経理業務の大半を自動化できます。取引情報の自動取得から自動仕訳記帳、月次・年次決算資料の自動作成も可能です。自動化によるヒューマンエラーの消滅で、業務の正確性が向上します。また、領収書や請求書等の電子化やペーパーレス化の推進にも役立ち、経理をはじめとするバックオフィス業務の業務効率化が実現するでしょう。
また、データはクラウドサーバー上に保存されているため、インターネット環境があれば時間や場所、端末を問わずに複数人で情報の共有ができます。経理担当者以外でもリアルタイムで情報共有できるため営業機会の損失を防ぎ、業績アップにつながるかもしれません。
経理業務のうち、対外的な業務である掛取引管理や企業の根幹を担う仕訳記帳業務など、各業務単位での外部委託も検討の価値がある手段です。1人経理担当者が急にいなくなっても、預けた業務は問題なく遂行され、引き継ぎの必要もありません。また、外部のプロによるダブルチェックが行われるため、正確性向上だけでなく内部不正リスク低減もかないます。
1人経理の突然の退職は、会社全体を巻き込む一大事になりかねません。とはいえ、退職の理由はさまざまで防ぐことが難しいからこそ、できるだけ早めの対策をしておくことが大切です。
「1人経理のいる企業」と一口に言っても、企業ごとに状況や悩みが違って当然です。
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