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コラム

2025.01.16
売掛金管理の強化でスムーズな資金繰りを実現する方法

売掛金管理がなぜ重要か?

掛取引のうち、売ったときに発生する未回収代金が「売掛金」です。まずは、売掛金管理が会社にとって重要な理由を確認しておきましょう。

黒字倒産を回避するため

掛取引は後払いですから、売上計上と代金受け取りのタイミングがずれることになります。つまりこれは、「商品は出ていったのに、売上金が入ってきていない期間」が生まれるということです。売掛金の回収が遅れると、利益は出ているはずなのに現金がショートする「黒字倒産」に陥るおそれがあります。

黒字倒産を回避するためには、帳簿上の数字だけではなく、取引先ごとの売掛金額の回収状況を正確に把握しておかなければなりません。

得意先の信用確保のため

掛取引の請求には、正確な数字が必要です。もしも、間違った請求をしてしまえば、得意先の信用を失うことになるでしょう。また、回収状況に応じた適切な対応を取ることができない場合も、信頼関係に傷を生じかねません。

取引先との関係を維持するためにも、今回の取引内容と未回収売掛金額がいくらになるのかを把握し、正確に請求することが重要です。

このように、売掛金管理は自社事業の継続、発展に欠かせない業務といえます。

売掛金管理をスムーズに行う4つのステップ

では、売掛金管理は具体的にどのようなことを行うのでしょうか。一般的な流れを確認しておきましょう。

(1)契約時:支払期日、支払手段などの支払条件を決める

取引をすることが決まったら、契約を交わす際に支払期日(末締め翌月末払いなど)や、支払手段(現金、振込、手形など)を取り決めます。できる限り早期に現金化したいところですが、取引先との関係や支払能力などを考慮することも大切です。

(2)売上発生:記帳・請求書発行

売上が発生したら対応する管理帳簿に記載し、請求書を発行します。取引によって、自社フォーマットと先方フォーマットを使い分ける必要があります。インボイス制度の施行により、適格請求書を求められることも増えたのではないでしょうか。イレギュラーにも対応できる体制を整えておくと安心です。

(3)入金日:入金確認・領収書発行・消込

請求書に記した支払期限になったら、先方の入金が行われたことを確認します。予定通りに正しい金額で売掛金を回収ができたら領収書を発行し、帳簿の回収済み売掛金の消込を行います。

(4)未回収確認:先方に連絡・交渉

もしも、期日を過ぎても入金がない場合は、以下のような方法で対応しましょう。

未回収対応1:督促・請求書再発行

まず、取引先に未回収であることを伝えます。単純なミスや手続き上の手違いの可能性もあるでしょう。期日は過ぎたものの支払の目処が立つケース場合は、請求書の再発行など早期回収に向けた手続きを行います。このとき、支払計画を策定し明文化しておくことが重要です。

未回収対応2:買掛金の相殺

その取引先に対して自社の未払買掛金がある場合には、その期日に支払いではなく相殺処理を行います。その結果、未回収金額に届かなかった場合は、回収に向けた手続きを続けます。

未回収対応3:内容証明郵便

回収交渉に応じてもらえない、再設定した支払期日にも入金が確認できないという場合には、内容証明郵便で督促すると良いでしょう。内容証明を送ることは法的手段に出る前の明確な意思表示としても有効な手段です。

未回収対応4:法的手段

訴訟(調停)手続きは煩雑なうえ、時間もコストもかかります。そこまでの手間をかける価値があるかどうか、冷静に判断することも大切です。また、手続きが簡易かつ迅速で費用負担も軽い「少額訴訟」や「支払督促」といった手続きもあわせて検討すると良いでしょう。

未回収対応5:貸倒損失の検討

督促にかかる手間やコストを考えて、回収を諦める場合もあるかと思います。その場合には、税務上の損金にすることで、税負担を軽減できる可能性があります。ただし、損金にするためにはいくつかの要件がありますので、顧問税理士などとよく相談しましょう。

売掛金管理で未回収を出さないための3つのポイント

未回収金額が多いと、自社まで経営の危機に陥るおそれがあります。そのようなリスクを回避するためにも、適切な売掛金管理が必要なのです。ここからは、売掛金の未回収を減らすために重要な3つのポイントを解説します。

ポイント1:回収状況の共有

中小企業では、経理業務を少人数で担当する「1人経理」が多いでしょう。しかし、1人経理は担当者の離席や不在で業務の停滞が起こりやすいという問題があります。未回収への対応にタイムロスを作らないためには、回収状況を含めた売掛金管理情報を共有することが重要です。

売掛金管理台帳整備

まずは、売掛金管理台帳を整備して、回収状況を一目で確認できるようにしておきましょう。アナログの管理帳簿は検索や突き合わせに時間がかかるうえ見落としやすいため、デジタルデータでの管理が効率的です。

回収フローのマニュアル化

売掛金を回収するための手順をマニュアル化しておきましょう。「どのタイミングで、どのような対応を行うのか」といった流れを決めておくと、誰でも的確に動けます。

回収状況のモニタリングと共有

経理担当者だけでなく、営業担当者や総務などでも把握しておくべき情報です。入金予定日はいつなのか、どのくらいの期間入金が遅れているのか、自社ではどのような対応をしているのかといった情報を、社内全体で共有することが大切です。

ポイント2:与信管理

売掛金の回収遅延や貸し倒れを防ぐためには、与信管理も重要です。与信管理とは、取引先から代金を回収できないリスクを最小限に抑えるための管理で、具体的には以下のようなことを行います。

  • 取引開始前に経営内容や財務状態を調査、評価する
  • 取引先の財務状態に応じて、取引額や量に上限を設定する
  • 取引先の業績や財務状況によって、取引限度額の増減を行う

ポイント3:セーフティネットに加入

もしも、取引先企業が倒産した場合に備えて、セーフティネットに加入することもリスク対策の1つです。中小企業倒産防止共済制度では、取引先企業が倒産した場合に最高8,000万円までの貸し付けが受けられます。また、掛金を損金にできるため、節税対策効果も期待できるでしょう。加入や貸付には条件がありますので、税理士とよく相談することをおすすめします。

売掛金管理をさらに強化する方法

取引数が少ないうちは表計算ソフトやインストール型の会計ソフト上でも管理できますが、数が増えてくると会計帳簿だけで追い切れなくなるでしょう。社内のリソース不足で、売掛金管理やモニタリングが難しいといった場合には、以下の方法で売掛金管理を強化すると良いでしょう。

【1】売掛金管理システムを導入する

経理業務を扱うクラウドシステムは、金融機関と連携し取引データを自動取得するため、ミスや漏れといったヒューマンエラーが起きません。また、システムやデータはクラウドサーバーにあるため、権限を持つ従業員はいつでもどこからでも任意の端末でアクセスでき、情報の更新や閲覧が可能です。

システム導入のメリット

売掛金管理・請求に特化したシステムでは、売上からの請求書発行、入金確認、消込記帳までを自動化できます。請求書や領収書を適切なタイミングで発行できることで、取引先との信頼関係構築にも役立つでしょう。未回収が生じた場合もすぐに対応できるため、ミスやトラブルによる入金遅延の迅速な解決が期待できます。

システム導入のデメリット

システムの導入には、ある程度のコストがかかります。また、多くの作業が自動化することで、業務フローは大きく変わるでしょう。

【2】売掛金管理をアウトソーシングする

経理担当者が不在、あるいは兼務している場合などは、売掛金管理をアウトソーシングするという方法があります。

アウトソーシングのメリット

自社の事務作業を外注に出すことで、リソースをコア業務に集中できる点がメリットです。一般的にアウトソーシングを請け負う業者には税理士や会計士など経理のプロが在籍しているため、お金にまつわる重要な業務を正確に遂行してもらえます。また、システムでは対応が難しい督促や与信調査について依頼できる場合もあるでしょう。

アウトソーシングのデメリット

アウトソーシングでもコストがかかります。また、外部に情報を委託することによるセキュリティリスクが生じるため、委託先の選定が重要です。

まとめ

以上、売掛金管理の概要と方法、ポイントをご説明しました。

期日になっても未回収の売掛金は、早めに原因を特定して督促し対応すれば早期の回収につながります。売掛金管理をせずに放置してしまうと未回収に気付かずに回収が遅くなるだけでなく、原因も分からなくなり回収不能になりかねません。

売上の金額ばかりを追い求めても、代金を回収しなければ意味がないのです。本コラムで紹介した売掛金管理ポイントを参考に効率的な管理を行いましょう。

また、アウトソーシングやシステム導入も効果的な選択肢のひとつです。メリットとデメリットを理解したうえで、自社の状況に合った方法をご検討ください。

弊社では、貴社の環境に応じてご提案・サポートさせていただきます。

もちろんご相談内容は守秘義務により厳重に守られますので、ご安心ください。

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この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ 部長代理 興梠 貴裕
保有資格弥生インストラクター資格 / 日商簿記3級
専門分野IT
経歴業務系システム業界に身を置いて12年目。様々な業種のお客様のシステム導入に関する多くの相談実績が有り 導入実績も多数。常にお客様目線で対応し、お客様の課題解決に全力で取り組む姿勢に定評有。
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