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コラム

2025.02.15
年末調整と何が違う?【起業後、初めての確定申告】

確定申告の目的とは?

確定申告は、個人の所得に対する税金である所得税を正しく申告・納付するための手続きです。1月1日から12月31日までの1年間の収入から必要経費や控除額を差し引いた課税対象額に税率を乗じて、所属税額を算出します。

確定申告と年末調整の違い

「確定申告」と「年末調整」は、どちらも所得税を納税するための手続きという点では同じです。ただし、確定申告は「所得税の確定と納付」という目的で行われるのに対し、年末調整は「先払いした所得税の過不足を精算する」ために行われます。

会社員の場合は、所属企業が毎月の給与を支払う際に所得税を源泉徴収しています。しかしながら、このときの所得税額は年間給与見込額に基づく概算です。年間給与額が確定する12月に、各種所得控除も考慮して再計算を行い、適正税額と源泉徴収額との差額を調整します。これが、「年末調整」です。

確定申告が必要な人

所得税は、給与や事業所得だけでなく、不動産や山林を所有することで生じる収入、有価証券取引による利益などにも課税されます。通常、企業に所属する会社員は確定申告不要ですが、下記に該当する場合は確定申告が必要なケースがあります。

  • 1年間の収入金額が2,000万円を超える
  • 株式売買、不動産収益など、給与以外に20万円超の所得がある
  • 副業など、2か所以上の事業所からそれぞれ20万円超の給与を得ている
  • 医療費控除・寄付金控除などを申請したい
  • 年の途中で退職して再就職していないなど未精算の源泉徴収税がある

確定申告をしない場合のペナルティ

必要な確定申告を期限内に行わない場合は、税法に基づき次のペナルティを受けることがあります。

ペナルティ1:延滞税

確定申告の遅延に対する利子に相当する「延滞税」です。法定納期限の翌日から完納日までの日数に応じて課されます。完納まで2カ月以上かかると、延滞税率が高くなる点に注意が必要です。

ペナルティ2:加算税

故意や悪意があると判断されるケースでは、延滞税に加えて以下の加算税も課されるおそれがあります。

  • 故意に進行を放置した場合:無申告加算税
  • 過少に申告した場合:過少申告加算税
  • 仮装隠蔽があるなど悪質な場合:重加算税

このような延滞税を課されると、事業主としての信用は失墜し、事業そのものにも悪影響をおよぼすでしょう。

確定申告の前に「白色申告と青色申告は何が違う?」

事業所得の申告方法には「白色申告」と「青色申告」があります。大きな違いは、次の2点です。

  • 申告承認申請:白色申告は、申告の際に特別な許可は必要ありません。一方、青色申告は、税務署による事前承認が必要です。新規開業した場合は開業日から2カ月以内、すでに開業している人が青色申告申請に切り替える場合はその年の3月15日までに申請手続きを行います。
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  • 帳簿の記帳方法と決算書類:白色申告は、入出金のみを記録する簡易簿記による管理でかまいません。対して、青色申告はより詳細な帳簿管理が必要なほか、損益計算書(PL)と賃借対照表(BS)の提出も必要です。

青色申告で得られる4つの特典

65万円の所得控除

所得税の基礎控除は、納税者本人の所得金額に応じて最高48万円ですが、青色申告に切り替えると青色申告控除として最高55万円の所得控除が適用されます。さらに、青色申告者が電子帳簿保存法に適した電子申告を行うと、青色申告特別控除として65万円の控除が適用されます。

家族給与の経費算入

従業員に、配偶者や15歳以上の家族従業員がいる場合、その給与を必要経費に算入することができます。

貸倒引当金

売掛金、貸付金などの貸倒れによる損失見込額として、一定割合の金額を必要経費として繰り入れることが可能です。

赤字の繰越し

赤字申告から3年間、黒字との相殺が可能です。起業後間もなく、まだ利益が安定していない時期に利用価値の高い特典です。

確定申告の前に「節税のコツは?」

収入のうち、所得税の対象となる金額を「課税所得」といい、以下の手順で計算します。

  • ステップ1:収入-経費=「所得」
  • ステップ2:所得-所得控除=「課税所得」

所得税や住民税は、課税所得に一定の税率を乗じて算出します。つまり、経費計上や控除適用を正しく行うことが、総合的な節税につながるというわけです。

所得税軽減のコツ1:経費の計上

個人事業主の場合、計上できる経費の額に上限はありません。事業運営にかかる費用はすべて経費算入が可能です。どのような名目でもかまいませんが、一般的には以下の経費科目が挙げられます。

  • 広告宣伝費:名刺・会社案内制作費、メディア掲載費用など
  • 接待交際費:ビジネスに直結する飲食、贈答品購入費など
  • 旅費交通費:通勤や営業に必要な公共交通料金、タクシー代、宿泊費用など
  • 外注工賃:外注スタッフなどへの支払い
  • 通信費:電話代、切手代、インターネット設備費用など
  • 荷造運賃:運送料、梱包材費用など
  • 給料賃金:従業員給与、賃金、賞与など
  • 専従者給与:配偶者や親族への給与
  • 福利厚生費:従業員の社会保険料・健康診断費など
  • 地代家賃:事務所や店舗の家賃、駐車場代など
  • 水道光熱費:事務所や店舗の水道料金、電気料金、ガス料金など
  • 消耗品費:備品購入費用
  • 修繕費:事務所家屋や設備の維持管理費用
  • 租税公課:事業用不動産の固定資産税、社用車の自動車税など
  • 保険料:事業所の地震保険料、損害保険料、自動車保険料など
  • 減価償却費:パソコンや自動車など、長期間使用する固定資産の調達費用
  • 利子割引料:借入れした運転資金やローンなどの利息
  • 貸倒損失:売掛金や貸付金など債権のうち回収不能金額
  • 未償却の繰延資金:開業費・創立費・社債発行費・開発費などのうち未償却のもの
  • 雑費:どの項目にも該当しない少額の費用

自宅兼事務所のあん分方法

自宅を事務所として利用している場合、経費計上できるのは事業で利用する部分にかかる費用のみです。そのため、プライベートと事業で使う分を区別する「家事あん分」を行います。あん分方法に明確な規定はありませんが、使用面積や使用日数・時間などを考慮して使用比率を決める方法が一般的です。家事あん分の対象は、家賃や水道光熱費のほかに電話・インターネット料金、地震保険料などが挙げられます。社用車をプライベートでも利用する場合は、自動車にかかる諸費用も家事あん分が必要です。

所得税軽減のコツ2:控除制度の活用

所得税には、納税者の家族構成や支出内容に応じたさまざまな控除制度が用意されています。減税効果の大きいものが多いため、適用可否をしっかりと確認することが大切です。

基礎控除

基礎控除は、すべての納税者を対象としていますが、納税者本人の所得による制限があります。・基礎控除:最高48万円~0円

人的控除

納税者本人や家族に該当者がいる場合に適用される控除で、所得や年齢による適用要件が設けられているものもあります。ただし、事業専従者は配偶者控除や扶養控除の対象外です。

  • 配偶者控除:最高38万円(老人控除対象配偶者:最高48万円)
  • 配偶者特別控除:最高38万円
  • 扶養控除:一般38万円(16歳以上)、特定扶養(19~23歳)63万円、老親48万円(同居58万円)
  • 障害者控除:27~75万円(福祉区分、同居の有無などによる)
  • 寡婦控除:27万円/ひとり親控除:35万円 ※納税者自身が該当する場合、どちらか一方
  • 勤労学生控除:27万円 ※納税者自身が該当する場合

支出内容に応じた物的控除

・社会保険料控除:納税者本人、扶養家族の社会保険料の全額

・生命保険料控除:最高12万円(2012年以降の契約)/最高10万円(2011年以前の契約)

・地震保険料控除:最高5万円

・雑損控除:災害や盗難などで資産に損害を受けた場合(限度額あり)

・医療費控除:医療費のうち10万円を超えた分(上限200万)

将来のための掛金控除

共済による退職金や個人年金を準備している場合は、その掛金が下記の控除対象となります。

・小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済掛金、確定拠出年金掛金の全額

寄付金控除

個人として行ったふるさと納税は、寄付金控除の対象です。また、認定団体などへの寄付については、寄付金額の一部に下記の控除が適用されることがあります。

・寄付金控除:国や地方公共団体、特定の法人に対する寄付金の一部

 

確定申告の流れ

確定申告期間は、毎年2月半ばから3月半ばと決まっており、2025年は2月17日から3月17日の1ヵ月間です。

ステップ【1】確定申告方法の選択

確定申告を行う際は、まず申告書の提出方法について以下の3種類から選びます。提出方法によって、書類の作成方法が異なるため、あらかじめ決めておくほうが良いでしょう。

税務署の窓口・出張窓口など

税務署、あるいは役所や公共機関などに設けられた出張窓口に書類を持参する方法です。

郵送

確定申告の書類は、郵送でも受け付けています。その場合、消印の日付が提出日となるため、申告期限が迫っている場合は注意が必要です。

e-Taxによる電子申告

電子申告はオンライン上の専用フォーマットで進めていくため、紙の書類を書く必要がありません。スマホでもPCでも申告できます。

ステップ【2】必要書類の準備

青色申告に必要な書類は、一般的に下記の通りです。年が明けてから準備すると慌ただしくなるため、こまめに進めておくと良いでしょう。

1.確定申告書

税務署や公共機関の窓口のほか、国税庁の確定申告特設サイトからダウンロードすることでも入手できます。e-Taxを利用する場合は、指示に従って入力していけば自動的に計算されます。

2.青色申告決算書

青色申告決算書に総収入金悪や必要経費の内容を記載し、損益計算書と貸借対照表を添付して提出します。

3.各種控除証明書

控除証明書は、9月~11月末ごろに対象機関から発行されます。電子申告をおこなう場合は、デジタル証明書で発行してもらうとデータのまま添付や情報取得ができるため便利です。

4.源泉徴収票

途中まで会社勤めをしていた場合など、年間収入に「起業前の勤務先企業からの給与」や「源泉徴収されている受託報酬」などが含まれている場合は、忘れずに源泉徴収票を受け取っておきましょう。

5.保存管理が必要な帳簿・書類

申告書類の作成に用いた下記の帳簿や書類は、申告時に添付する必要はありません。しかし、後日税務署から提出を求められる可能性があるため、適切に保管しておきましょう。

ステップ【3】申告と納税

申告書の作成が終わったら、予定していた通りの方法で提出します。どの方法を選択しても、マイナンバーの記載、あるいは写しの添付が必要です。マイナンバーカードの準備と暗証番号の確認をしておきます。

所得税の納付期限は、申告書の提出期限と同日です。申告書を提出した後に、税務署から納付書の送付や納税通知書等による知らせはありません。申告内容に基づき、自分で納付手続きを行います。納付方法は、下記の7種類から選択可能です。

 

青色申告には会計システムが便利

ここまで、確定申告の手順を説明してきました。やはり、面倒だと感じる方も多いのではないでしょうか。個人事業主の会計管理には、クラウド型の会計システムが便利です。

クラウド会計システムには、さまざまな利便性がありますが、主に次の点が確定申告に役立ちます。作業効率の向上も期待できるため、確定申告の手間が大幅に軽減するでしょう。

適切な管理帳簿を自動作成

金融機関の取引データ取得から仕訳、記帳、集計まで、会計システムが自動で行います。日々の入出金にかかる作業を手放してコア業務に専念しながら、適切な資産管理も実行できるというわけです。

月次・年次決算資料を自動作成

また、月次・年次決算に必要な集計や資料作成も自動化されており、システムに出力を指示するだけで完了します。入力ミスや転記漏れ、計算間違いといったヒューマンエラーがない分正確性は向上しており、経営状況も把握しやすくなります。

青色申告に適した様式

青色申告を行う際の添付書類は、経理や企業会計の知識がないと扱いは困難です。また、法改正があるたびに独自に勉強して対応しなければなりません。しかし、クラウド型会計システムは自動アップデートにより常に最新の税制に対応しているため、その時々に最適な資料を準備できます。

もちろん、作成した資料はデジタルデータとして提出できるため、印刷や郵送にかかるコスト削減にもつながります。

節税効果を見逃さない

本コラムで紹介したように、所得税の節税効果を得るためには経費計上と控除制度の活用が肝心です。会計システムでは、取引内容から適切な勘定科目に自動仕訳されるため、計上漏れがありません。あらかじめ、家事あん分の割合を登録しておけば、いちいち計算する必要もないでしょう。

また、会計システムを利用して作成した確定申告資料は、「65万円の青色申告特別控除」の要件を満たすため、通常よりも10万円の節税効果を得られます。

 

まとめ

確定申告は、1年間の事業成果に対して正しく納税するために必要な手続きです。個人事業主にとって、事業収支の把握は経営判断に必要であり、適切な経費計上は所得税軽減にも効果的です。

電子帳簿の作成管理は、クラウド会計ツールが便利です。ツール導入により日常的な経理業務を簡素化できるうえ、月次・年次決算資料も自動化できるため、確定申告にかかる負担がなくなります。

弊社のクラウド会計導入サポートでは、税理士によるツール選定や適切な業務フロー構築も可能です。起業後間もないうちに環境整備を行うと、より高い効果が期待できるでしょう。

どうぞお気軽にご連絡ください。

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この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ 部長代理 興梠 貴裕
保有資格弥生インストラクター資格 / 日商簿記3級
専門分野IT
経歴業務系システム業界に身を置いて12年目。様々な業種のお客様のシステム導入に関する多くの相談実績が有り 導入実績も多数。常にお客様目線で対応し、お客様の課題解決に全力で取り組む姿勢に定評有。
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