コラム
- 2025.11.26
- インボイス制度と経費精算:領収書で気をつけたい3つのこと
インボイス制度とは?経費処理にどう影響するのか
インボイス制度の概要
2023年10月からスタートした「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」は、消費税の仕入税額控除に直結する重要な制度です。 中小企業にとっても重要で、経費精算時の領収書やレシートの扱いを誤ると、本来控除できるはずの消費税が控除できず、実質的な損失につながる可能性があります。
「経費の領収書、今まで通り保管しているけど大丈夫?」 「インボイスがもらえなかった場合、経費にできないの?」 と不安を抱える経理担当者や経営者の方も少なくありません。
この記事では、インボイス制度における経費精算時の注意点として、特に「領収書の取り扱い」で気をつけるべき3つの重要ポイントを解説します。
この記事を読むと次のことがわかります
- インボイス制度の基本と経費精算への影響
- 領収書の「適格性」の判断ポイント
- 不備があった場合の実務対応策
- 中小企業としてやるべき社内ルールの整備
インボイス制度のポイント
| 項目 |
内容 |
| 開始時期 |
2023年10月1日 |
| 要件 |
登録された「適格請求書発行事業者」のみ発行可能 |
| 控除要件 |
仕入税額控除には原則「インボイス」の保存が必要 |
領収書に関する3つの注意点
注意点①:領収書が「インボイス」かどうか必ず確認
適格請求書としての要件
領収書・レシートがインボイスとして認められるには、以下 6 つの項目が必要です。
- 適格請求書発行事業者の登録番号(Tから始まる番号)
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率対象かどうかの区別を含む)
- 税抜価格または税込価格
- 適用税率ごとの消費税額
- 発行者の氏名または名称
実務でよくあるケース
- 手書き領収書に登録番号が記載されていない
- レシートには税率があるが発行者名がない
- 複数税率が混在しているのに区分記載がない
経費精算時の対応
- 登録番号の有無を必ず確認
- 記載不備は「帳簿への記載」で一部代替可能(要件あり)
- 社員向けに「インボイス記載例」を周知
注意点②:インボイスがもらえない場合の対処法
インボイスがない場合のリスク
- 経費処理は可能だが、仕入税額控除は原則できない
- 小規模事業者ではインボイス未登録が多いため注意
対処法①:税込経理方式で処理
例:税抜9,091円+消費税909円=10,000円 インボイスがない場合、909円の控除不可 → 10,000円を税込処理する
対処法②:少額特例(1万円未満)
- インボイスがなくても1万円未満の経費は一定条件で控除可能(2029年9月まで)
- 帳簿への正確な記載が必須
注意点③:領収書の原本管理と電子化対応
原本保管の重要性
- 税務調査では原本提示が求められるケースが多い
- 電子帳簿保存法対応していない場合は紙で保存が必要
電子帳簿保存法との連携
電子保存は以下の条件を満たす必要があります。
- 真実性の確保(改ざん防止)
- 可視性の確保(即時閲覧・出力)
- 検索性の確保(取引年月日・金額・取引先)
実務対応のヒント
- スマホ撮影 → 即アップロード&登録
- 紙の領収書は一元管理し保存ルールを明確化
- 電子帳簿保存法対応の経費精算ツール導入を検討
よくあるQ&Aで不安を解消!
Q1:交通費や出張費のレシートがインボイスじゃないけど?
→ 1万円未満なら少額特例の対象の可能性あり。ただし旅費規程や帳簿記載が必要。
Q2:個人事業主からの領収書がインボイスでない場合は?
→ 未登録事業者なら控除不可。ただし経費計上は可能、税込処理を行う。
Q3:クレジットカード明細は領収書代わりになる?
→ 原則不可。登録番号・税率などインボイス要件を満たさないため。
社内ルールとマニュアル整備のすすめ
- 「領収書チェックリスト」の配布
- 経費精算フォームにインボイス項目を追加
- 原本保管場所・保存期限の明確化
- 経費精算システムの電子帳簿保存法対応を確認
まとめ
インボイス制度導入後、領収書の取扱いはより厳密な管理が求められます。
- インボイス要件の確認(登録番号・税率など)
- インボイス無しの場合の対応・記帳方法の理解
- 原本保管と電子化の推進
これにより、消費税の控除漏れを防ぎ、税務リスクを大幅に軽減できます。 弊社では経費精算ルールや帳簿管理の整備もサポートしております。お気軽にご相談ください。
この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ
部長代理
興梠 貴裕
保有資格弥生インストラクター資格 / 日商簿記3級
専門分野IT
経歴業務系システム業界に身を置いて12年目。様々な業種のお客様のシステム導入に関する多くの相談実績が有り 導入実績も多数。常にお客様目線で対応し、お客様の課題解決に全力で取り組む姿勢に定評有。
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