2024.11.21
経営者の経理兼務はコスト削減になるのか?見落としてはならない「社長の価値」
経営者が兼務する経理業務とは 少子化の進行によって、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。それを補っていた高齢者の就業者数も近年では減少に転じていることから、人材不足の問題はより…
「不正のトライアングル理論」は、アメリカの組織犯罪学の研究者であるドナルド・クレッシーが1991年に提唱し、スティーブ・アルブレヒト博士が体系化した理論です。現在では、不正対策モデルとして世界的に採用されており、多くの企業がリスク管理に活用しています。
この理論では、内部不正の発生は、以下の3要素が揃っていることが条件だとされています。
不正行為には、起こすための理由が必要です。ただし、不正のトライアングル理論における「動機」とは、借金返済や個人の事情でお金が欲しいといった利己的な欲求とは限りません。「他者からの評価を維持したい」あるいは「業務上のミスや損失を隠さなくてはならない」などといったプレッシャーが動機につながることも考えられます。後者の場合、「真面目な人だから大丈夫」という論法が通用しない点に注意が必要です。
不正のトライアングル理論における「機会」とは、不正を秘密裏に実行できる立場と手段・技術などが揃っている環境を指します。これには、承認者である、1人で担当している、専門的な技術が必要で自分以外に詳しい人がいない、などといったことが当てはまります。その気になりさえすれば、いつでも不正行為が「できる」環境を、「機会」と呼びます。
その気(動機)を後押しする3つめの要素が、「正当化」です。これは、「不正行為をおこなってもしかたない」という理由を指します。例えば「他の人もやっている」「このような状況を作った相手が悪い」などの理屈をつけ、「だから、不正行為をしてもしかたない」と結論づけます。このように責任を転嫁することで、自己の行為を正当化するのです。
企業の経理を担当する従業員が1人しかいない状況を「1人経理」といいます。1人経理は、人材の確保が難しい中小企業に多く、なかには、経理業務のみならずバックオフィス業務全般を1人で担っているケースも珍しくありません。
しかし、1人経理のおかれた環境は、「不正のトライアングル」における3つの条件をすべて満たしています。下記で述べるように、非常に危険な状況だといえるでしょう。
経理業務は、会社のお金の流れを正確に記録管理する重要な仕事です。1人経理の企業では、すべての責任がたった1人の担当者にのしかかっている状況だといえます。その過大なプレッシャーは、ミスがあった場合に、隠蔽や業績悪化の改ざんをおこなう動機になり得るでしょう。
経理業務には専門的な知識と技術が必要です。1人経理以外に経理知識を持つ従業員がいない企業では、日常的な業務をダブルチェックする体制が整っていないケースも多くあります。つまり、1人経理担当者にとっては、不正を実行できる立場と技術を自分だけが持っており、隠し通せる環境が整っているということになります。
経理業務には、煩雑な日常業務に加えて決算期という大仕事があります。他部門から応援を募って対応するケースはよくありますが、応援者が担う本来の業務が滞るため、経理担当者は肩身の狭い思いをするおそれもあるでしょう。不公平な業務負荷や心理的なストレスは不満を生み、「こんな状況にした会社が悪い」などと正当化しやすくなります。
内部不正を防ぐために、厳しいルールを設定し違反があるたびに罰則を科せばよいという考えは、現代では逆効果です。職業的自尊心を損なう罰則は、企業に対する不満を増幅させます。エンゲージメントは低下し、「こんな会社なんか困ればいい、迷惑をかけたい」という動機が生まれることもあるでしょう。その場合、「会社が悪いのだから仕方がない」と不正行為を正当化することも容易です。
内部不正の防止には、ルール強化や厳罰化よりもDX化が効果的です。次項から、その理由について解説します。
「不正のトライアングル理論」を構成する要素のうち、「動機」と「正当化」は個人の内面に根差した主観的な事情のため、外からコントロールすることができません。しかし、「機会」は客観的な環境であるため、企業が主体的に対策を講じることができます。
以下、不正のトライアングルを壊す効果的な対策を紹介します。
経理業務を担う人材を増員すれば、「1人経理」の問題は解消されます。とはいえ、人材不足が深刻化している現状では、そう簡単に増員できないことも事実です。また、経理に関する知識や経験を持つ人材は多くないため賃金が高い傾向にあり、採用機会があっても待遇・条件面が折り合わない可能性が高いでしょう。
人材の増員が難しい場合は、業務を外部に委託して1人経理の負担を軽減するという方法が効果的です。経理業務に「外部の目」が入りチェック機能が働くことで、不正行為を起こしやすい「機会」をなくす効果も得られます。新たなコストはかかりますが、経理担当者を増員するよりも費用がかからず、未経験者を採用するよりも効果的です。
クラウド型会計ツールを導入すると、インターネットを介し、いつでもどこからでも会社の経理情報を確認できるようになります。経理担当者だけでなく、経営者や管理職も自由に閲覧できるため、不正が発覚しにくい環境を回避できます。また、取引の仕訳記帳や経費精算といった日常業務のほとんどを自動化でき、負担軽減とヒューマンエラーの削減がかないます。これにより、経理担当者1人だけが携わることが減り、不正の「機会」が消滅します。
中小企業の規模や人員構成によっては、「業務のアウトソーシング」と「クラウド型会計ツール導入」を効果的に併用する方法もあります。例えば、会計ツールにより日常業務の大部分を自動化し、一部手入力を必要とするものは社内の担当者がおこない、月ごとのダブルチェックと月次・年次決算業務を外部業者にアウトソーシングするという方法です。
この方法は、比較的安価なコストで業務効率化が実現するため、1人経理の業務負荷が軽くなります。不正リスクの3大要素のうち「機会」を消滅させ、「正当化」の成立も防ぎ、「プレッシャー」も軽減させることが可能です。もし、1人経理が利己的な金銭的欲求を持っていたとしても、内部不正を実行することはできないでしょう。
アウトソーシングやクラウド型ツールの導入は、内部不正リスク低減に有効なだけではありません。経理の業務効率化は、企業全体の業務効率化につながります。その理由について、以下に詳しく解説します。
クラウド型会計ツールを導入すると、金融機関との連携により取引明細を自動取得し、あらかじめ設定した科目へと自動仕訳をおこないます。これにより、工数だけでなくヒューマンエラーも減らし、正確性を高めます。また、アウトソーシング先には経理業務のプロが在籍しており、専門家によるダブルチェックが受けられるため業務の精度向上も期待できます。
アウトソーシングやクラウド型会計ツールの導入により、1人経理の過剰な業務負荷が軽減され、時間外労働の削減などの労働環境改善につながります。過大なプレッシャーから解放されることで、担当者のストレスとなる原因も減ることでしょう。これらのことから、企業に対するエンゲージメントアップ、モチベーションアップなどが期待できます。
経理部門の繁忙期に他部門から応援を募る必要がなくなるため、各部門はそれぞれの本業であるコア業務に専念できます。また、1人経理の担当者は、経理業務の工数が減った分、そのほかのバックオフィス業務に注力できます。総総務や労務、一般事務といったバックオフィス業務は他部門のサポートをおこなうことが多いため、結果的に会社全体の各部門が効率よく回り、生産性の向上につながるでしょう。
経理業務の正確性向上は、企業の財務情報に直結します。正確な経営状況を素早く把握できる環境が整うことは、経営判断にも必要不可欠です。営業機会の損失を防ぎ、融資にも有利な条件を提示できるなど、結果的に企業の成長にもつながります。
内部不正の危険が、中小企業にも潜んでいることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
不正のトライアングル理論から見ると、1人経理とは内部不正の3要素を満たす危険な状況です。しかし、アウトソーシングやクラウド型会計ツールの導入によって、その不正要素を効果的に排除することが可能です。
弊社では、経理担当者が不正を起こさない環境を整え、不正が発生した場合にはすぐに気づく体制作りをサポートしています。
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