2024.11.21
経営者の経理兼務はコスト削減になるのか?見落としてはならない「社長の価値」
経営者が兼務する経理業務とは 少子化の進行によって、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。それを補っていた高齢者の就業者数も近年では減少に転じていることから、人材不足の問題はより…
国税庁の公表によると2024年3月末時点でのインボイス登録件数は、約445万件となっています。施行前申請期限であった2023年9月末時点での登録件数は約378万件ですから、実際にインボイス制度が始まってから約67万件も増えていることがわかります。
インボイス制度とは、適格請求書(インボイス)を用いて仕入税額控除を受けるための制度です。主に次の問題解決を目的として創設されました。
・消費税における複数税率の適正理
・「益税」よる課税事業者・免税事業者間の不公平感解消
・インボイス記載事項の統一によるミスや不備、不正リスクの回避
インボイス制度の施行によって変わること、具体的な影響については次のようなことが挙げられます。
消費税は、売買時に発生する税金です。事業者の販売する製品やサービスはもちろん、生産のために仕入れる原料や材料にもかかります。通常、事業者が売上時に受け取った消費税は、仕入時に支払った消費税額を差し引いてから納付します。これを、仕入税額控除といいます。
インボイス制度の施行により、消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには、仕入先が発行したインボイスの保存が必須となりました。
インボイスとは必要事項が適正に記載された適格請求書のことで、インボイス発行事業者登録をしなければ発行することができません。
◆買手の受ける影響
自社の登録状況にかかわらず、取引先がインボイスを発行してくれなければ仕入税額控除を受けることができません。例えば、売上税額が20万円、仕入税額が10万円のとき、仕入税額控除が適用される場合は10万円が納税額となります。しかし、仕入税額控除が適用されなければ、納税額は20万円です。
◆売手の受ける影響
自社がインボイスを発行しないことで、取引先が仕入税額控除を受けられないということになります。自社の売上げに影響はありませんが、取引先に損失を与えることになるため心証の悪化は避けられないでしょう。
インボイス制度施行までに、中小企業を含む多くの法人は登録申請を済ませています。一方で、個人事業主の登録率は芳しくありません。
免税事業者や課税売上高が1,000万円以下の個人事業主は、そもそも消費税の納税義務がなく、消費者の払った消費税をそのまま利益とする「益税」を得ていました。しかし、インボイス制度に登録すると自動的に課税事業者となるため、これまでのように益税を得ることができなくなります。そのために、登録をためらっている個人事業主は多いのではないでしょうか。
しかしながら、取引先企業にとって仕入税額控除が受けられないというデメリットは軽視しがたいことでしょう。交渉や発注数の減少などを経て、次第に取引を終える方向にすすむおそれは否定できません。まずは取引先の意向を確認することが大切です。
なかには、インボイス登録をする必要がない業種もあります。美容院やネイルサロン、英会話教室、幼児教室といった顧客が一般消費者のみの業種では、仕入税額控除を行わないためインボイス不要です。あるいは、免税事業者や簡易課税事業者のみ、医療や介護など非課税サービスを提供する事業者のみだという場合も、消費税納付義務がないためインボイスは使いません。
しかし、上記に該当しない場合は、取引先である課税事業者からインボイスへの対応が求められるケースが多いでしょう。
施行前に設けられていた2023年9月30日という申請期限は、施行と同時にインボイスを発行するためのものでした。インボイス制度への登録自体に期限はなく、今からでも申請できます。
登録申請先は、事業にかかる納税地を所轄する税務署です。郵送による提出のほか、パソコンやタブレットなどでe-Taxを利用して申請する方法があります。
【必要書類一覧】
・電子証明書:マイナンバーカード、商業登記電子証明書等
・本人確認書類:利用者識別番号(e-Tax)、個人事業主の本人確認書類(書面)
・適格請求書発行事業者の登録申請書(書面)
書面で申請する場合は、国税庁の専用HPより申請書をダウンロードして必要事項を記入しましょう。準備した書類(写し)を同封し、各国税局に設置されたインボイス登録センターに郵送します。e-Taxの場合は、画面上の手順に従って進めるだけで申請可能です。
申請後は審査を経て、登録完了の通知が届きます。通常、およそ1カ月~1カ月半が目安です。このとき、申請日から15日以降の任意の日付で「開始日」を設定できます。実際の登録完了通知から遡って効力を発揮できるため、自社や取引先にとって都合のよい日を選びましょう。
申請手続きを終えてから登録通知が届くまでの間に、事前準備を済ませておきましょう。
自社で発行する請求書のフォーマットを、「インボイス(適格請求書)」に対応するものに整えておく必要があります。現行の「区分記載請求書」の記載事項に、次の3項目を追加しましょう。
◆(1)インボイス登録番号
登録が完了すると、インボイス登録番号が付与されます。登録番号は、法人は「T+法人番号」、それ以外の事業者は「T+13桁の数字」となっており、国税庁の専用HPで登録の有無を確認できます。登録番号ではない数字を登録番号と誤解させるような表示は、禁じられているので注意しましょう。
◆(2)適用税率
取引商品ごとに消費税率が10%か8%かを明記する必要があります。
◆(3)税率ごとに区分した消費税額等
適用税率ごとに消費税の合計額を計算します。1回の取引で税率が混在している場合は、それぞれの税率がわかるように区分して記載します。
インボイス登録申請を済ませたこと、おおよその発行可能時期を取引先に伝えることも大切です。取引先が必要とするタイミングに間に合わない場合は、以下のどちらで対応するか取引先と相談しておきましょう。
・事前にインボイスの交付が遅れる旨を取引先に伝え、通知後にインボイスを交付する
・登録番号のない仮請求書等を交付し、通知後に改めてインボイスを交付し直す
インボイス制度では、中小企業に少なからず負担がかかります。特に、経理担当者の業務は増加するうえに複雑化するでしょう。
企業によっては請求書フォーマットの大幅な変更が必要です。切り替え直後は、予想外の不備やミスが発生しやすくなります。管理帳簿から自動的に請求書を作成する会計ツールの導入も、あわせて検討すべきかもしれません。
インボイスを受け取った際は、取引先の登録番号が公式サイトの登録情報に合致するかどうかを確認します。また、記載事項に間違いや漏れがないか十分に確認することも重要です。万一、間違いがあった場合には自社で訂正することができないため、インボイスの再発行あるいは修正インボイスの発行を取引先に依頼しなくてはなりません。
仕入先事業者から直接インボイスを受け取る従業員がいる場合は、まず内容確認をして必要ならば再発行・修正インボイス発行の依頼をするなど、対応を統一することも大切です。そのためには、インボイス制度について従業員全体に周知しておくことも必要でしょう。
インボイス制度では、売手も買手も経理業務負担が増加します。しかし、インボイス制度の導入によって増える負担のほとんどは、DX化によって解消するものばかりです。
インボイス制度では、電子帳簿保存法の基準を満たす電子インボイスの発行・保存が認められています。例えば、クラウド型会計ツールを活用することで、次の業務効率化が実現するでしょう。
・見積書・納品書・領収書・検収書の自動作成
・適正な税率による自動計算・インボイスの作成
・取引データの自動取込・自動仕訳による記帳
・月次資料、年次決算資料の自動作成
また、導入によって業務フローの最適化が図れるため、次のような効果も期待できます。
・手間が大幅に減ることで、リソースやコストの削減につながる
・自動化により、ヒューマンエラーが大幅に減る
・属人化しやすい経理業務がオープンになることで、ミスや内部不正リスクが減る
・適正管理によるセキュリティ・プライバシーリスクの低減
・いつでもどこからでも確認できることで、営業機会を逃さない
インターネット環境とアクセス権の適切な管理で、リモートワークや在宅ワークなど多様な働き方にも対応できます。労働環境の改善は従業員のモチベーションアップにもつながるため、結果的に生産性向上まで期待できるでしょう。
インボイス制度は、すでに施行がスタートしている制度です。登録は今からでも間に合いますが、取引先に対しては迅速な対応が求められるでしょう。
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