2024.11.21
経営者の経理兼務はコスト削減になるのか?見落としてはならない「社長の価値」
経営者が兼務する経理業務とは 少子化の進行によって、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。それを補っていた高齢者の就業者数も近年では減少に転じていることから、人材不足の問題はより…
経理・財務、事務や庶務など、内勤業務(バックオフィス業務)のほとんどをたった1人の担当者が引き受けていることを一人経理と言います。
企業規模にもよりますが、中小企業にとって一人経理は珍しい状況ではありません。
2015年に中小企業庁が発表した「中小企業における会計の実態調査」によると、経理・財務担当の人員数は「1人」との回答が最も多く、58.2%を占めていました。
つまり、中小企業の約6割は、一人経理で会計管理を行っているということになります。
参考:平成26年度 中小企業における会計の実態調査について(中小会計要領の普及状況)
会社における経理の役割は、毎日のお金の流れ、取引の流れを記録・管理することです。
主な業務は、売掛金・買掛金を含む売上げ管理、仕訳伝票の記帳と整理、小口現金・経費精算、税の算定、月次報告書や年次決算書の作成などが挙げられます。
経理担当者が複数人いるところでは、経理・会計・財務と役割分担するケースもありますが、一人経理はすべて1人で行わなければなりません。
また、総務や労務、庶務や人事を兼任している場合は、給与計算・賞与計算、各種保険管理、備品管理や来客対応なども担当することになります。企業規模や業種にもよりますが、バックオフィス業務全般を担っていることが多い点も一人経理の特徴です。
企業にとっての「一人経理」は、人件費が節約できるというメリットがあります。
また、担当者1人に聞けば、会社にかかるお金の流れすべてを把握できるという利便性もあるでしょう。
一方、一人経理のデメリットは高リスクの不安要素が多いことが挙げられます。
特に気をつけたいリスクは次の5つです。
一人経理では、ダブルチェック体制を組むことができず、ミスに気づきにくいというリスクがあります。
もちろん、一人経理が作成した帳簿や書類を最終的に確認する人はいるでしょう。
しかし、税法や簿記の知識がないと経理業務のミスを正確に指摘することはできません。形骸化したチェックでは意味がないのです。
もしも、経理業務上のミスが「過失」ではなく「故意」だった場合はどうでしょうか。
有効なチェック体制がなく、お金の流れを把握している人間が担当者1人のみという状況は、不正も見逃しやすいということです。
「不正のトライアングル理論」では、人が不正行為をはたらくのは「動機・機会・正当化」という3つの要素が揃ったときだと言われています。
一人経理は、「不正をしようと思えばできる環境」という機会を、会社が与えているようなものなのです。
経理業務は、法人税法や会社法、金融商品取引法など様々種類の法律知識を必要とします。
総務や労務を兼任している場合は、社会保険などの労働法制度への理解も必要です。
一人経理は、法改正や新制度の施行にも1人で立ち向かわなければなりません。
対応が義務のものや猶予期間の短いものを優先しているうちに、手間や時間がかかるものが後手になっている可能性は高いでしょう。
例えば、電子帳簿保存法の一部義務化は2024年1月から始まります。対象となる取引の把握や対応の準備はできているでしょうか。
一人経理の最大のリスクは業務の属人化が起こりやすいことです。
そのため、「担当者不在=お金の流れを把握している人が誰もいない」という状況が生じます。
担当者が席を外しているだけならばよいですが、急な体調不良で突発的に休むこともあるでしょう。
ケガや病気の状況によっては、すぐに復帰できるとは限りません。
経理業務が回らなくなるとお金の流れが滞り、会社の運営は機能不全を起こします。不在が長引けば、経営が立ちゆかなくなる可能性もあるのです。
一人経理の担当者が退職し、新たな人材に引き継ぐことになった場合にもリスクは生じます。
一人経理は情報共有の機会がないため、体系立てたマニュアルや引継書が作られていないことがほとんどです。
また、前任者の業務手順が一般的な方法だとは限りません。
引き継ぎが不十分なまま前任者が退職してしまった場合、経理業務がブラックボックス化してしまうおそれがあります。
経理を担当する従業員にとって、一人経理はスキルアップのチャンスです。
様々なバックオフィス業務を経験することで、幅広い知識とスキルが身につくでしょう。
複数の業務をこなすために効率的な手順の構築など、処理能力の向上も期待できます。
また、一人経理は気楽だと考える人もいるでしょう。しかし、企業規模や業務バランスによっては、次のようなリスクも考えられます。
繰り返しになりますが、一人経理は総務や労務などバックオフィス業務全般を兼ねているケースが多く、必然的に多忙です。
仕入伝票の記帳をしていたらコピー用紙補充を頼まれ、電話応対中に小口現金精算書を差し出され、来客にお茶を出して席に戻ると急ぎの見積書作成と送付を依頼され、郵便局と銀行で発送と振り込みを済ませたついでに昼食を食べて、会社に戻って郵便物を仕分けていると、帰社した営業職員に呼ばれ……
ふと気づくと、中断した業務が山積みになっているという日常もありえます。
自分の裁量で動ければ楽しいでしょうが、周囲に振り回されてばかりだとストレスに感じることもあるでしょう。
一人経理の場合、担当業務の全体像を把握しているのは自分1人だけですから、不安なことや疑問があっても相談相手はいません。
特に、専門知識が必要な事柄ほど「自分しかわからない」という状況です。
法改正や新制度施行があるたびに1人で勉強し、「本当にこれで合っているのか」という不安やプレッシャーを抱えながら進めることになります。
留守を任せる相手がいないため、そう簡単には休めないというリスクも見逃せません。
急な体調不良などで突発的に休んだ場合は、出社したときに手つかずのまま積まれた仕事を目の当たりにすることになるでしょう。
普段経理に携わっていない他部署の従業員が「手伝っていてくれた場合」などは、かえってミスがないかをチェックする手間が増えてしまいます。休んだ分苦労するのは、結局自分なのです。
任せる相手がいないということは、転職や退職がしにくいことにもつながります。
辞めたいと相談しても、後任者が見つかるまでは引き留められることが多いでしょう。
後任者が決まっても、業務マニュアルを作成していない場合は、担当していた業務のすべてを口頭説明と実演で伝授しなければなりません。
退職を希望する場合は、後任者が決まり引き継ぎが終わるまで離れられない覚悟と時間的な余裕が必要です。
せっかく職務経歴書に書けることが増えても、求人チャンスを逃すおそれもあるでしょう。
一人経理は、業務のハードさや責任の重さとは裏腹に、社内での立場が弱いことも珍しくありません。
経理業務自体には生産性がなく、営業活動のように数字で結果を表すこともできないため、他部署にとっては何をしているのかわからないこともあるでしょう。
作業中の動きも小さいため「座っていられる楽な仕事」「誰にでもできる雑用」などと言われるケースも多いようです。
それぞれ違う業務を受け持ち、互いに会社を支えているはずの他部署から理解されず、辛い思いをすることもあるでしょう。
このように、一人経理とは企業にとっても担当する従業員にとってもリスクが高く、メリットよりもデメリットが上回ります。
では、一人経理の会社がリスクを減らすためには、どのような対策をすればよいのでしょうか。
経理業務マニュアルを作成して情報共有することで、効果的なダブルチェックが可能になり、ミスや不正を見逃すというリスクを回避できます。
また、他部署の従業員でもマニュアルを見ながら業務を進めることができるため、担当者不在に対するリスクを減らすことも可能です。
担当者にとっては、休暇取得や退職時の引き継ぎもしやすくなるでしょう。
ただし、マニュアルを作成できるのが一人経理担当者のみのため、作成作業時間確保などの課題は残ります。
兼任業務が多すぎる場合は、経理担当者の増員もひとつの手段です。
役割分担と情報共有を徹底し、双方向ダブルチェック体制を整えることができれば、バックオフィス業務全般におけるミスや不正の回避、業務効率アップにつながります。
しかし、当然、その分の人件費が増えることは避けられません。
パートタイマーや派遣社員など、非正規雇用も視野に入れて検討するとよいでしょう。
人材を増やすことが難しい場合は、税理士事務所や会計士事務所など「お金に関するプロ」に経理業務をアウトソーシングする方法はどうでしょうか。
第三者の視点が入ることで、ミスや不正についてのリスクは回避できます。
担当者不在にまつわる問題も生じません。
外注先は「経理業務のプロ」であるため、法改正や新制度にも十分対応可能です。
委託費用はかかりますが、増員の人件費よりは安く済みます。また、リスク低減と業務効率向上などを考慮すると、結果的にコスト削減になるケースも多いものです。
経理業務すべてを一任する方法、自社の担当者と分担する方法など、それぞれの企業にとって最適な方法を相談するとよいでしょう。
企業規模や業種によって一人経理の負担の大きさは異なります。
しかし、会社の営利活動を左右するお金の流れを把握している経理担当者が1人しかいないことの危険性について、十分にご理解いただけたのではないでしょうか。
弊社では、貴社の状況に適した経理業務の見える化やデジタル化をご提案いたします。
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