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コラム

2026.05.14
中小企業の電子帳簿保存法対応|経営者が抱く3つの誤解と低コスト対策

電子帳簿保存法(以下、電帳法)への対応を後回しにしている中小企業は少なくありません。「罰則がないから対応しなくてもよい」「高額なシステムが必要」「紙の保存の方が安全」といった誤解が、知らないうちに経営リスクを高めています。

しかし、対応が不十分な場合、青色申告の承認取り消しにより最大65万円の特別控除を失う可能性があるのです。本コラムでは、よくある3つの誤解を整理し、低コストで始められる現実的な電帳法対応ステップを解説します。

<目次>

電子帳簿保存法で中小企業が抱く3つの誤解

電帳法は複雑に見えますが、中小企業がつまずくポイントは「3つの誤解」に集約できます。まずは、その誤解がなぜ危険かを確認していきましょう。

誤解1:罰則はないから対応しなくてもよい

電帳法には、直接的な罰則規定はありませんが、「罰則がないから対応しなくてよい」という判断は危険です。電子取引データの保存は2024(令和6)年から義務化されており、対応していない場合は別の形で実害が生じる可能性があります。

青色申告取消で65万円控除が失われる実害

青色申告とは、一定の記帳・保存要件を満たすことで最大65万円の特別控除などの税制優遇を受けられる制度です。電子取引データを紙に印刷して保存しても保存義務違反となり、青色申告の承認が取り消されるリスクがあります。特別控除を失えば課税所得が増え、経営に直結する損失となるでしょう。

誤解2:高額なシステムを買わなければならない

「電帳法への対応には高額なシステムが必要」という思い込みが、対応を止めてしまう最大の要因です。要件を正しく理解すれば、追加費用をかけずに対応できるケースがあります。

無料ツールと検索要件で対応できる方法

電子取引データの検索要件は、「日付・金額・取引先」の3項目で、フォルダ構造やファイル名の工夫により無料クラウドストレージでも満たせます。さらに「不当な訂正削除を防止するための事務処理規程」と保存日時が自動記録されるツールの併用で、タイムスタンプ(電子データの存在時刻と改ざんがないことを証明する情報)が不要となるケースもあります。

また、電帳法対応の会計ソフトに備わっている証ひょう保存機能を活用すれば、高額な専用システムは必要ありません。

誤解3:紙の保存が一番安全

「電子データは消えることがあるが、紙は消えない」「紙にはハンコがあるから、信頼性が高い」という感覚的な安心感が、判断を鈍らせています。しかし、紙保存にはコストとリスクの両面で見落とされがちな問題があります。

紙保存の隠れコストとリスク(検索性・家賃・労務)

紙書類の保管スペースには家賃という固定コストが発生します。書類を探す時間は年間で数十時間にのぼる可能性があり、その分だけ従業員の労働時間=人件費が失われます。さらに、紙は紛失・劣化・破損リスクが避けられません。一方、電子データであれば保存スペースは不要で、検索はすぐに終わります。クラウド上にバックアップを残せるため、万一の際でも復元が可能です。

電子帳簿保存法のタイムスタンプ要件を正しく理解する

電帳法への対応を検討する際、「タイムスタンプが必要かどうか」という点で判断に迷う経営者は多いでしょう。タイムスタンプは改ざん防止措置の選択肢の1つであり、条件によって不要となるケースもあります。まずは要件の本質を正しく理解することが重要です。

なぜタイムスタンプが必要とされるのか

電帳法でタイムスタンプが求められる背景には、「電子データは改ざんが容易である」という前提があります。タイムスタンプは、次の2つの理由から、データの真正性を確保するための代表的な手段として用いられます。

改ざんされていないことを証明するため

電子データは、編集の有無を見た目で判断することができません。タイムスタンプは、データに固有の識別情報(いわば”デジタル指紋”)と日時情報を結びつけることで、「この時点で確定したデータである」ことを第三者機関が証明する仕組みです。これにより、データが改ざんされていないことを客観的に示せます。

保存日時と内容が一致していることを担保するため

電子データは保存環境や操作によって保存日時が書き換わる可能性があり、真正性の証拠としては不十分です。タイムスタンプを付与することで、データが保存された時点の内容が固定化され、保存日時と内容の一致を客観的に証明できます。

タイムスタンプが不要になる条件

タイムスタンプは、電帳法において必須の要件ではありません。改ざん防止措置が別の方法で担保されている場合には、不要となるケースがあります。

事務処理規程の整備で不要になるケース

タイムスタンプなし運用を成立させやすくする鍵となるのが、「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」の整備と運用です。保存手順・担当者・チェック方法を明文化し、実際に運用することで、税務調査での説明責任を果たせます。

保存日時が自動記録されるツールを利用するケース

メールで受け取った請求書をクラウドストレージに即時保存する場合や、会計ソフトの証ひょう保存機能を利用する場合には、保存日時が自動記録されます。これが改ざん防止措置の一要素となり、事務処理規程との併用によってタイムスタンプ不要の運用が認められやすくなるでしょう。

タイムスタンプ不要となる具体例

(1)Gmailで受領した請求書PDFをその日のうちにGoogle Drive(https://drive.google.com/)へ保存する
Google Driveでは、保存日時が自動で記録されます。ただし、無料プランでは履歴管理が弱いため、事務処理規程との併用が前提です。

(2)freee(https://www.freee.co.jp/)やマネーフォワード クラウド(https://biz.moneyforward.com/)などの会計ソフトで請求書・領収書をそのまま保存する
これらは保存日時や操作履歴が自動で記録される仕組みを備えているため、改ざん防止措置を満たすケースが多いでしょう。

(3)事務処理規程に沿って保存・確認・修正の手順を運用する
事務処理規程と技術的な証跡を組み合わせ、規程通りに運用することで、タイムスタンプ不要の運用が成立しやすくなります。

電子取引とスキャナ保存の違いをわかりやすく整理

電帳法の対応では、「電子取引」と「スキャナ保存」を混同してしまうケースがあります。両者は、まったく違う制度です。以下では、それぞれの違いをわかりやすく整理します。

電子取引(義務)とは:メール添付・PDF・クラウド請求書など「電子で受け取ったもの」

電子取引とは、メール添付のPDFやクラウド請求書など、電子的な方法で授受した取引情報のことです。これらは、電子データのまま保存することが法律上の義務であり、紙に印刷しただけの保存は認められていません。本コラムでは、この電子取引への対応を中心に解説しています。

スキャナ保存(任意)とは:紙で受け取った書類をスキャンして電子化

スキャナ保存は、”紙で受け取った請求書や領収書”をスキャンし、電子データとして保存することを認める制度です。電子取引とは異なり、任意の制度であることから、導入しなくても法令違反にはなりません。電子取引とは対象も要件も異なります。

中小企業が低コストで始める電子帳簿保存法対応ステップ

電帳法への対応は、順序立てて進めることで無理なく実現できます。ここでは、中小企業が今すぐ着手できる現実的な5つのステップを紹介します。

ステップ1:電子取引データの保存ルールを整える

最初のステップは、電子取引データの保存ルールを統一です。メール添付のPDFやクラウド請求書など、受領方法が異なる場合でも同一のルールで管理できるよう、フォルダ構造と命名ルールを整備します。

命名ルールは検索要件の「日付・金額・取引先」が確認できる形式にすることが重要です。決めたルールは社内で共有しておくと、属人化を防げます。

ステップ2:無料ストレージで保存環境を整える

Google DriveやMicrosoft OneDrive(https://onedrive.live.com/)などの無料ストレージを活用すれば、追加費用をかけずに保存環境が構築できます。重要なのは、担当者以外が誤って編集・削除できないようアクセス権限は適切に設定することです。また、万一のデータ消失に備えてバックアップを確保しておくと、より安全に運用できます。

ステップ3:会計ソフトの証ひょう保存機能を活用する

すでに会計ソフトを導入している場合には、証ひょう保存機能をそのまま活用できます。アップロードした請求書や領収書の保存日時が自動記録され、訂正・削除の履歴が残る仕組みがあれば、タイムスタンプが不要になるケースが成立しやすくなるでしょう。仕訳データと取引関連書類をひも付けて管理することで、月次処理の効率化が可能です。

ステップ4:事務処理規程を整備し、運用を安定させる

保存手順・担当者・チェック方法を明文化した事務処理規程を整備し、担当者への周知・運用定着までを適切に進めることで、タイムスタンプ不要の運用が認められやすくなります。国税庁が公開しているひな形(国税庁:「参考資料(各種規程等のサンプル)」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm)を自社の業務フローに合わせて調整すれば、一から作成する手間を省けます。

ステップ5:外部サポートを活用して「止まらない電帳法運用」を実現

電帳法への対応は、初期設定が完了した時点で終わりではなく、継続した運用が必要です。経理代行やオンライン監査などの外部サポートを活用すれば、社内リソースに依存しない安定した運用体制が整えられます。

外部サポートが価値を発揮する理由

リソースの限られる中小企業にとって、社内に電帳法の専門知識を持つ担当者を配置することは現実的ではありません。そこで経理アウトソーシングを活用すれば、専門スタッフによる保存漏れや設定ミスのチェック体制が実現します。

さらに、事務処理規程の運用状況を外部が定期的に確認することで、税務調査での説明責任も果たしやすくなります。こうした外部サポートの活用で、中小企業に多い「1人経理」でも、担当者の退職や休職によって対応が止まるリスクを回避可能です。

経理代行が担える役割

経理代行は、電子取引データの保存業務そのものを担えます。フォルダの命名ルールの統一・整備や、会計ソフトへの取引関連書類アップロード、月次の保存漏れチェックなどを一括して任せることで、社内の担当者が本来の業務に集中できる環境を整えられるでしょう。

オンライン監査(モニタリング)が担える役割

オンライン監査では、電子取引データの保存状況や事務処理規程どおりの運用、改ざん防止措置の実効性を定期的にチェックします。さらに、税務調査を見据えた証跡の整備まで含め、自社だけでは不安を感じやすい部分を外部の専門的な視点で補完できるのが、オンライン監査の強みです。

外部活用のメリットを経営者視点で整理

外部サポートを活用することで、担当者の退職・休職による運用停止リスクを回避しながら、保存漏れや設定ミスの早期発見・是正が可能になります。社内に専門知識を蓄積する必要がなく、低コストで電帳法の専門家によるサポートを受けられる点も、外部活用の大きなメリットです。こうした仕組みが、青色申告取り消しという最悪の事態を防ぐための保険として機能します。

まとめ:電子帳簿保存法対応は誤解を解けば難しくない

電帳法は、誤解さえ解ければ着実に対応できます。

最大のリスクは青色申告の取り消しであり、紙で保存し続けることこそが、コストとリスクの高い選択になります。その点をまず認識しておくことが重要です。

無料ツールと事務処理規程の整備で対応できるケースもあるため、まずは小さなステップから着手することをおすすめします。

社内対応に不安がある場合は、外部サポートを活用すれば運用が安定し、経営判断の精度向上にもつながるでしょう。

弊社では、丁寧なヒアリングを通じて貴社の状況を把握し、電帳法対応プランのご提案から導入サポートまで一貫してお手伝いいたします。

初回面談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ 部長代理 興梠 貴裕
保有資格弥生インストラクター資格 / 日商簿記3級
専門分野IT
経歴業務系システム業界に身を置いて12年目。様々な業種のお客様のシステム導入に関する多くの相談実績が有り 導入実績も多数。常にお客様目線で対応し、お客様の課題解決に全力で取り組む姿勢に定評有。
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