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コラム

2026.05.27
源泉徴収の計算が合わない!間違えやすい控除と実務対応  扶養・社会保険料控除・通勤手当などの“落とし穴”を整理

こんにちは。毎月の給与計算をしていると、「給与ソフトの源泉徴収の計算が合わない」「前月と給与は同じなのに所得税だけ違う」と感じる場面があるのではないでしょうか。

源泉徴収の計算が合わない原因は、税率のミスだけではありません。扶養親族等の人数、社会保険料控除後の給与額、通勤手当の非課税処理、甲欄・乙欄の選択など、実務上の小さな入力差が源泉徴収税額のズレにつながります。

本記事では、源泉徴収の計算が合わないときに確認すべき基本手順と、間違えやすい扶養・社会保険料控除・通勤手当の落とし穴を整理します。記事を読むと、給与計算で確認すべきポイント、誤りが見つかった場合の実務対応、再発防止の方法が分かります。

中小企業の経営者、経理担当者、1人で給与計算を担当している方はぜひ最後まで読んでみてください!

源泉徴収の計算が合わない原因は「税額表の見方」にある

源泉徴収の計算が合わない場合、最初に確認すべき項目は税額表の使い方です。給与から控除する所得税と復興特別所得税は、給与の支給方法、扶養控除等申告書の提出有無、扶養親族等の数に応じて税額表を使い分けます。国税庁も、給与等から源泉徴収する税額は「給与所得の源泉徴収税額表」または「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って求めると案内しています。

源泉徴収の計算では、総支給額をそのまま税額表に当てはめません。月額表を使う場合、給与等の金額から厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料などの社会保険料等を差し引いた後の金額を使います。国税庁のタックスアンサーでも、税額表に当てはめる給与等の金額は、社会保険料等を控除した後の金額によると説明されています。

私が給与計算の確認を依頼された中小企業でも、総支給額30万円を税額表に当てはめていたため、源泉徴収の計算が毎月高く出ていた例がありました。正しくは、総支給額30万円から社会保険料約4万5,000円を差し引いた25万5,000円を基準に税額表を見る必要がありました。源泉徴収の計算が合わないと感じたときは、税率より前に「税額表へ入れる金額」を確認することが大切です。

源泉徴収の計算が合わないときの扶養控除の落とし穴

源泉徴収の計算で特にズレが出やすい項目は、扶養親族等の人数です。扶養の人数が1人違うだけで、毎月の源泉徴収税額が変わる可能性があります。扶養控除等申告書の内容を前年のまま使っている会社では、年の途中の結婚、出産、就職、退職、収入増加を反映できていないケースがあります。

源泉徴収の計算では扶養控除等申告書の提出有無を確認する

源泉徴収の計算では、扶養控除等申告書の提出有無が重要です。扶養控除等申告書の提出がある従業員には、原則として甲欄を使います。扶養控除等申告書の提出がない従業員には、乙欄を使います。国税庁は、月払いの給料で扶養控除等申告書を提出している人は月額表の甲欄、提出していない人は乙欄を適用すると案内しています。

副業の従業員、短時間勤務の従業員、入社直後の従業員は、扶養控除等申告書の回収漏れが起きやすいです。会社が甲欄で計算していたものの、従業員が別会社へ扶養控除等申告書を提出していた場合、源泉徴収の計算が誤っている可能性があります。反対に、書類を回収済みなのに乙欄で計算している場合、源泉徴収税額が高くなりやすくなります。給与計算担当者は、入社時と年初に扶養控除等申告書の提出状況を一覧で管理する必要があります。

源泉徴収の計算では扶養親族等の人数を正しく数える

源泉徴収の計算では、扶養親族等の人数を正しく数える必要があります。国税庁は、甲欄で使う扶養親族等の数について、源泉控除対象配偶者と源泉控除対象親族の合計数を基準にする旨を案内しています。また、本人が障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生に該当する場合や、同一生計配偶者・扶養親族に障害者等がいる場合には、扶養親族等の数に加算する扱いがあります。

実務で多いミスは、16歳未満の子どもを通常の扶養親族として数えてしまうことです。年少扶養親族は住民税や各種申告書では記載欄があるため、給与計算でも人数に入れると勘違いされやすいです。扶養親族等の人数は、単に家族の人数を数える作業ではありません。扶養控除等申告書の記載内容、年齢、所得見込み、障害者区分を確認したうえで、源泉徴収の計算に使う人数を決める必要があります。

源泉徴収の計算が合わないときの社会保険料控除の落とし穴

源泉徴収の計算では、社会保険料控除後の給与等の金額を使います。社会保険料控除後の給与等の金額が1円でも税額表の境目を超えると、源泉徴収税額が変わることがあります。給与ソフトの設定ミスや社会保険料率の変更漏れがあると、源泉徴収の計算が合わない原因になります。

源泉徴収の計算では控除する社会保険料の対象を確認する

源泉徴収の計算では、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料などを控除した後の金額を使います。国税庁の税額表の使い方でも、厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料などの社会保険料等を控除した後の金額を税額表に当てはめるとされています。

給与計算でよくある誤りは、雇用保険料を控除前の金額に含め忘れることです。社会保険料控除後の金額を手計算で確認するとき、健康保険料と厚生年金保険料だけを差し引き、雇用保険料を差し引かないまま税額表を見るケースがあります。雇用保険料の金額は数百円から数千円であっても、税額表の境目に近い従業員では源泉徴収税額に影響します。給与計算担当者は、控除項目の名称だけで判断せず、源泉徴収の計算対象となる社会保険料等を整理する必要があります。

源泉徴収の計算では入退社月と随時改定に注意する

源泉徴収の計算が合わない月だけを見ると、社会保険料の変更月であることが少なくありません。入社月、退職月、産休・育休明け、昇給後の随時改定、定時決定の反映月は、社会保険料が変わりやすい時期です。社会保険料の控除額が変わると、社会保険料控除後の給与等の金額も変わります。

例えば、昇給により標準報酬月額が上がった従業員について、社会保険料だけ変更して源泉徴収設定を確認していないケースがあります。給与ソフトが自動計算であっても、標準報酬月額、控除開始月、雇用保険料率の設定が誤っていれば、源泉徴収の計算も連動してズレます。源泉徴収の計算が急に合わない月は、給与明細の支給額だけでなく、社会保険料の控除額が前月と変わっていないかを確認しましょう。

源泉徴収の計算が合わないときの通勤手当の落とし穴

源泉徴収の計算では、通勤手当の課税・非課税の判定も重要です。通勤手当はすべて非課税ではありません。一定の限度額まで非課税とされ、限度額を超える部分は給与として課税対象になります。国税庁は、役員や使用人に通常の給与へ加算して支給する通勤手当は、一定の限度額まで非課税と案内しています。

源泉徴収の計算では通勤手当の非課税限度額を確認する

源泉徴収の計算では、通勤手当の非課税限度額を超えた部分を課税支給額に含めます。電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合と、マイカー・自転車などの交通用具を使用する場合では、非課税限度額の考え方が異なります。マイカー・自転車通勤者の非課税限度額は、片道の通勤距離や駐車場利用の有無などに応じて定められています。

実務で多いミスは、通勤手当を全額非課税として登録しているケースです。例えば、マイカー通勤者に月3万円を支給している場合でも、片道距離に応じた非課税限度額を超える部分があれば、超過分は課税対象になります。給与ソフト上の支給項目が「通勤手当」になっていても、非課税枠の設定が正しいとは限りません。給与計算担当者は、通勤経路、通勤距離、支給額、非課税限度額を年1回は見直す必要があります。

源泉徴収の計算では通勤手当の改正にも注意する

源泉徴収の計算では、税制改正による通勤手当の非課税限度額の変更にも注意が必要です。国税庁は、令和8年度税制改正により、自動車などの交通用具を使用している給与所得者へ支給する通勤手当の非課税限度額について改正が行われたと案内しています。

給与計算ソフトを使っている会社でも、ソフト更新前の設定や個別に作った支給項目が残っていると、改正内容が自動反映されない場合があります。通勤手当の改正がある年は、給与ソフトの更新情報を確認するだけでなく、従業員ごとの通勤区分も確認する必要があります。特に中小企業では、公共交通機関からマイカー通勤へ変更した従業員の届出が遅れ、源泉徴収の計算が数か月ズレるケースがあります。通勤手当は毎月同額で支給されるため、ミスが長期間見つからない点にも注意が必要です。

源泉徴収の計算が合わないときの実務対応

源泉徴収の計算が合わないと気づいた場合、最初に行うべき対応は原因の切り分けです。給与ソフトの計算結果だけを見ても、扶養人数、社会保険料、通勤手当、甲欄・乙欄のどこに原因があるか分かりません。給与明細、扶養控除等申告書、社会保険料の控除額、通勤手当の設定、税額表を順番に確認する必要があります。

確認手順は、次の流れがおすすめです。

  1. 扶養控除等申告書の提出有無を確認する
  2. 甲欄・乙欄の設定を確認する
  3. 扶養親族等の人数を確認する
  4. 課税支給額と非課税支給額を確認する
  5. 社会保険料控除後の給与等の金額を確認する
  6. 源泉徴収税額表と照合する
  7. 誤りがある月と金額を一覧にする

過少徴収が見つかった場合、会社は従業員から不足額を徴収し、納付不足があれば納付対応を行います。過大徴収が見つかった場合、次回給与で調整する方法や年末調整で精算する方法を検討します。ただし、誤りの時期、金額、納付状況によって対応が変わるため、判断に迷う場合は税理士へ相談することが安全です。

源泉徴収の計算が合わない状態を防ぐチェック体制

源泉徴収の計算ミスを防ぐには、給与計算後のチェック体制が必要です。担当者1人が入力から確認まで行う体制では、扶養人数や通勤手当の設定ミスに気づきにくくなります。最低でも、給与計算担当者と承認者の2名で、前月差異と変更者リストを確認する仕組みを作ることが大切です。

実務では、毎月全員の源泉徴収税額を手計算で確認する必要はありません。給与が変わった従業員、扶養人数が変わった従業員、社会保険料が変わった従業員、通勤手当が変わった従業員を重点的に確認すれば、効率よくミスを防げます。給与計算前に「入退社」「扶養変更」「住所変更」「通勤経路変更」「昇給」「休職復職」を一覧化すると、確認漏れが減ります。

私が支援した会社では、給与締め日の前に変更届の提出期限を設定し、給与計算後に前月差異表を確認する運用へ変えました。運用変更後は、源泉徴収の計算が合わないという問い合わせが大きく減りました。源泉徴収の計算ミスは、知識不足だけでなく、情報収集のタイミングや確認体制の不足でも発生します。

まとめ

源泉徴収の計算が合わない原因は、税率の間違いだけではありません。扶養控除等申告書の提出有無、扶養親族等の人数、社会保険料控除後の給与等の金額、通勤手当の非課税処理、甲欄・乙欄の選択など、複数の要素が関係します。

特に、扶養・社会保険料控除・通勤手当は、中小企業の給与計算で間違えやすい項目です。源泉徴収の計算が合わないときは、給与ソフトの結果を疑う前に、入力情報と税額表の使い方を順番に確認しましょう。

源泉徴収の計算ミスは、従業員の手取り額、年末調整、会社の納付事務に影響します。早めに原因を見つけ、正しい実務対応を行うことが大切です。

弊社では、給与計算や源泉徴収の確認、年末調整前のチェック、経理・労務体制の見直しについてご相談を承っています。源泉徴収の計算が合わない、給与計算に不安がある、担当者任せの体制を改善したいという企業様は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ 酒井 康至
保有資格公認会計士・税理士
専門分野法人税・消費税・国際税務
経歴大学卒業後、上場企業の専門商社(鉄鋼系・食品系)の経理部員として約15年の経験。内海外駐在3年半。
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