2024.11.21
経営者の経理兼務はコスト削減になるのか?見落としてはならない「社長の価値」
経営者が兼務する経理業務とは 少子化の進行によって、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は減少を続けています。それを補っていた高齢者の就業者数も近年では減少に転じていることから、人材不足の問題はより…
経理業務は、バックオフィス業務の中でも専門性が高い業務です。企業の経済活動におけるお金の流れを正確に記録・集計・管理して、業績や経営状態の把握に役立てます。適正な経理業務を行うためには、一定水準の専門知識やスキルが必要です。
企業規模や社員構成などによって多少の差はありますが、必須業務として次のものが挙げられます。
まずは、日常的に発生する業務です。
・仕訳記帳:取引内容を帳簿に記録すること
・売掛金管理:顧客からの未収金管理、請求書の発行、必要に応じて督促など
・買掛金管理:仕入先への未払金管理、取引先ごとの指定金融機関への振込業務
・出納管理:従業員の立替経費精算など、社内のお金管理
企業間の取引は即日払いばかりではありません。日々の取引とお金の流れを逐一記録し、適切に管理することはキャッシュフローの維持に必要不可欠な業務です。日常業務は都度発生するため煩雑ですが、丁寧かつ速やかに処理することが望まれます。
次に、月ごとに行う月次業務です。
・各種支払:従業員への給与、社会保険料や年金保険料などの支払
・掛取引管理:売掛金回収や買掛金支払の確認を行い、督促や領収証発行など必要な手配
・月次決算:日常業務で管理していた各帳簿を、月ごとに締める
従業員への給与を支払うためには、勤怠管理の集計を行う必要があります。1人経理で給与計算を兼務している場合は、業務負荷が大きくなるでしょう。また、月次決算では、単純に数字を集計するだけでなく、請求書や領収書などの証憑との照合、次月に繰り越す分の計算などの煩雑な作業が含まれます。
タイミングはそれぞれですが、1年ごとに行う業務を年次業務といいます。
・年次決算:年度末に財務状況を締め、必要に応じて減価償却など
・税務申告:税務当局に対して、法人税や消費税などの確定申告を行い納税
・年末調整:従業員ごとの給与や所得控除等のデータに基づき、所得税額を再計算・処理
年次決算では1年分の証憑などを総ざらいする必要があり、一般的に人手と時間のかかる作業です。年次決算によって1年間の経営成果をまとめることが、税務申告のための資料作成につながります。このときの数字が正確でなかったり、資料に不備があったりすると、税務調査を受けることになりかねません。また、決算期とは別に1年ごとに行う業務として、年末調整も挙げられます。
ここからは、経理業務を正しく遂行するために必要なスキルや知識について説明します。
簿記とは、金銭のやり取りを正確に記録するための方法です。資格取得自体は必須ではないものの、仕訳や記帳といった経理の基本的な業務には、簿記の知識が欠かせません。
経理には税務に関わる業務が多く、主に次の5つの税についての知識が求められます。
・法人税:会社の所得に応じて課税される税金
・消費税:会社の売上や仕入、経費など、ほとんどの取引にかかる税金
・法人事業税・特別法人事業税:事業に対して課税されるもの
・法人住民税:会社の所在地域に納める税金
企業の取引方法や経理担当者の業務範囲によっては、約束手形や小切手の取扱いに関わる「手形法・小切手法」、会社の運営や会計の規則を定める「会社法」、の知識が必要になることもあるでしょう。また、勤怠管理なども兼務している場合は、「労働基準法」や「労働安全衛生法」など働きかたに関連する法について問われることもあるでしょう。
日々の記録の積み重ねが決算に直結する経理業務では、細部にまで注意を払い几帳面に繰り返す精密性が重要です。また、イレギュラーな事態が発生した際にも業務に関する背景や目的を理解した慎重な判断が求められます。
経理における締め切りは、業務内容や取引先ごとに設定されているものが多いため、スケジュール管理も大切です。もしも、支払期日を守れなければ、取引先との信頼関係は壊れるでしょう。また、納税業務の遅滞は、ペナルティ税を課されることになります。
さらに、1人経理では日常業務と並行して決算業務の準備をしたり、そのほかのバックオフィス業務を片づけたりするケースも多く、優先順位に沿って限られた時間内で効率よく業務を進められる能力が必要です。
経理担当者は、他部署や取引先と連携しながら業務を進めることも少なくありません。そのため、コミュニケーションを円滑に進めるための能力を求められることも多いでしょう。
経理業務では、データの整理・分析、情報処理能力が求められます。また、会計ソフトやERPシステムを導入している企業では、システムの理解と操作スキルも必要です。Excel管理している企業では最低限の関数やマクロを使いこなせるレベルであることが望ましいでしょう。
経理に必要なスキルは、主に専門学校やビジネススクールで習得可能です。見習得者・未経験者を採用した場合は、社内の経理人材からの指導や引き継ぎを受け、あとは実務経験によって習得することが多いでしょう。
しかし、引き継ぎ時間が十分でない場合は、書籍やオンライン資料を用いて自学自習する必要があります。ただし、専門的な部分は独学で身につけることは難しく、勘違いしたまま記憶してしまうリスクが生まれます。
中小企業に多い「1人経理」では、ほかに経理知識のある社員がいないことが多いでしょう。そのため、引き継ぎによって得られなかった知識については、独学で補う必要があります。このような状況で考えられる問題点は、以下の通りです。
経理に必要な簿記や税法には、日常生活にはあまり出てこない単語が多く登場します。また、別の言葉に似ている単語、一文字違いの別単語なども少なくありません。そのため、基礎知識がない状態で自習をしても、勘違いするリスクが高まります。
特に、税法については毎年のように改正が行われているうえ、行政の資料がわかりにくいことも難点です。理解しきれていない状態でも容赦なく施行日がくるため、勘違いしたまま業務を進めてしまうこともあるでしょう。
すでに述べた通り、1人経理の場合、社内に経理人材がいないケースが一般的です。つまり、1人経理の担当者が何かを勘違いしたまま業務に取り組んでいても、それに気づく人がいないということです。これは、日常業務においてもダブルチェックできる体制が整っていないため、単純なミスや不正行為が生じてもすぐに発覚しないということにもつながります。企業として、危険性の高い状況だといえるでしょう。
経理担当者の知識が正しいのか間違っているのか、誰にも判断つかないという状況は企業にとってハイリスクです。正確性が保障されていないデータに基づいた財務状況では、正しい業績がわかりません。適切な経営判断も行えないでしょう。
間違っているのなら修正すればよいですが、客観的な正誤判断ができず「合っているのか間違っているのかわからない」のでは、どうしようもないのです。このような状況に心当たりがある企業は、早急に対策を練る必要があるでしょう。
ここまでに紹介したような状況を打破する方法として、経理のDXが効果的です。DXにはさまざまな方法がありますが、まずは以下の方法で業務効率化と正確性向上を目指すことが先決でしょう。
アウトソーシングとは、社内の経理業務を業者に委託する方法です。アウトソーシング業者には、簿記や税務などの専門知識と技術を持つスタッフが在籍しています。また、業者内でダブルチェックが行われるため、より正確性の高い業務成果を期待できます。さらに、外部の目が入るため内部不正リスクも大幅に軽減します。
アウトソーシングのメリットの1つは、委託量を調整できるという点です。経理業務のすべてを委託するのではなく、日々の記帳作業は社内で行い、掛取引管理のみ、あるいは月次決算のみをアウトソーシングするという方法もあります。こういった方法を取ることで、社内に専門知識のある社員がいなくても、効果的なダブルチェックが可能となります。
クラウド型会計システムの導入は、業務の自動化・省人化に貢献します。金融機関と連携することで取引における入金・出金情報を自動取得でき、あらかじめ設定した通りに自動仕訳も行われます。これにより記帳漏れや転記ミスといったヒューマンエラーは消滅するでしょう。
また、クラウド型システムは、運用会社によってクラウドサーバー上のシステムメンテナンスが行われるため、税法改正などに合わせて自動アップデートが実施されます。もう、改正のたびに独学で学ぶ必要はありません。さらに、決算資料や申告書類などの自動作成も可能です。業務効率化と正確性向上に加えて、工数削減による1人経理の業務負荷軽減もかないます。
経理業務に資格取得は必須ではないものの、専門性が高いため独学でスキルを習得するのは難しいということが、おわかりいただけたのではないでしょうか。また、1人経理における問題点も明らかになりました。
問題点の解消には増員が有効ですが、経理人材不足や採用コストなど別の問題が生じます。しかし、経理業務をDX化すると、採用よりも低コストで業務効率化や正確性向上を目指すことが可能です。
弊社では、丁寧なヒアリングにより貴社の状況を的確に診断し、最適なツールを選定いたします。
また、会計システムの導入にあたっての業務フロー改善や操作方法研修など、導入サポートも行っております。
経理業務のDX化をご検討されている方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
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