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コラム

2026.09.10
給与計算の端数処理ってどうするの?税務署の考え方と実務例  円未満の処理・源泉税の計算での正しい扱いを紹介。

こんにちは。

給与計算を進める中で、「1円未満は切り捨てればよいのか」「社会保険料も四捨五入でよいのか」と迷う経営者や経理担当者は少なくありません。

給与計算の端数処理には、すべての項目に共通するルールがありません。残業代、社会保険料、雇用保険料、源泉所得税では、端数処理の基準が異なります。給与計算担当者が一律に切り捨てや四捨五入を行うと、賃金の未払いや税額の誤りにつながる可能性があります。

本記事では、給与計算の端数処理について、税務署が示す源泉所得税の考え方や、労働時間、社会保険料、雇用保険料の実務例を紹介します。

本記事を読むと、円未満の正しい扱い、源泉所得税の計算方法、給与ソフトを設定するときの注意点が分かります。給与計算を自社で行っている中小企業の経営者や経理担当者は、ぜひ最後まで読んでみてください。

給与計算の端数処理は項目ごとにルールが異なる

給与計算の端数処理では、計算項目ごとの確認が必要です。

給与計算には、労働基準法、社会保険制度、雇用保険制度、所得税法などが関係します。各制度は異なる目的で設けられているため、端数処理の基準も異なります。

主な給与計算の端数処理は、次のように整理できます。

  • 労働時間:日ごとの切り捨ては原則として認められない
  • 割増賃金の単価:50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げられる
  • 健康保険料、厚生年金保険料:給与控除では50銭以下を切り捨て、50銭を超える場合は切り上げる
  • 雇用保険料:給与控除では50銭以下を切り捨て、50銭を超える場合は切り上げる
  • 源泉所得税:税額表または国税庁が定めた電算機計算の方法を使用する

給与計算担当者は、「会社では昔から四捨五入している」という理由だけで処理方法を決めてはいけません。給与計算担当者は、項目ごとの根拠を確認したうえで給与ソフトを設定する必要があります。

給与計算の端数処理で労働時間を切り捨てる場合

給与計算の端数処理で特に注意したい項目は、残業時間です。

給与計算の端数処理で日ごとの時間切り捨てはできない

会社は、1日ごとの労働時間を一律に切り捨てることができません。

例えば、従業員が10日間にわたって毎日23分の残業をしたとします。会社が毎日の23分を30分未満として切り捨てると、合計230分の残業が給与に反映されません。合計230分は3時間50分に当たるため、切り捨てた会社には未払残業代が発生する可能性があります。

厚生労働省は、日ごとの端数処理によって労働時間を切り捨てる方法を認めていません。会社は、タイムカードや勤怠管理システムを使い、実際の始業時刻と終業時刻を記録する必要があります。

給与計算の端数処理で認められる月単位の方法

会社は、1か月分を合計した後であれば、一定の給与計算の端数処理を行えます。

時間外労働、休日労働、深夜労働を種類ごとに1か月分集計し、1時間未満の端数が発生した場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる方法が認められています。

先ほどの残業時間230分は3時間50分です。会社が月単位の簡便な給与計算の端数処理を採用する場合、3時間50分は4時間になります。会社は、毎日の23分を切り捨てず、月末に合計してから処理しなければなりません。

給与計算の端数処理で割増賃金を計算する実務例

割増賃金の給与計算の端数処理では、1時間当たりの賃金額と1か月の割増賃金総額に簡便な処理が認められています。

1時間当たりの賃金額や割増賃金額に1円未満の端数が発生した場合、会社は50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げられます。1か月分の割増賃金総額に1円未満の端数が発生した場合も、同じ処理が認められています。

月給26万円、月平均所定労働時間160時間の従業員を例に計算します。

1時間当たりの賃金額は、26万円÷160時間=1,625円です。時間外労働の割増率を25%とすると、割増賃金単価は1,625円×1.25=2,031.25円です。

50銭未満を切り捨てる給与計算の端数処理を採用した場合、割増賃金単価は2,031円になります。月の時間外労働が4時間であれば、残業代は2,031円×4時間=8,124円です。

給与計算担当者は、計算途中で何度も端数処理を行わないように注意してください。計算途中の端数処理が増えるほど、最終的な支給額との差も大きくなります。

給与計算の端数処理で社会保険料を控除する方法

健康保険料や厚生年金保険料の給与計算の端数処理には、一般的な四捨五入とは異なる基準があります。

会社が被保険者負担分を給与から控除する場合、50銭以下の端数を切り捨て、50銭を超える端数を1円に切り上げます。

具体的な給与計算の端数処理は、次のとおりです。

  • 12,345.50円の場合:12,345円を控除
  • 12,345.51円の場合:12,346円を控除

50銭ちょうどは切り捨てになる点が重要です。一般的な四捨五入を使うと、12,345.50円を12,346円にしてしまうため、従業員から1円多く控除する結果になります。

日本年金機構は、事業主と被保険者との間に特約がある場合、特約に基づく端数処理も認めています。給与計算担当者は、給与規程、労使間の取り決め、給与ソフトの設定を一致させる必要があります。

給与計算の端数処理で雇用保険料を控除する方法

雇用保険料の給与計算の端数処理も、給与から控除する場合は50銭以下を切り捨て、50銭を超える場合は切り上げます。

令和8年度の一般の事業では、労働者負担の雇用保険料率は1,000分の5です。賃金総額が255,935円の場合、雇用保険料は次のように計算します。

255,935円×5÷1,000=1,279.675円

1,279.675円の端数は50銭を超えているため、給与から控除する雇用保険料は1,280円です。雇用保険料率は年度や事業の種類によって変わるため、給与計算担当者は毎年度の料率を確認してください。

給与計算の端数処理で源泉所得税を計算する方法

源泉所得税の給与計算の端数処理では、会社独自の四捨五入を行ってはいけません。

給与計算の端数処理では最新の源泉徴収税額表を使う

毎月の給与に対する源泉所得税は、国税庁の源泉徴収税額表を使って求めます。

給与計算担当者は、給与総額から健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などを控除した後の金額を月額表に当てはめます。給与計算担当者は、扶養控除等申告書の提出状況に応じて甲欄または乙欄を選び、扶養親族等の人数も確認します。

令和8年分の源泉徴収税額表は、令和7年度税制改正による基礎控除などの見直しを反映しています。令和7年分以前の給与を計算する場合、令和8年分の税額表は使えません。給与計算担当者は、支給年に対応する税額表を使用する必要があります。

給与計算の端数処理で電算機計算を使う実務例

給与ソフトが国税庁の電算機計算の特例を採用している場合、最終税額の10円未満は四捨五入します。

例えば、社会保険料控除後の給与が30万円で、配偶者控除や扶養控除がない場合を考えます。令和8年分の電算機計算では、給与所得控除額は96,667円、基礎控除額は48,334円です。

課税給与所得金額は、次の金額になります。

300,000円-96,667円-48,334円=154,999円

源泉所得税と復興特別所得税は、154,999円×5.105%=7,912.69895円です。電算機計算の特例では10円未満を四捨五入するため、源泉徴収税額は7,910円になります。7,912円への切り捨てではありません。

一方、税率を直接掛けて源泉所得税と復興特別所得税を算出する場面では、原則として1円未満を切り捨てます。給与計算担当者は、「税金はすべて1円未満切り捨て」と覚えず、税額表、賞与の算出率表、電算機計算のどの方法を使っているか確認する必要があります。

給与計算の端数処理で起こりやすい実務ミス

給与計算の端数処理では、給与ソフトの初期設定を確認しないミスが多く発生します。

従業員20名のモデルケースでは、経理担当者が全項目を「四捨五入」に設定した結果、社会保険料の50銭ちょうどを切り上げ、源泉所得税の電算機計算を1円単位で処理してしまう可能性があります。1人当たりの差額が1円から数円でも、毎月の給与、賞与、退職者の精算まで積み重なると修正作業が増えます。

給与計算担当者は、次の順番で確認すると効率的です。

  1. 勤怠データを分単位で集計する
  2. 基本給、手当、残業代を計算する
  3. 社会保険料と雇用保険料を項目別のルールで処理する
  4. 社会保険料控除後の給与を基に源泉所得税を求める
  5. 給与明細と賃金台帳の金額を照合する

給与計算担当者は、端数処理の設定一覧を作成し、給与ソフトの更新時や法改正時に見直すと安心です。

まとめ|給与計算の端数処理は項目別に確認しよう

給与計算の端数処理は、一律の切り捨てや四捨五入では対応できません。

労働時間は日ごとの切り捨てが原則として認められません。社会保険料と雇用保険料は、給与控除の場合、50銭以下を切り捨て、50銭を超える場合に切り上げます。源泉所得税は最新の税額表を使い、電算機計算の特例では10円未満を四捨五入します。

給与計算の端数処理に誤りがあると、未払賃金、控除額の過不足、従業員からの問い合わせにつながります。給与計算担当者は、給与規程、勤怠管理、給与ソフト、法令上の端数処理を定期的に確認してください。

弊所では、給与計算の方法や源泉所得税の処理、給与ソフトの設定に関するご相談を受け付けています。給与計算の端数処理に不安がある経営者や経理担当者は、お気軽にお問い合わせください。

この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ 酒井 康至
保有資格公認会計士・税理士
専門分野法人税・消費税・国際税務
経歴大学卒業後、上場企業の専門商社(鉄鋼系・食品系)の経理部員として約15年の経験。内海外駐在3年半。
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