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コラム

2026.07.28
紙経理が利益を圧迫する理由と改善ステップ

中小企業の経理では、今も紙の書類を中心に業務を進めているケースが少なくありません。日本商工会議所・東京商工会議所が2025年に実施した調査では、規模が小さい企業ほど経理業務のペーパーレス化が進んでいない実態が明らかになりました。特に売上高1,000万円以下の事業者は、半数以上が「全くペーパーレス化していない」と回答しています。

しかし、紙の書類を前提とした経理は、見えないコストを生み出し、会社の利益を削っている可能性があります。本コラムでは、紙経理がなぜ利益を圧迫するのかを整理し、限られた人数でも経理を安定して回すための改善ステップを解説します。

 

紙経理が限界を迎えている会社の共通点

紙の書類を前提とした経理では、業務を進める中でさまざまな課題が発生しています。その中でも、紙経理が限界を迎えている会社には共通の特徴があります。主な共通点は、次の3つです。

月末に業務が集中して残業が増える

月末になると、取引先から届いた紙の請求書や領収書が机の上に積み上がり、経理担当者が短期間で大量の処理をこなさなければならない状態に陥りがちです。書類が手元にそろわなければ記帳に着手できないため、処理のタイミングは必然的に月末に偏ります。

さらに、請求・支払い・給与計算など締め切りがある業務も重なることで、経理担当者の月末の残業が常態化するでしょう。

書類を探す時間が長く、生産性が低い

過去の取引書類を確認しようとしても、ファイルやキャビネット、担当者の手元など複数の場所に分散しているため、必要なものをすぐに見つけられません。紙書類の検索性の低さは、経理担当者だけでなく、確認を依頼する経営者や他部署の社員にとっても負担になります。

書類探しに費やす時間が積み重なることで、本来の業務に充てられる時間が削られ、経理全体の生産性が低下しやすくなります。

担当者しか分からない業務が多く、属人化が進む

業務の多くが経理担当者にしか分からない状態になっているのも、紙経理が限界を迎えている会社の特徴です。紙ベースの運用は、書類の保管場所や処理の手順、判断基準などが担当者の経験や記憶に依存しやすく、属人化が進む傾向があります。

業務マニュアルが整備されていない場合、担当者が退職や休職をすることで、会社が止まるリスクが高まります。

 

最初にやめるべき紙業務

これまで紙ベースで経理を運用してきた会社が、紙業務をいきなりゼロにするのは現実的ではありません。一度に解決しようとすると挫折してしまう可能性があるため、まずは負荷が大きく、改善の効果が出やすい業務から見直すことが重要です。

ここでは、紙からの切り替えによって効果を実感しやすい業務を3つ取り上げます。これらは、実践的な経理工数の削減方法としても取り組みやすい領域です。

請求書管理(受領・承認・保管)

請求書の受領から承認、保管まで、すべてを紙で管理していると、どこかの工程で滞留しやすくい点が課題です。決裁者の確認が遅れ、支払い期日が近づいても処理が進まないケースもあるでしょう。

請求書管理は、受領から保管までの一連の流れを電子化することで改善効果を得やすく、最初に着手すべき優先度の高い業務です。

領収書管理

紙の領収書管理も、見直しの効果を実感しやすい業務の1つです。出張や会食などで発生する領収書は営業職員や現場職員が各自で保管され、月末にまとめて提出されるケースが多くなります。また、紙の領収書は紛失や劣化のリスクが高い点も軽視できません。

スマートフォンでの撮影やスキャンによる電子化を進めると、領収書の管理にかかる手間を大幅に減らせます。

経費精算

経費精算を紙で行う場合、申請書への記入や領収書の貼付、上長への提出、承認といった複数の工程を経るため、手間がかかります。申請者が出先にいる場合や、承認者が不在の場合には、提出や承認のタイミングが合わず、処理の遅れを招くでしょう。

経費精算のたびに紙のやり取りが発生する仕組みは、申請者と承認者の双方にとって大きな負担となります。経費精算を電子申請に切り替えると、処理がオンライン上で完結し、経理担当者の工数削減につながります。

 

紙経理が利益を圧迫する3つの理由

請求書管理や領収書管理、経費精算といった紙業務の問題は、「紙の処理が面倒」という感覚的なものだけではありません。放置していると、複数の経路を通じて会社の利益を確実に削っていきます。これらは独立した問題ではなく、紙の書類を前提とした業務フローという一つの構造から生じている点に注意が必要です。

紙経理が利益を圧迫する主な理由として、次の3つが挙げられます。

二重入力や転記作業で工数が増える

請求書や納品書を紙で管理している場合、経理担当者が同じ内容を複数のシステムへ入力する二重入力や転記作業が発生し、工数がかさみます。手作業ではミスや漏れが発生しやすいため、確認や修正の作業も別途必要です。

これらの作業にかかる時間は、1件あたりは小さくても、件数が多くなるほど経理担当者の負担を増やし、利益を圧迫します。

承認待ちで支払い・請求処理が遅れる

紙の回覧物は、決裁者の手元に物理的に届かなければ確認や承認ができません。決裁者が出張や外出で不在の場合、書類はその間どこにも進まず、机の上やキャビネットの中で滞留します。

その結果、支払い期日に間に合わなかったり、請求書の発行が後ろ倒しになったりといった問題が発生します。支払いや請求の遅延が、取引先からの信用にも影響を及ぼすのです。

属人化が進み改善できなくなる

紙の受け渡しを前提とした経理体制では、担当者が出社して現物を扱う必要があるため、テレワークなど柔軟な働き方の導入は困難です。紙ベースの業務は担当者の経験や慣習に依存する属人化が加速しやすく、新しい人材を確保できたとしても、引き継ぎには時間がかかります。そのため、経理部門の人手不足を解消する取り組みも容易ではありません。

業務を見直そうとしても紙を中心とした運用が障壁となり、改善は簡単に進まないでしょう。

ペーパーレス化に対する不安と解決策については、下記コラムで詳しく紹介しています。
紙文化から脱却するための経理デジタル化ステップ ― 経営者の“本音の不安”に寄り添いながら進めるDX ―

 

紙経理から脱却する3ステップ

紙経理の課題を解決するために、すべての業務を一度に電子化する必要はありません。現状を把握し、優先順位を付けたうえで、無理のない範囲から着手することが有効です。ここでは、紙経理から脱却するための現実的なステップについて解説します。

ステップ1:現状把握

最初のステップは、どの紙業務が利益を圧迫しているのかを把握することです。請求書管理や領収書管理、経費精算、記帳などについて、それぞれにどれだけの時間や人手がかかっているかを整理します。

担当者の感覚だけでは実態を把握しにくいため、作業時間や処理件数、承認に要する日数なども確認するとよいでしょう。現状を整理することで、利益への影響が大きい業務が明確になります。

ステップ2:優先順位付け

現状で把握した内容を踏まえて、改善の優先順位を決定します。処理件数が多い業務や月末に作業が集中する業務、特定の担当者に依存している業務などは、見直しによる効果が現れやすい領域です。

請求書管理や領収書管理、経費精算は、工数削減や業務効率化の成果を実感しやすいため、最初の対象として適しています。効果が大きい業務から取り組むことで、限られた時間や人手でも改善を進めやすくなります。

ステップ3:スモールスタート

優先順位が決まったら、まずは1つの業務から電子化に取り組みます。経費精算の申請をオンラインに切り替えたり、請求書の受領や承認を電子化したりと、対象を絞って進めることがポイントです。

一度にすべての紙業務をなくそうとするのではなく、まずは運用を安定させ、効果を確認しながら対象業務を広げていくとよいでしょう。小さな成功体験の積み重ねが、紙経理全体の見直しにつながります。

 

自社だけで難しい場合は外部支援も検討

紙経理の改善を社内だけで進めようとすると、日常業務と並行して取り組む必要があり、負荷が大きくなります。人手不足のため、改善の方向性が見えていても、実行する時間や人員が確保できないケースも少なくありません。そのような場合は、経理アウトソーシングなど外部の専門家を活用することで、改善のスピードを上げられます。

経理代行

経理代行は、記帳や請求書管理、経費精算といった日常的な経理業務の実務を外部の専門家が担うサービスです。紙業務の処理を任せることで、担当者が抱えている作業量を大幅に削減できます。日常業務が切り離せるため、経理体制の見直しや業務改善を進める余力も確保しやすくなるでしょう。

経理代行は、経理担当者が1人しかおらず、日々の業務に追われて改善の時間を確保できない会社に向いています。

DX支援

DX支援は、クラウド会計システムや請求書管理ツール、経費精算アプリなど、自社に合ったツールの選定から導入、運用設計までを専門家が支援するサービスです。ツール導入だけでなく、電子データの保存方法や承認フローの設計といった運用ルールの整備も任せるため、電子化をスムーズに進められます。

DX支援サービスは、紙業務の見直しを進めたいものの、どのツールを選べばよいか判断が難しい会社に適しています。

業務設計支援

業務設計支援は、属人化した経理業務を整理し、少人数でも回る仕組みづくりを支援するサービスです。これまで担当者の経験や記憶に頼っていた業務をマニュアルや業務フローとして明文化することで、担当者が不在でも業務を継続できる体制を構築できます。

業務設計支援は、経理業務が個人の経験や判断に依存している会社に適しており、属人化の解消や安定した経理体制の構築に役立ちます。

 

まとめ:紙経理を見直すことが利益改善の第一歩になる

紙の書類を前提とした経理は、二重入力や承認の遅れ、属人化などによって会社の利益を削る要因になります。

経理担当者の月末の残業が常態化していたり、書類探しに時間がかかったりしている状況があれば、紙経理の見直しを検討するタイミングです。

すべての業務を一度に電子化する必要はありません。まずは現状を整理し、効果の大きい業務から段階的に改善を進めましょう。

社内だけで取り組むのが難しい場合は、外部の専門家に相談しながら進めることも有効な選択肢です。

弊社では、丁寧なヒアリングを通じて貴社の状況を把握し、紙経理の課題整理から業務フローの見直し、ツールの選定・導入支援、経理代行まで一貫してサポートしております。

初回相談は無料で承っておりますので、紙経理の改善や経理業務の属人化にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。

この記事を担当した税理士
株式会社YMG コンサルティングラボ 酒井 康至
保有資格公認会計士・税理士
専門分野法人税・消費税・国際税務
経歴大学卒業後、上場企業の専門商社(鉄鋼系・食品系)の経理部員として約15年の経験。内海外駐在3年半。
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