2025.12.11
テレワークで変わった?在宅勤務手当と税務・保険の取り扱い
テレワークで変わった?在宅勤務手当と税務・保険の取り扱い 中小企業の経営者・経理担当者の皆さま、こんにちは。 「テレワークが当たり前になったけど、在宅勤務手当ってどう処理すればいいの?」 「税金…
内部不正は、特別な悪意や高度な技術がなくても、「仕組み次第」で、どの企業にも起こり得ます。特に、中小企業に多い「1人経理」は、属人化やチェック体制の不備などにより、不正の温床になりやすい状況です。本コラムでは、不正の実例と企業が受けるダメージ、不正が起こる理由と不正を防ぐための現実的な仕組みづくりまで詳しく解説します。
≪目次≫
経理で不正が起こるとき──よくある不正の実例
なぜ不正が起こるのか──「不正のトライアングル理論」から読み解く
不正が起こるとどうなるのか──企業が受けるダメージ
不正を起こさない仕組みを作る──現実的な対策と選択肢
まとめ:不正は仕組みで防げる
経理の不正は、突発的に起こるものではありません。日常業務の中に潜む「気づかれにくい隙」が、不正の入口になるのです。特に、中小企業では「1人経理」に業務が集中し、他の従業員の目が届かない状況が常態化しています。こうした環境では不正を実行する「隙」が生まれやすく、発覚が遅れがちです。ここからは、こうした不正リスクの高い状態で起こりやすい不正の例を4つ紹介します。
経理担当者が少額の現金を管理する「小口現金」は、数え間違いや紛失といったヒューマンエラーが起こりやすいため、残高確認が形骸化する傾向にあります。消耗品購入や交通費精算など、頻度が高く着服しても発覚しにくい場面が狙われるでしょう。数百円、数千円単位の小さな被害が積み重なり、気づいた時には数十万規模の損失になっているケースも少なくありません。
請求書処理や振込業務の不正は、架空の請求書や私的な領収書による出金、金額の改ざんなどがよくある手口です。実在しない取引先を装い自分の口座に振り込めば、会社の資金を直接着服できるというわけです。1人経理体制では、こうした処理の経緯をチェックすることが少ないため、実行しやすく隠蔽しやすい環境だといえます。
領収書が不要な在来線運賃の精算は、経理担当者だけでなく他の社員による不正も発生しやすいハイリスクな場面です。実際には利用していない経路で精算申請を行い、金額を上乗せする方法が一般的でしょう。たとえ1回数十円、月に数千円の水増しでも、複数人がたびたび行えば、年間損失額は数十万円にのぼる可能性があります。
店舗や支社の売上金を現金で回収している場合、1人経理や回収担当者の着服リスクが高まります。特に、主に現金商売を行っている業種では、入金と記帳のタイミングにずれが生じやすく、帳簿を改ざんされてもすぐには気づけません。また、営業担当者が受け取ったバックマージンを会社に報告しないケースも発覚しにくい不正です。
1人経理は、帳簿への入力も領収書や請求書などの管理も1人で行うため、その気になればいつでも発覚しにくい不正を実行することができます。では、なぜ「その気」になってしまうのでしょうか。
実は、不正は「悪意」だけで起こるわけではありません。
心理学と犯罪学に基づく「不正のトライアングル理論」によれば、人は「機会・動機・正当化」という3つ要素がそろったときに不正を起こすとされています。これは、アメリカの組織犯罪研究者D.R.クレッシーが提唱したもので、現在では企業の不正防止策の基本的な枠組みとして広く知られている考え方です。以下では、3つの要素について、1つずつ説明しましょう。
権限が集中し、第三者の目が届きにくい環境では、不正を実行する「機会」が生まれます。1人経理の現金や帳簿を扱う担当者が1人だけという状況は、まさにその典型です。さらに、有効なチェック体制が整っていない場合は、発覚が遅れ、継続的な不正リスクが高まります。
不正の動機には、借金や遊興費欲しさ、家族の医療費や進学費、ノルマ達成へのプレッシャーなど、さまざまな個人的事情が関係しています。「お金がほしい」という直接的な欲求だけでなく、「ノルマから逃げ出したい」「この環境を壊したい」という逃避的な心理も、不正を起こす動機の1つです。
「正当化」とは、不正実行の心理的スイッチです。「みんなやっている」「一時的に借りるだけ」「不公平な待遇だからしかたない」など、自分の行為を正当化する心理が働くと不正へのハードルが下がり、スイッチがオンになります。待遇への不満や評価への不信感があると、「このくらいは当然の権利だ」という思考に陥りやすくなるでしょう。
経理業務のすべてを1人で担い、チェック体制がないことで「機会」が生まれます。そして、業務負荷や重圧、孤立感から「動機」が育ち、社内の理解不足や不当な評価によって「正当化」へとつながります。つまり、1人経理は、不正の3要素がそろいやすいハイリスクな構造なのです。
さらに、経営者が経理業務や1人経理の置かれた状況を把握していない場合、リスクはさらに高まります。情報共有を怠り担当者に任せきりの状況は、信頼のつもりでも放置・無関心として状況の悪化を招きます。
内部不正が起こったことで企業が受けるダメージは、財務的損害にとどまらず、組織構成や信頼関係にまで及びます。特に中小企業では、信頼の回復に長い時間を要することがあり、企業運営の根幹を揺るがす事態になりかねません。
不正を行った担当者については、解雇を含む懲戒処分を検討することになるでしょう。経理業務は専門性が高く、属人化しやすい業務です。担当者の突然の不在は、業務の完全停止に直結します。後任を採用できても、担当者を欠いた状態では業務手順がブラックボックス化してしまうため、引き継ぎは困難です。
不正の被害について損害賠償額請求が認められても、着服された資金が全額返還される保証はありません。損害賠償額や不正の状況、不正を行った当人の支払い能力などによって、分割返済になったり減額されたりする可能性があります。中には、立証できずに泣き寝入りするしかないケースもあるでしょう。
不正の発覚は、企業の信用を大きく損ないます。刑事事件に発展すれば、担当者が逮捕されることもあります。中小企業にとっては、信用度が資金調達や採用に直結するため、影響は極めて深刻です。「あの会社は管理体制がずさんだ」という評判が広まれば、取引の成約率が低下し、融資審査が通りにくくなります。また、社内でも失望感が広がり、人材が流出するでしょう。離職率が高まれば、採用希望者も集まらなくなります。
不正を防ぐには、「人を疑う」のではなく、「仕組みを変える」ことが重要です。中小企業でも実行可能な対策を、自社の状況に合わせて段階的に取り入れましょう。
「1人経理」の根本的な問題は、属人化しやすく担当者以外には手が出せないという点です。そこで、経理業務手順を文書化し、誰もが内容を把握できるようにすることで、属人化を防ぎます。マニュアルがあれば、担当者不在時でも代替対応が可能です。マニュアル作成後も定期的に見直しを行い、業務フロー変更や法改正に対応することで、実効性が維持できます。
経理担当者を増員して「1人経理」を脱するのも有効な手段です。出納と記帳を別の担当者が行うなど、業務を分担することで相互チェックが可能になります。ただし、双方にある程度の経理知識が必要です。人材コストの増加が難しい場合は、パートタイマーや派遣社員など短時間労働者の活用も検討しましょう。
経営者自身に経理知識がある場合は、ダブルチェック体制を構築する方法も効果的です。経理業務を日常的にチェックすれば、リアルタイムでの資金情報を把握でき、経営判断の迅速化が期待できます。
経理業務の一部をアウトソーシングすると、第三者の視点が入ることで不正抑止力が向上します。記帳や給与計算などの煩雑な定型業務を委託すれば、社内担当者の業務負荷が軽減され、動機につながる不満やストレスも減るでしょう。また、税理士や代行業者との連携は、財務情報の正確性を向上させ、資金調達にも好影響を与えます。
クラウド型会計システムなどデジタル技術の活用も、不正を防ぐ仕組み構築に役立ちます。IDとパスワードによって時と場所を選ばずにアクセスでき、「いつでも経営者が確認できる」ことが不正の抑止力になるでしょう。導入・運用コストはかかりますが、長期的には業務効率化とリスク低減の両面で大きなメリットがあります。
クラウド会計では、金融機関と連携し口座取引情報を自動取得するため、帳簿改ざんの余地がありません。もしも不正に操作した場合は、アクセス履歴や作業ログ記録から発見・追跡が容易です。また、店舗のPOSレジとの連携もでき、店舗での売上金着服などを防ぐ効果も期待できます。
交通費の区間自動計算や交通系ICカードとの連携により、水増し請求を防止します。除外区間の設定で、私的利用の排除も可能です。また、領収書のアップロード機能を活用することで、従業員がダイレクトに経費精算を請求でき、領収書の紛失リスクを低減と不正申請防止が実現します。
経費精算をすべてシステム化すれば、小口現金管理は不要です。現金の取扱いを無くすことで、着服の機会そのものを消滅させます。法人カードやプリペイドカードの利用で、少額の支払いでもキャッシュレス対応が可能です。現金の数え間違いや紛失といったヒューマンエラーも防げるため、業務の正確性も向上します。
本コラムでは、経理の不正は「人の問題」ではなく「仕組みの問題」だということについて解説しました。
特に、「1人経理」は、業務の属人化とチェック体制の不備、業務過多や社内評価の低さなどによって不正の3要素(機会・動機・正当化)がそろいやすい仕組みです。
業務の見える化や分担、外部連携、システム導入などを通じて「不正を防ぐ仕組み」を整えましょう。
不正を起こさない仕組みづくりは、経理担当者に不信感があるから行うことではありません。
信じているからこそ、体制を整えることが重要です。
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