2025.12.11
テレワークで変わった?在宅勤務手当と税務・保険の取り扱い
テレワークで変わった?在宅勤務手当と税務・保険の取り扱い 中小企業の経営者・経理担当者の皆さま、こんにちは。 「テレワークが当たり前になったけど、在宅勤務手当ってどう処理すればいいの?」 「税金…
2025年の改正では、いわゆる「103万円の壁」をはじめとする収入の壁に大きな影響がありました。改正後は所得税控除額の引き上げや社会保険加入条件の緩和によって、パート・アルバイトを含む従業員の働き方や雇用管理体制にも新たな対応が求められています。
これらの改正は、勤怠管理や年末調整における実務負担が増える可能性があるでしょう。本コラムでは、改正の要点と中小企業経営者が押さえるべき実務対応のポイントを解説します。
≪目次≫
2025年改正で何が変わったのか?従来との違いを整理
税制改正:所得税控除額の引き上げと壁の再定義
控除処理の視点:扶養家族を抱える従業員への対応
社会保険改正:加入条件の緩和と扶養範囲の見直し
経営者視点で考える「収入の壁」対策
まとめ
2025年の税制・社会保険制度改正では、物価上昇における税負担や働き方の多様化を踏まえた見直しが行われました。
収入の壁とは、所得税の課税開始、社会保険の加入義務、扶養認定の可否といった「税・保険・扶養」の制度上の区分を示す基準です。1年間の所得額が「壁」を超えると税負担や保険料が発生するため、「扶養の範囲内で働く」ことを選択するパート・アルバイトの雇用管理には重要な線引きとなります。
また、正社員にとって直接的な影響は少ないものの、決して無関係ではありません。正社員に扶養家族がいる場合、配偶者や子どもが収入の壁を越えることで控除額が変動したり、扶養者認定に変更が生じたりするでしょう。雇用主はこうした扶養状況を正確に把握し、年末調整で適切な控除処理を行う必要があります。
もうすぐ始まる2025年の年末調整では、改正後の基準が適用されます。実施前に、制度を確認しておくことが重要です。
所得税は、個人の収入にかかる税金です。この税金は、1月1日から12月31日まで1年間の所得から各種控除額を引き去り、残った金額に対して課されます。
所得税の控除制度のうち、特別な条件がなく誰もが利用できる控除が「基礎控除」です。さらに、正社員、パート・アルバイトといった雇用形態にかかわらず給与や賃金、賞与などを得た場合に適用される控除として「給与所得控除」があります。基礎控除と給与所得控除の合計額よりも年間所得額が低い場合は、所得税を納める必要はありません。
改正前、2,400万円以下の所得に対する基礎控除額は48万円、1,625万円以下の給与所得に対する控除額は55万円でした。この所得税非課税限度額である「基礎控除額48万円+給与所得控除額55万円=103万円」が、「収入の壁」と呼ばれていたのです。
今回の改正では、基礎控除と給与所得控除、双方の金額と収入区分に見直しが実施されています。
2025年の改正では、2,350万円以下の所得に対する控除額が10万円引き上げられ、最高58万円となりました。そのうえで、下記の通り、2年間は控除額に最高37万円が上乗せされます。
| 合計所得金額 | 改正前 | 特例適用期間 2025~2026年 |
2027年以降 |
|---|---|---|---|
| 2,350万円超 | 48万円 | 48万円 | 48万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 48万円 | 58万円 | 58万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 48万円 | 63万円 | 58万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 48万円 | 68万円 | 58万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 48万円 | 88万円 | 58万円 |
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 | 95万円 |
2,350万円を超える所得については、変更ありません。
給与所得控除については、これまで55万円だった最低保障額が10万円増え、65万円に引き上げられています。
この変更により、課税における「収入の壁」は「給与所得控除65万円+基礎控除58万円=123万円」へと引き上げられました。さらに、2年間は最大160万円まで非課税となるケースも生まれます。
控除の対象が広がることで、従業員が働きやすくなる一方で、企業側では年末調整や税務処理が複雑化する可能性があるでしょう。これまで扶養対象外だった家族に扶養控除が適用される可能性もあるため、慎重な家族調査が求められます。
配偶者控除とは、一定の所得条件を満たす配偶者がいる場合に、納税者の所得税を軽減できる制度です。改正により、控除の対象となる配偶者の所得上限が引き上げられ、より多くの世帯が控除を受けられるようになりました。
「配偶者控除」を受けるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
このときの配偶者の「所得額」は、給与収入の場合は給与所得控除(55万円)を差し引いた後の金額、事業所得の場合は必要経費などを差し引いた後の金額となります。単純な収入額ではなく、所得ベースで判定する点が注意すべきポイントです。
配偶者の適用条件となる所得額を超えた場合、その所得額が58万円超133万円以下ならば、配偶者特別控除の対象となります。ただし、夫婦間で互いに配偶者特別控除を受けることはできません。
配偶者控除の額は、納税者の所得額に応じて以下の3段階に分けられます。配偶者特別控除では、さらに配偶者の収入に応じて細分化され段階的に減額されるため、より複雑な判断が求められます。
このように、納税者と配偶者の所得が高くなるほど、控除額は減少します。配偶者の所得が133万円を超えた場合は、配偶者特別控除の対象外です。
2025年の改正では、特定扶養親族(大学生など)に対する控除額の段階的減額制度が導入されました。従来よりも広い所得範囲で控除が適用されるため、大学生アルバイトの就業調整がしやすくなります。一方で、非居住者への適用条件が厳格化され、家族調査や収入確認の重要性が増しています。
扶養親族とは、12月31日時点で以下の条件をすべて満たす人を指します。
扶養親族のうち、扶養控除の対象となるのは、12月31日時点で16歳以上の人のみです。例えば、10歳の子どもがいる場合、扶養親族ではあるものの、扶養控除は適用されません。
扶養控除には納税者の所得制限がなく、控除額は対象となる扶養親族の年齢区分や同居の有無によって異なります。
扶養親族のうち16歳以上23歳未満を「特定扶養親族」といいます。
2025年の改正では、特定扶養親族がアルバイト等で収入を得た場合、合計所得85万円(給与収入のみなら150万円)以下であれば、従来通り63万円の控除が適用されることとなりました。さらに、年収188万円までは控除額が段階的に減額される「特定親族特別控除」が新設されました。この改正により、大学生年代のアルバイトを雇用において、雇用主・家庭双方に多様な選択肢が生まれることとなるでしょう。
ただし、親の扶養控除判定とは別に、本人の課税判定は独立して行われる点に注意が必要です。例えば、大学生がアルバイトにより年間145万円の給与収入を得た場合、親は扶養控除63万円の適用を受けられます。しかし、大学生本人の所得は「収入の壁」を越えているため、基礎控除と給与所得控除を差し引いた額に対して所得税が課税される可能性があるのです。
非居住者(国内に住所を持たない人)の扶養控除については、2023年の改正により先行して厳格化されています。
控除対象となる非居住者の扶養親族は、以下のいずれかに該当する必要があります。
この改正により、非居住者を扶養親族として申告する際には、年齢・状況・送金実績などを証明する書類の提出が求められるケースが増えています。従業員の扶養家族に該当者がいる場合は注意が必要です。
今回の制度改正では、社会保険の加入条件に関する撤廃に向けて、段階的な緩和措置が始まっています。これにより、これまで「扶養内」で働いていた家族であっても、雇用先の社会保険加入義務対象者になる可能性が出てきました。従業員に扶養家族がいる場合、企業は税制面だけでなく、社会保険制度への影響も踏まえた雇用管理が求められます。
収入の壁の中でも、所得税の課税ラインよりも影響が大きいとされるのが、社会保険の加入に関わる「106万円の壁」です。これまで、短時間労働者は以下の条件を満たす場合に限り、社会保険の加入義務が生じていました。
このうち、企業規模要件は、2025年以降段階的に緩和され、2035年には撤廃される予定です。
さらに、「106万円の壁」として知られていた月額賃金8.8万円以上という加入基準(賃金要件)についても、2026年10月以降に撤廃される見込みです。つまり、将来的には企業の従業員数や賃金にかかわらず、週20時間以上勤務する学生以外のパート・アルバイトは、正社員と同様に社会保険の加入対象となります。
こうした制度改正は、就業調整による働き控えを防ぎ、労働者の保障を拡充することを目的としています。一方、企業にとっては、より多くの従業員が社会保険の対象となることで、保険料負担の増加が避けられない状況となるでしょう。そのため、今後は人件費の見直しや雇用形態の再設計を含めた雇用管理の強化が不可欠です。
「社会保障の壁」を超えると、働き方や勤務先に関係なく親や配偶者が加入する社会保険の扶養から外れ、自身で社会保険に加入する必要が生じます。加入後は、年間で10万円から30万円以上の保険料負担が発生するケースもあります。
「社会保障の壁=扶養認定の収入上限」は、原則として年間所得130万円です。ただし、2025年の改正により、19歳以上23歳未満の被扶養者については、150万円に引き上げられました。
この変更により、大学生年代の子どもを持つ家庭では扶養維持がしやすくなるでしょう。しかし、企業にとっては制度の複雑化により、扶養対象者の年齢や収入調査をより慎重に行わなければなりません。
税制における123万円の壁、社会保険制度における106万円・130万円の壁は、中小企業経営者にとっても把握しておくべき境界線です。
扶養範囲で働くことを希望する従業員にとって、収入の壁は「決して超えてはならないもの」です。一方、収入アップを目指す従業員にとっては「大きく超えたい壁」でしょう。中小企業の経緯者や管理者は、短時間雇用の従業員それぞれが描く希望への理解と状況を把握したうえで、適切に対応することが求められます。「理解してくれているという安心感」が、企業への信頼感、勤務に対するモチベーション向上につながるのです。
従業員それぞれの希望に沿った働き方を実現させるためには、正確な労働管理と年間計画が不可欠です。こうした管理体制が整っていないと、「うっかり収入の壁を越えてしまいそう」「わずかに超えた程度では手取りが減少するだけ」と、従業員自身が就労を調整しかねません。従業員の働き控えは、人手不足や業務停滞といった問題を起こします。労働時間を年間管理することで従業員は計画的に働けるようになり、事業所や店舗運営も安定します。
収入の壁への対応や年末調整業務の複雑化は、経理担当者の業務負担増に直結します。これらの負担を軽減し、業務の効率化を図るには、クラウド会計などのデジタルツール導入が有効です。
こうしたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する際には、政府が提供する助成金制度の活用も視野に入れると良いでしょう。例えば、IT導入補助金を利用すれば、ITツールを利用した業務効率化やDX推進に対する費用補助が受けられます。導入コストを抑えながら、業務の標準化・省力化・属人化の解消効果があるため、経理業務の安定運用と継続的な改善につながります。
クラウド型システムのうち勤怠管理に特化しているものは、タイムカードの連携による勤怠情報の自動取得や自動集計機能を備えており、多様な働き方の従業員管理に役立ちます。システム導入によって、企業全体の勤怠管理から給与支払までの煩雑な作業を自動化でき、1人経理の負担軽減も可能です。
年末調整をデジタル化すると、従業員はオンライン上で必要事項を入力するだけで済みます。企業側は、その情報をもとに控除額を自動計算し、書類作成が可能になります。従来の紙ベースでの情報収集や手入力によるミス・手間が減るため、業務の効率化とあわせて精度向上も期待できるでしょう。
本コラムでも解説した通り、2025年の税制改正により控除基準や判定条件が複雑化しています。しかし、クラウド型の年末調整システムなどでは、運営会社による制度対応のアップデートが随時行われるため、企業側で別途対応する必要はありません。制度変更にも柔軟に対応しながら、業務負担の軽減とコンプライアンス強化を両立できる点が、デジタル化の大きなメリットです。
今後さらなる法改正が予想されますが、クラウド型システムは改正に応じて迅速かつ適切にアップデートが実施されます。そのため、企業の経理担当者が業務の合間を縫って独自で学ぶ必要がなくなります。
情勢が変動し、大幅な法改正が続くことが予定されているからこそ、今のうちのシステム導入がおすすめです。
収入の壁は、従業員だけでなく中小企業経営者にとっても大きな課題です。
2025年の改正により、控除額の引き上げや社会保険の加入条件緩和が進む一方で、企業側の年末調整や勤怠管理の負担は増加する可能性があります。
これらの対応策として、クラウド型勤怠管理システムの導入は効果的です。
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